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降魔一郎の東方異聞録~見える  作者: めけめけ
第5章『降魔一郎の東方異聞録』 心霊スポット
22/33

心霊スポット(3)完結

東方倶楽部45号(9月8日発売号)掲載

降魔一郎の東方異聞録


心霊スポット(3)


 すっかりおびえ切った彼は気の毒になるくらい震えていました。さっきまでの勢いはどこに行ってしまったやら。きっと今の彼には見えるんじゃないですかね。柳の下に土壌ではない、何かを。


"幽霊の正体見たり枯れ尾花"


 昔の人はよく言ったものです。あそこまで怯えてしまっては自分の影にすら驚いて腰を抜かしてしまうでしょうね。まあ、それも自業自得ということになるのでしょうが。


 私は彼に言いました。

 ならば返してあげればいい。そして誤ればいいとね。

 どうしたらいいかと聞かれたので、親切丁寧にその方法を教えてあげた私というのは、実に大人らしい対応をしたとは思いませんか?


 まずはその廃墟の病院とやらに行くことだ。もちろん一人で。万が一のために途中まで車で誰かに送ってもらい、そうですね。1時間たっても戻ってこないようなら、様子を見に来てほしいとか、警察を呼んでほしいとか、そのくらいの保険は掛けておいても損はないでしょう。もちろん警察の場合は、そのあとたっぷりと絞られるでしょうから、なるべく信用できる仲間を呼んだ方がいい。君にそういう友達がいればの話だけれども。そして病院の中には一人で入る。前回どこをどう歩いたか覚えているかい? よろしい。であれば、そのとおりの道順で病院の中を歩きながら、ずっと謝り続ける。ひたすらごめんなさい、申しません、許してくださいといいながら、自分が前回歩いた道をたどるのです。彼が好んでいた場所があるはずですから、きっとそこで許してくれるでしょう。幽霊と言えども人間です。きちんと誤れば、わかってもらえるでしょう。


 ただし、これだけは気を付けてください。たとえ何があっても、あなたは後ろを振り向いてはいけない。病院に入って、病院を出て、車に戻るまでは、決して振り返ってはいけない。もし振り返って、その時あなたが何かを――そう、だれそれに似たその人物やそれらしき影を見てしまい、その何かと目があった瞬間、その男は完全にあなたに取り憑き、あなたによからぬ気を起こさせ、そっちの世界に引きずり込むかもしれない。そうなってしまっては、もう私にどうすることもできないから、その時はしかるべき神社や寺や教会に行って専門の方に診てもらうしかないでしょう。


 さて、それっきり彼と私はお会いしていません。あれからどうなったのか、彼が本当に一人でその心霊スポットやらに行ったのかどうか。私は心配でなりません。最近若者の自殺者の数が増えていると聞いていますし、私もいちいち新聞やニュースで確認もしませんし、遺体が見つからない自殺と言うのも、まぁ、少なからずあるわけですからね。


 どうか読者の皆さんに置かれましては、心霊スポットなどと言う場所に浮かれ気分で行くことのないよう、強く願う物であります。うっかり虎の尾を踏んだりすると、思いもよらない怖い目にあうかもしれませんよ。


 ちなみに、私が彼に伝えた人相と言うのは、まるで違うものだったことをここにお伝えしておきます。なぜ嘘をついたかって?

 それは私が大人だからに決まっているではないですか。だいたい廃墟の病院なんかに居座っている幽霊などという物が、いったいどんな様子をしているのか、あなた、想像してごらんなさい。


 そんな怖いこと、私にはとても言えませんよ。


 なんでも正直に言えばいいということでもないでしょう。大人になるということは、人を傷つけない嘘をつけるようになるということなんですよ。嘘を悪と思っている方もいらっしゃるようですが、それこそ、嘘というものですよ。人の嘘を知ることこそ、真理に近づくことができる。


 私はそう思って疑わない人なんです。まぁ、これも嘘かもしれませんがね。


心霊スポット 完

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