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Avenger  作者: J.Doe
旧Avenger
16/107

Nemesis 1

 ウィリアムの端末が発していた信号が社屋から発されるジャミングによって途絶え、社屋に侵入出来た事をローラが理解した頃には戦場は既に混迷を極めていた。

 メモリーインダストリー社屋をBIG-Cの時計台と見立てるなら最後の防衛線の攻守が変わった状況がそこに広がり、戦場となったコロニーGlaswegianが車両砲の、機動兵器の、歩兵の凶弾に犯されていく。

 焼かれた民家や商店からは女と金目の物が奪われて行き、路上に転がる片目の無い死体は元BIG-C防衛部隊、レジスタンス、企業の私兵、コロニーの住人問わずその数を増やしていた。


 そこに広がる風景はこの世界の縮図であり、まさしく復讐の光景だった。


 ローラは御しきれず略奪を始めた防衛部隊の動きを端末上で確認し溜息をつく。


 しかし、復讐とはそういうものだ。


 スピーチでは正当な理由のような戯言を装飾したが、自我が弱い元BIG-Cの人間達は甘美で醜悪な人の欲に逆らう事は出来ずローラの指示から離れ勝手な行動をし始めた。

 こうなる事を予見し覚悟はしていたが、その愚かさにローラは眉間に皺を寄せる。

 元BIG-Cの人間達に規律を重んじさせたのはコロニーという枷であり、それが失われた以上彼等を縛る鎖など存在しないとは言え結局騎士道を説いた教育は無駄なものとなってしまったかのように見えたがアロースミス配下、トニー・ルーサム配下、そして意外にも復讐派筆頭であったキンバリー・ポズウェル配下の者達はその秩序を保った戦闘を続けていた。

 自らにあれだけ反抗していたポズウェルがこうも素直に動いている事にローラは引っ掛かってしまっていたが、その行動に謀反の気配が感じられない以上出来ることは無い。

 何よりこの事態に乗じてGlaswegianの女達と同じく拉致される可能性があり、その上、戦力の大半が自らの手から離れてしまった以上、ローラは指令としての仕事以外にも、自衛に気を割かなければならない。

 ローラが居る防衛部隊最後部の司令部周辺に展開する、アロースミス配下の者達でさえただ信用する訳にもいかず、ローラはウィリアムが用意したパワーアシスト付きの衣服を身に纏い、ウィリアムに与えられたハンドガンとサブマシンガンを装備していた。

 そしてローラは自身が撤退指示を出した所で、略奪に励む元BIG-C防衛部隊の面々がその命令を聞き入れるとは思えず、その為ローラはバイクの保護とその後のウィリアムのピックアップの事も考えバイクを傍らに置き続けた。


 しかしそれよりも早く自身の周辺に展開する防衛部隊の人間が、自身に牙を剥けばそれも難しくなってしまうだろう。


 だからローラは端末のディスプレイに表示されるGlaswegian周辺の地図に出し、部隊の位置を常に目を向けながらただそのタイミングを待つ。

 防衛部隊の大半が役目を放棄し略奪に精を出してるが、ウィリアムの脱出までは布陣を維持し続けなければならない。

 雑然と並んだやらなければならない事の多さにローラは眩暈を覚えるが、電撃戦である今回の襲撃において休憩などという悠長な事は許されない。

 ウィリアムに与えられたサブマシンガンのグリップを強く握り、ローラは気を引き締める。

 この銃を与えられたその日に扱い方を教えられたが、ローラに出来たのは牽制程度に弾丸をばら撒く程度の事だった。

 ハンドキャノンとスナイパーキャノンを無反動のように扱うウィリアムからすればサブマシンガン程度はもはや無反動に感じるのかもしれないが、ローラにはパワーアシストを使ってもなお御しきれない代物だった。

