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プロローグ

 ──世の中には不可思議な現象が多々あると聞く。ネットでのストリートビューにイエスとマリアのような影が映りこんでいたとか、バミューダトライアングルでの行方不明事件とか、物理学的に説明のつかない螺旋階段とか、ツングースカの大爆発とか、人体発火とか。タイムトラベラーなんて話もあった。とにかく挙げていくとキリがない。

 実際そんな事件は謎のままに終わり、後世になって色々な憶測が飛び交うことになるのが関の山だ。

 所詮、そのような出来事の真実はそれに出会した当人にしか分からない。人体発火や行方不明事件は被害者、螺旋階段はそれを作ったロバに乗った老人、といった風にだ。



 そんな事に比べれば、今俺の目の前で起きている事はまだ現実味があってマシだ。



「あの、何ですかねこの状況」

 現場はとあるアパートの一室、その六畳間のど真ん中。


 そこにその光景は広がっていた。


 ──いや、別に殺人事件関連の不可思議な現象が起きてる訳じゃ無いぞ? 確実にそんなのよりソフト。

 簡単に言うと学生服着た女の子に馬乗りされてる訳で。

 これだけだと俺がなんか変態と勘違いされて仕舞いかねないから、ここに至るまでの経緯を話そう。

 俺は神崎薫(かんざきかおる)というごく普通の男子高校生。ちなみに彼女なし恋愛経験なし歴=年齢(泣)。

 まぁ今までは普通に学校生活送ってたよ? アパートで独り暮らしして、勉強して、中性的な顔立ちと声をもて余しながら。

 ところが3年生始まって早々、アパートを引っ越す事になったわけだ。理由は経営者の夜逃げ。株取引で失敗したとか破産したとか色々な噂が流れたが、結局理由は分からず終い。

 そんなわけでアパートの経営が出来なくなったんで引っ越しを余儀無くされた。

 で、このアパートに引っ越して来た訳なんだが。

 理由? そんなものは無い。強いて言うならば、家賃が少し安かったってくらいで。

 実際、入居してみると設備はそれなりによかった。風呂は無いが代わりにシャワー室があり、壁や床も同賃貸枠では綺麗な方だった。歩いて数分の所にスーパーや百均、駅に銭湯もあるという神立地も手伝って居心地は頗るいい。

 そんで引っ越しの片付け終えて飯食ってシャワー浴びて、明日に備えて寝ていたらこの始末。

「えへへー」

「ちょっ!?」

 俺の上に乗った女の子は不意に満面の笑みを浮かべると、ゆっくりと身体を密着させてくる。あの、胸当たってるんですが…………?

「あ、あの……お前は誰だ?」

「え、私? 如月百合(きさらぎゆり)

 込み上げてくる下心を抑えようと名前を聞くと、案外すんなりと教えてくれた。普通見ず知らずの男に名前聞かれてホイホイ名前教えるもんか? 女の子は分からん……。

 しかし──可愛いな。

 名前もだけど、顔も俺の好みにシュゥゥゥーッ!! 胸もでかいし、締まってるところは締まってる。髪も栗色のふんわりセミロング。

 まさに俺の好みの女の子をネット絵師に描いてもらったようではないかっ!!

 しかし、少女は次に無慈悲なような絶望させるような言葉を吐き出す。



「あ、言っとくけど私幽霊だよ?」



「…………はい?」

「だから、私は幽霊なの。ドゥーユーアンダスタン?」

「アイムノットアンダスタン」

 え、なんで? 俺の目の前の女の子がこんなに幽霊主張する訳がない。だってしっかり感触あるし。その胸の重量感とかどうあがいても幽霊みたいな平面感無いですよ?

「えー、どうやったら幽霊って信じてくれる?」

「浮いてみて」

「ほい」

 俺の疑問を一瞬で拭い去るように、少女改め百合はそのままの体勢で10センチ程浮かび上がった。

 オンドゥルイウレイダッタンディスカーッ!?

「わ、分かった。取りあえずはお前を幽霊って認める」

「そっか、ならよかったぁ」

 俺が了承すると、百合の顔に天使のような微笑みが浮かぶ。守りたい、この笑顔。

「で、なんでお前は俺に対面騎上位かましてるんだ」

「あ、それね。話せば長くなるんだけど……」

 そう言って百合はこうなる経緯を話始めたが、かれこれ全貌を話しきるのに一時間近く掛かったので纏めると──


 ・百合は五年前までは普通の中学生だった。

 ・四年前、高校に入学するにあたって独り暮らしをすることになり、このアパートのこの部屋に引っ越す事になった。

 ・ところが車で送ってもらっている途中に事故に遭い、自分だけ死んでしまった。

 ・しかし華の高校生活を遅れなかった未練から幽霊になって、この部屋に高校生が引っ越して来るまで待っていた。

 ・そして今日、俺がやって来たので夜這いした。


 ──という訳らしい。

「ってかなんでその話から夜這い発展するんだよ」

「だって、私中学時代彼氏いなかったんだよ!? つまり彼氏無し=年齢! 分かる!?」

「まぁ……俺も同じだから気持ちは分からなくも無いが」

 ついでに言えばフラグすら立たなかったというのも付け加えておこう。

「でしょ!? つまり恋愛どころかエッチもしてないのよ!?」

「なんで恋愛より肉体関係優先なんだよ」

「興味があったんだから良いじゃない! という訳で今からあなたに抱いて貰うから! そして失われた華の高校生活を私に取り憑かれてエンジョイして貰うからっ!!」

「いや、その理屈はおかしい。ってか目の前で脱ぐな! 見せるな!」

 俺の制止を聞くこと無く、百合は身に付けた学生服を脱いでいき、瞬く間に産まれたままの姿に。し、鎮まれっ!! 俺のエクスカリバー(暗喩)ッ!!

「も、もうこんな所に居られるかっ! 俺はトイレに籠る!」

 このままだと百合に流されてキャッキャウフフさせられかねないと判断した俺は、百合を押し退けて立ち上がろうとする。少なくとも便器に座っていれば襲われても幾分かは安心できる。

 しかしそうは問屋が卸してくれない。

「こらっ! 逃がすわけ無いでしょ!」

 そう叫んで、百合が俺に手を翳すと身体がピクリとも動かなくなる。どんなに力を込めても動かない。

「えっ…………なっ……何した……っ!?」

「ふふっ。幽霊と言えば金縛りでしょ? これで三分は動けないから、その間に……!」

「ちょっ……やめ……」

 口もまともに動かせないまま必死に抵抗するが、それを実を結ぶ事はなく、一分と経たず俺は丸裸にされる。

 あ、これオワタ。

 しかしその時、俺の想像とは裏腹に百合が頬を染めた。

「えっと、今更言うけど……。私、あなたが部屋に来たときから惚れてたんだよね」

「…………へ?」

 突然の発言にキョトンとなるが、すぐに百合は顔を振って表情を戻す。

 そして目を閉じると、ゆっくりと顔をこちらに近付けてくる。当然身体は動かないし声は出せないしで打つ手がない。

 今度こそオワタ。



 俺が覚えているのはそこまでだった。



▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ 

 △ △ △ △ △ △ 



「で、どうしてこうなった?」

「私だって分かんないよ……」

 誰か教えてくれ。俺は何回過去を追憶すればいい、あと何回この景色を見ればいい。百合は何も答えてくれない。

 俺は訳が分からないまま、"草"を踏み締め立ち上がる。

 見上げた空には────龍。



 気付けば俺達は、異世界にいた。




 感想やアドバイスを頂ければ幸いですm(__)m

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