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子ウサギ妖怪との非日常的な日々  作者: 樫 ゆう
第四章 助けた子ウサギに導かれて
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第四章 助けた子ウサギに導かれて 02話

 市立図書館は想像していたよりもちゃんとした作りとなっていた。

 てっきり田舎町だから、とてもぼろいイメージを持っていたんだけど。

 外見は結構真新しい。二階まであるが、それほど広くはないようだ。

 中に入ると、さすが図書館というべきか、本がたくさんある。奥の方には個人スペースの机がいくつかあり、何人かがそこを使っていた。恐らく学生か何かだろう。

 入ってすぐのところに受付がある。鈴美音さんはさっそく受付の若い女の人に聞いてみた。


「すいません。この町の伝説とか伝承とか昔話とか、詳しい方っていらっしゃいます?」


「はあ、この町の……ですか?」


 明らかにおれ達に怪訝な眼差しを向けていた。それはそうだ。こんなこと聞いてくる人は滅多にいない。


「少々お待ちください」


 受付の人は後ろの職員用の扉を開け、姿を消す。


「なんだかいきなり過ぎて申し訳ないな」


「何言ってるの甲坂君。わからないことなんだから、早めに聞くのが当然だよ」


 それでもやはり、図書館の人にこんなことを聞くのは間違っているような気がする。

 その証拠に、鈴美音さんの話を聞いていたほかの図書館利用者もおれ達を怪訝な目で見ている。

 しばらくすると違う人が現れた。


「初めまして。私は渡来(わたらい)と申します。ええと、この町の昔のことについて知りたいとか?」


 渡来という人物は、見かけは六十歳ほどの男で、いかにも昔からこの町に住んでおり、何でも知っているといったオーラを漂わせていた。

 これなら良い話を聞けることが期待できそうだ。


「初めまして渡来さん。私は鈴美音怜奈と申します。渡来さんはこの町の伝説についてお詳しい方ですか?」


 丁寧な口調で鈴美音さんは話す。なんだか腹に一物ありそうで怖い。


「伝説ですか。昔の出来事なら詳しいと思うのですが……」


「お聞きしたいのは、『三匹の子うさぎ』という伝説についてなんです。ご存知ですか?」


「『三匹の子うさぎ』というと、あの妖怪伝説の?」

 

 渡来は苦笑する。

 その笑いは少しその伝説を信じているおれ達を小馬鹿にしたような不快なものだった。


「三匹の子うさぎを集めて、ある場所にいけば、その人の願いを叶えてくれる……だったかな」


「はい、それです」


「申し訳ない。私はそういうオカルトな物には全く知識がないんですわ」


 早くも行き詰った。鈴美音さんが「うっ」と小さく呻いたのに気づく。


「あの、本当に何も知らないんですか?」


 鈴美音さんは粘る。


「ええ、そんな話があったなと言うくらいです。私も子供のころ、この町に伝わるおとぎ話としてよく聞かされたもんです。私だけでなく、この町のみんな、そういう認識しか持ってないと思いますよ」


 誰に聞いても知らないんだったら、この町での聞き込みは無駄に終わる可能性が大きい。

 これはもう、日輪山で粗探しするしかないのではないか?

 そう思った瞬間、「あ、でも」と渡来が新たな情報を切り出した。


「その話が伝わる神社がこの町にありますよ。そこの神主なら詳しい話を知ってるんじゃないですかね」


「本当ですか!」


 鈴美音さんの顔に希望が戻る。


「そのお神社の場所を教えてください!」


「まあ構いませんが……なんでこんなことをお調べに?」


 純粋におれたちがこんなことを調べているのに興味を持ったからこんなことを聞いてきたのだろうが、こんなことをする理由を尋ねられると正直に答えにくい。

 そう思っていたが、鈴美音さんはスラスラと答える。


「私たち、妖怪探求会というサークルなんです。多くの妖怪について研究しています。それで今回は、この町に伝わる妖怪伝説を調べたいと思いまして」


 渡来は「はあ」と相槌を打ち、けれど口元には笑みを浮かべていた。

 これ、絶対バカにされている気がするんだけど。

 そんなおれの不満をよそに、渡来から神社の場所とその行き方を教えてもらう。

 とりあえず、行き詰まりにならずに済んだことは良かった。


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