 両者のパワーアシストの出力は特に差異は無く、経験と体格の差だろうとローラは考えていたがそれと同時に、横から1発撃つだけで廃車の扉2枚を横から大破させた威力のハンドキャノンのあの冗談のような反動がそれだけで御しきれるとは思えなかった。

 自らの想い人にはまだ隠された何かがあるのでは、と勘繰る反面、好都合だとも思っていた。想い人を揶揄する言葉ではないが、誰も自分の理解を超えた人間の傍に居たいとは思わないだろう。


 彼の傍らには自分だけが居ればいい。

 ならば他は不要だ、邪魔だ。


 そしてそれは自らの邪魔をする者達も同様であり、わざわざ害そうとする事は無いが、自らの道を阻むものであれば敵味方関係なく駆逐しなければならない。


 最強の傭兵の傍らには最高の参謀を。


 アロースミスを追われたのをウィリアムのせいにする気は無いが原因はウィリアムであり、そしてその傍らにローラが居続けるにはその茨の道と言うには険しすぎる道を踏破しなければならない。

 手段を選ぶ気などローラにはもはや微塵も無い。

 しかし戦場は良くも悪くも状況を変え続けていく。

 急造の普通車両にロケットランチャー等の兵器を無理矢理付けただけの戦闘車両が思いの外いい働きをし、それによって起きた混乱により私兵達にフレンドリーファイアを誘発させる事に成功した。

 傭兵と違い最高級のパワードスーツで守られた私兵達はその数を減らす事は余り無く、人数の多さ故に戦闘経験が足らず簡単にパニックを起こす。そしてそれはウィリアムの対私兵戦での常套手段であり、戦力と物資の数で劣っている元BIG-C防衛部隊とレジスタンス達には何よりも有効な手であった。

 勝ち過ぎると言う事はないだろうが、もし撤退され企業の社屋に篭城などされてしまえば今度は社屋に侵入しているウィリアムの身が危ない。

 だからローラはあえて暴徒と化した味方を制御せずただ怒りに任せて襲撃をしてるかのように見せ、なお且つ無視出来ない程度の戦力を展開したのだ。

 そして元BIG-C防衛部隊やレジスタンス達の勝利条件は復讐の成就だが、ローラにとっての勝利条件ははウィリアムの復讐の成就と生還であり、他の者達の生還は含んではいない。


 さあ、どう出る。


 敵味方問わずそこに展開する全てにローラは胸中で問い掛ける。

 このまま死に逝くか、打って出て英雄となるか。それはどちらにとっても有り得る可能性で、双方の希望であり絶望であった。

 その時、地図を表示していた端末が音を立てて受信を告げ、ローラはそれに応答した。


『アロースミス指令! 社屋の巨大なシャッターが開き始めました! 奴等まだ何かを隠していたんでしょうか!?』

「判明していない事柄を推察するには情報が足りませんわ。映像を送っていただいてもよろしくて?」


 端末越しにローラの要求に防衛部隊の若者が端末のカメラ機能を使う事によって応える。

 ローラはまだ何も分かっていないと言ってはいるが、未確認のソレを戦況を引っ繰り返さんとする企業の数ある内の1枚のワイルドカードだと理解していた。

 企業社屋に設置された防弾性に優れた巨大なシャッターが音を立てて開いていき、そしてその全貌を顕わにした。

 鉄色の装甲を身に纏った人型の胴体のようなソレを、無理矢理キャタピラに組み込んだ機動兵器という余りも無骨なソレ。コロニーCrossingで視認したあの赤い機動兵器のような流麗さもなければ、量産期と思われた同じくコロニーCrossingで視認した、対人用機動兵器のようなアンバランスな気味悪さもなくただ無骨。

 同じ機動兵器よりも装甲車に近いようなそのルックスの機動兵器のマシンアイにオレンジの光が点り、まだ明けぬ夜闇を切り裂く。


「全部隊に告げます、敵未確認機動兵器が出現。重装甲高火力型のものと思われまず。敵未確認機動兵器の移動手段はキャタピラで高速移動は不可能かと。ですので無理に交戦せず、足止めに――」


