ホシ
「あなたのパパとママはお星様になったのよ」
両親が死んだとき、叔母は僕にこう言った。
自分はまだ6歳だった。
その夜も満天の星空で、叔母の言葉を信じた僕は一生懸命父と母を探した。
だが見つかるはずもなかった。
「みんなおんなじだもの」
死というものをまだ理解しない僕がただ単に残念がるのに、叔母は震えた声でこう答える。
「私達からはわからなくても、お空のパパとママからはたかちゃんのことしっかり見えているから…ね?
…それに、こんな夜じゃなくて真っ青なお空のときでも、お星様たちはその上に暮らしているから、ママたちはいつでもあなたのこと見守っているわ」
「…ふーん」
16歳となった今ではそんなこと信じてはいないけど、つい昔の癖で気付いたときには空を見上げている。
今夜は素晴らしい星空で、僕は家近くの小高い丘でいつものように星を見ていた。
そこにはおびただしい数のホシたち。
都会の夜ではけして見ることができない景色。
目の前の光景に、思わず僕は溜め息をもらす。
それが夜空の美しさからだったのか、はたまた数えきれない程果てしないホシへの悲哀からだったのか…
どうだったのかな。
僕にはわかりたくない。
わかってしまったら、何だか今まで堪えていたものが弾けてしまいそうで。
ちっぽけなホシたちはちっぽけな僕を見つめゆらゆらと笑った。
なんかムカついたから俺も笑ってやったら、
「何一人で笑ってんの」
のの子が来た。
幼なじみで近所に住んでいる。
「叔母さんご飯出来たって。」
寝転がっていた僕はのの子が差し出した手を取って起き上がった。
「手あったかい…」
「走ってきたもの。
せっかくのご飯、冷めちゃうでしょ?」
そう言って微笑む彼女につられて僕も口角が緩む。
こんなに星満天の冷たい夜風でも、どうやら心まで冷やすことはできないようだ…
「さて、明日のご飯は何だろうな…」
「気が早いな。
まずは今晩でしょー?」
ホシたちはまたゆらゆらと笑った。