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Avenger  作者: J.Doe
Actors On The Last Stage/Program:Avenger
42/107

Into The Deep Unknown/Brew The Cheep Unknown 5

「……ミッションの内容は?」

「お兄さん!?」

「別に請けると決めた訳じゃない。ただ話を聞かないっていうのはいたずらに時間を浪費するだけだろ?」


 驚愕するローレライを手で制しながら、アドルフは視線を向ける事でローズに話の先を促す。

 義理立てする気もなければ、感傷に駆られた訳でもない。

 しかしCrossingにその戦力が向かった可能性がある以上、アドルフは確かめなければならない。


 チャールズ達は無事に生きているのか。

 正体不明の敵戦力はCrossingに対して害意を持っているのか。

 自分はその敵戦力を駆逐しなければならないのか。


「後続部隊の状況確認、場合によってはあらゆる手段を用いての救出を」

Ceaster(こちら)の防衛は?」

「ライアンと護衛に就いていた防衛部隊に一任しますわ」


 ローズの上げた名前に眼帯の男は辺りを見渡す。

 今は休養を取っているのか姿が見えないアロースミスの用心棒と、遠くから自身を睨みつけている防衛部隊の面々。

 万全とは言えないが、それでも物資があるだけマシだろう。

 そう判断したアドルフは深いため息をつき、やがていろいろ納得したように口を開く。 


「……いいでしょう。俺としても都合がいい」

「でしたら報酬は――」

「それはいいので食料、弾丸、ナノマシンの支給、それと1つだけ条件をつけさせていただきます」


 報酬はいらない、傭兵らしくない眼帯の男の言葉にローズは面を喰らう。

 確かにバイクは高額な報酬となりえるが、わざわざ差し出される報酬を断る理由などあるはずがない。

 しかし時間があるとは言えないローズは、その疑問を押し殺して先を促す。


「後続部隊の生存を確認、自力での合流が可能と判断した場合、俺の任務はそこで終わりとさせていただきます」

「Crossingに何か用事でもありまして?」

「そこが俺の故郷なんですよ。元々この任務が終われば帰るつもりでしたので、都合が良いと」


 口角を歪ませるアドルフの答えに、ローズは訝しげに柳眉を顰める。

 ローズの知っているアドルフの拠点は、旧リヴァプールのスラムだったはずなのだ。

 拠点だけならまだしも、なぜわざわざ豊かなコロニーを出てスラムに移り住んだのか。


 それがローズには理解が出来ない。


「……初耳ですわね」

「そうでしたか?」


 疑問符は付けながらも、どうでもいいだろうと言わんばかりにアドルフは肩を竦める。

 傭兵としての都合がそうさせるのだろうか。

 ローズがそんな事を考えていると、ここまでずっと黙っていたローレライが唐突の言葉に2人は驚愕させられる事となる。


「でしたらわたくしも条件をつけさせていただきますわ――コロニーBIG-C臨時戦略指令であるローレライ・アロースミスを、コロニーCrossingまで護送していただきますわ」

「本気で言ってるのかい? 別にローラ嬢ちゃんがついて来る必要はないはずだ」


 正気とは思えない、参謀としての教育を受けたとは思えないローレライの言葉に、アドルフは眉間に皺を寄せる。

 後続部隊と合流出来たとしても、CrossingからCeasterまでの道は安全とは言えない。

 眼帯の男が目的を持って動く以上、裏切りがない可能性は0ではない。

 そもそも、後続部隊は既に全滅しているかもしれない。

 聡明なローレライがそれを理解していないとは思えないが、わざわざついて来なければならない理由も分からないのだ。


「いいえ、後続部隊の自力撤退が可能かどうか見定める存在が必要なはずですわ。お兄さんと違い、彼らは脆弱なBIG-Cの人間達なのですから」

「だからといって脆弱なローラ嬢ちゃんが出向く理由にはならない。チェックリストでも作ってくれればそれで済むんじゃないのか?」

「一時的とはいえわたくしは指令、その指令が何もせずにいるのは間違っていますわ」

「立場に踊らされるな、それはローラ嬢ちゃんの命を救っちゃくれない」

「ですがお兄さんはわたくしの命を救ってくださいますわ」

「あのな――」

「その辺りにしておきなさい、それこそ時間の無駄ですわ」


 初めて見せる娘の強情な面に戸惑いながらも、ローズは手を叩く事で人の言い争いを止めさせる。

 アドルフが疲弊しているのは事実で、ローズはアドルフに少しでも休息を取らせなければならない。

 話の流れは知らないがローレライが臨時戦略指令に就いたのが事実なのであれば、ローレライは後続部隊の安否の確認をしにいかなければならない。

 理屈は通っているが面倒になり始めた事態に、ローズは右手で顔を覆いながら深いため息をつく。


 アドルフに新たな任務に就かせるのも、1人娘を危険な旅に同行させるのも本意ではないのだから。

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