 ローラの指示を掻き消すかのように、鉄色の機動兵器の人間で言えば腕の部分に当たる大口径の粒子砲は何の躊躇いも無いかのように眩い閃光を吐き出し、暴徒と化した元BIG-C防衛部隊と自らの味方である私兵部隊の人間達ごとコロニーの建物を吹き飛ばした。


「全部隊に繰り返します、敵未確認機動兵器が出現。重装甲高火力型のものと思われまず。敵未確認機動兵器の移動手段はキャタピラで高速移動は不可能かと思われますので、無理に交戦せず指定したポイントまでの撤退に集中なさって下さい。策さえ噛み合えば勝てない訳ではありません。策は随時お知らせ致します。皆様方のご検討を」


 無責任とも言える指示を出してからローラは両手を自らの頬に添えて、戦場という場にはそぐわない妖艶な微笑を浮かべる。


 相手も自分と同じなのだ。


 自ら定めた勝利条件の為には手段を選ばない。その結果、何かを犠牲にするとしても。

 大儀も結果も手に入れる事が出来るのは勝利者のみ。そして自らが最高の参謀であり、ウィリアムの傍らに自らが居る事を邪魔する存在を許す訳にはいかない。

 改めて地図をコールし、小隊ごとにマーカーを付けて各小隊長にそれを送る。

 おそらくあの機動兵器の装甲では歩兵の扱う徹甲弾はもはや役に立たず、そしてレジスタンスの戦闘車両に応援要請を出す事も出来ない上でローラ達元BIG-C防衛部隊はあの機動兵器の相手を引き受けなければならない。


 しかし、不思議と負ける気がしない。


 あの装甲とあの粒子砲は歩兵でなくても脅威となりえるが、同時にそれだけでしかない。やる事が決まっている以上、ローラはただ駒を進めるだけ。


『アロースミス卿、指示通り撤退を開始したが本当にこれで良いのか? いつもとは確実に違うやり方だが』


 大隊を率いるルーサムがこの戦闘で初めてローラに問い掛ける。ローラの今まで通りの包囲しての飽和銃撃というやり方とかけ離れた、ただ撤退しろという指示は策も弄せぬ元BIG-C防衛部隊の人間達には損得の分からない不安定なものに感じられた。


「ええ、レジスタンス達が雇う傭兵達の戦闘経験以外全てにおいて負けている我々が出来る事はあまりありませんの」

『ならばこのまま撤退か?』

「いいえ、少なくともわたくしは勝ちに行くつもりですわ」

『ほう。ならばアレをどうにかすると、そう考えていいのか?』

「そうですわ。最低でもアレを無力化しなければ撤退はおろか、レジスタンスの方々に我々の事後処理をさせなければならなくなってしまいますわ」


 何よりローラは自らがいる本陣に、レジスタンスの人間を近づけたくはない。

 戦力としては頼りにしているが、ウィリアム以外に心から信頼する事が出来ないローラは言外にそう付け足す。

 パワーアシスト付きの衣服を纏っていようが、ウィリアムから与えられた銃火器があろうが、傭兵から見たローラは世間知らずの華奢な令嬢に過ぎない。そしてローラは自身の金髪碧眼に価値がある事をウィリアムの過去の話から教えられ、その身を他者に許さない以上信頼していない者を近づける訳にはいかないのだ。


『だがあの装甲をどう突破するのだ? 間近で見た訳ではないがあれの頑強さはおそらく装甲車のグレネードキャノンにも耐えられる程のものだろう』

「ですが、それ以外の全てを無力化してしまえばあれはただの頑丈な棺に成り下がりますわ」

『そちらの物資が前線と比べまだ余裕があるのは理解しているが、それ程の威力を持った兵器を秘匿していたという訳ではあるまいな?』

「秘匿はしていましたが、それは敵に対してですわ。相手がワイルドカードを切ったのですから、こちらも1枚切らせていただきましょう」


 疑わしげにそう問い掛けるルーサムにローラは顔色1つ変えず応え通信を終える。

 指示した持ち場に到着した小隊にローラはインスタントメッセージでスナイパーの用意をさせ、そして自身の周りに展開する部隊には迫撃砲等の高威力兵器を持たせて持ち場に行くように指示を出す。

