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Avenger  作者: J.Doe
Actors On The Last Stage/Program:Avenger
55/107

Green Eyed Monster/Screen Died Goner 1

 その大半を失った車両群が荒野を行く。

 ローレライ達はウィリアムの活躍により、クリムゾン・ネイルという脅威を排除する事に成功した。

 救出に成功した人数は戦闘員非戦闘員含めて6割。

 2度の襲撃を受けてから動いたという点を考えれば上等すぎる結果だが、それでもローレライの気持ちは晴れずにいた。


 高貴なる者の義務ノブレス・オブリージュ、それを教えてくれた父が死んだ。


 急襲者の戦力の規模は分からないが、ターゲットであるチャールズを生かしておく理由はない。

 死体を回収する事も出来ないため、父を埋葬をしてやる事すらローレライには出来ないのだ。


 そのせいかローレライは何もかもに実感が持てずに居た。


 あれからローレライは救出部隊を結成して、ウィリアムの救出に成功した。

 しかしウィリアムの様子が妙だったのだ。

 肌が露出している部分に細かい傷や火傷はあったものの、骨折などの重傷は一切ない。


 だというのに、ウィリアムはスラム地区で昏睡状態にあったのだ。

 焼け落ちたスラムと機動兵器の残骸を傍らに。


「どういうこと、なのでしょう」


 そう呟きながらローレライはシートに横たわるウィリアムに視線を向ける。

 腿の上に乗せた男の蒼白に染まった顔には、寝る時ですら外していなかった眼帯がなかった。

 そしてその眼帯があったと思われる場所には、あの頃にはなかった傷痕があった。

 しかし傷跡によって黒ずんでいるまぶたは、眼球があるかのように膨らんでいる。


 ウィリアムは傷痕を恥じて眼帯をしていたのだろうか。

 ローレライはそう考えるも、"お兄さん"らしくないと否定する。

 記憶の混濁があったとはいえ、行動原理はローレライの知っている"お兄さん"のものだったのだから。

 あの時ウィリアムはローレライを、ローラ嬢ちゃんではなくローラちゃんと呼んでいた。


 ウィリアム・ロスチャイルドと名乗っていた、あの頃のように。


「……早く、目を覚ましてくださいまし」


 ウィリアムに休息が必要な事は分かっている。

 それでもローレライはそう望んでしまった。

 その白く華奢な指はウィリアムの黒い髪を梳かす。


 他者を拒むような黒には、見覚えのない白が混ざっていた。

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