 ローラの守りは薄くはなるが元々守ってもらおうとも思っておらず、どちらかだけではあの鉄色の機動兵器の撃破は不可能だと理解していたローラは簡単にその危険を犯す。

 だがウィリアムに、おそらくこれからも平穏とはかけ離れた男に付いて行くと決めたローラには、企業のワイルドカードだろうがそれは踏み台の1つに過ぎない。

 何よりここであの鉄色の機動兵器を見逃してしまえば自らの行き道を許してくれた母や、結果的にとはいえこちらを頼ってきた穏健派の人間達が危ない。チャールズやマコーリーが執拗な追撃により殺害されている以上、ローラはそれらを省みないわけにはいかなかった。


「さあ、1局お付き合いいただきますわ。わたくし、勝てる勝負は大好きですの」


 端末のディスプレイに映る粒子砲を放ちながら進む鉄色の機動兵器へ挑発するように、両手を広げ虚空に言葉を放つローラの髪が風に吹かれその黄金の輝きを撒き散らすように広がる。

 インスタントメッセージの受信を告げる端末を見やり、誘い込まれた愚かな子羊に断罪を告げるかのように微笑をその顔に浮かべながらはローラが囁く。


「まずは足をいただきますわ」


 歩兵からローラの端末に送られてくる映像は炸裂しキャタピラを傷つける地雷が荒野の砂の大地を抉り、鉄色の機動兵器のその巨体を沈めていく様を映していた。

 襲撃前に工作員を送り込み、気を付ければ気付く程度に粉飾し作り上げた地雷原は歩兵である私兵にとって、避けて通れる撤去する気さえ起きない児戯に等しい物だったが脚部および機動部が脆い機動兵器にとってた補足が出来る脅威になりえる。

 そしてキャタピラの脚部を持つ鉄色の機動兵器は後塵の憂いを払う為にその強固なキャタピラでそれらを踏み潰したがその結果、地雷は砂地である荒野の大地を深く抉り擬似的な流砂を作り出しその足を殺す事になる。


 しかしこれで終わりにはしない。


「次は、目をいただきますわ」


 アロースミス配下のチャールズの死に納得がいかず、戦場に赴いた者達が放つ砲弾が装甲を穿ち火花を上げ、荒野を撃ち砂埃を上げる。

 硝煙と砂から生まれる霞は夜闇と相成り鉄色の機動兵器のマシンアイを殺し、ロケットランチャーから放たれる榴弾はサーモグラフィーを殺し、残るは砲弾が飛び交うこの場で役に立つとは思えない動体センサーのみ。

 夜闇と硝煙が相成って生み出された霞にお互いの視界を殺されていくが、流砂に足を取られその巨体を無様に晒す鉄色の機動兵器と粒子砲にその数を削られながらも申し訳程度の塹壕と瓦礫に隠れながら銃撃を続ける歩兵では条件がイーブンとは言えない。

 自棄になったとしか思えない狙いも何も無く発射されていく粒子砲は時折、塹壕や瓦礫ごと歩兵達を吹き飛ばしていくがそのほとんどが何も荒野を吹き飛ばしていくその様を見てローラは勝機を悟る。


「おしまいとしましょう」


 自身の端末からインスタントメッセージにて、鉄色の機動兵器のキャタピラ痕が付いた道以外から包囲している歩兵達にローラは指定したポイントへの移動を命じる。

 他の企業の戦力が援軍にでもくればローラは鉄色の機動兵器の砲撃をコントロールし、フレンドリーファイアを誘発させたが、機動兵器は搭載する武装の無秩序さ故に他者と協働する事が出来ず、最後のBIG-C防衛線でローラを含む防衛部隊の面々は空爆から目を背けさせる為だけの無理矢理な協働により吹き飛んでいった防衛部隊と企業の私兵達の末路を知っており、それに期待することは出来なかった。何よりローラは強力な武装を持つ敵の倒し方をウィリアムの過去から得ていた。


 だから、もうこれでおしまい。


 用意させたスナイパーの端末をコールし、その華奢な右腕を虚空を掴むように突き出す。


「Ready――」


 開きすぎた扇状に展開していた部隊が銃撃を続けながら外周から散っていく、しかし鉄色の機動兵器はそれを捕捉する事すら出来ず、自らの装甲を抉る銃撃を追うように粒子砲の照準を振り回す。


「――Aim――」


 段々と減っていく銃撃を好機と見た鉄色の機動兵器が今までの砲撃ではなかった程の光をその砲口に溜めていく。その砲身がどこへ向き、どこへ向かされて居るのかも知らずに。


「――Fire」


 ローラが右腕を振り抜きならそう告げると同時に、オレンジの光を帯びる砲口にスナイパー達のアンチマテリアルライフルから放たれる徹甲榴弾が殺到する。

 粒子砲とは加速器により加速させた荷電粒子を射出するとてもデリケートな兵器であり、そのデリケートな砲身を榴弾などというシンプルで悪辣な代物で蹂躙すればどうなるか。その答えは大規模な爆発音と閃光によって返された。

 古典的な戦いしか出来ないからこそ技術だけを磨き続けた元BIG-C防衛部隊にとってその緩慢な動きすら誘導された2砲を仕留めるくらい簡単な事であり、撃ち込まれた榴弾により破裂した粒子砲の衝撃は1帯を包み込み、弾け飛んだ金属塊が荒野の砂を穿つ。


 強力な武装を破壊する事により相手を無力化、もしくは撃破する。


 それはウィリアムが以前のBIG-C防衛線にて、パイルバンカーのような右腕を持った男を葬ったやり方だった。

 そこに居た者全てが消えたような、轟音の名残だけが辺りを支配する。

 厚いガスと混じる雲の向こうから射す太陽光とは比較にならない眩光が去り、吹き飛ばされた砂と爆破と同時に生まれた煙が静まったそこにはただの残骸だけが残っていた。


『うおぉぉぉぉぉ!』


 我に返りその達成感に身を震わせたのであろう防衛部隊の人間が突然挙げた端末越しの歓声に、ローラは眉をしかめ耳を塞ぐ。そしてそれに続くであろう他の者達の歓声に備え、ローラが端末のスピーカーの音量を下げた数秒後、離れているはずのローラの耳に直接届くほどの歓声達が響き、その歓声はレジスタンスにも企業の私兵達にも届いただろう。

相手のワイルドカードを突破したのは時間稼ぎをするという点において、プラスとなるかマイナスとなるかは分からないが敵戦力を引きずり出さなければならないという任務はウィリアムが帰還するまで続行しなければならない。何より先程の大規模な爆破によりスナイパーの数人が負傷していてもおかしくはない。彼等が死んだところでローラが感傷を抱けるかは不明だが、わざわざ見殺しにする理由は無い。


「各小隊長は人員の確認と回収、負傷者の居ない部隊から進軍を。負傷者が居れば支援部隊に要請を。支援部隊は要請のある小隊の治療に回り、戦闘不能な者が居れば司令部付近の移動車両まで共に引き上げてください。司令部直属の小隊は1部隊を機動兵器の操縦者の生死を確認の為に残し、進軍なさって下さい」


 端末を通じローラはジャイアントキリングを成し遂げ、浮ついた者達にそう告げる。

 ここで勢いづいた彼等を制御出来たのならば想像以上の戦果がきっと得られる、そしてそれはウィリアムの生存率を上げる事になる。


「ジャイアントキリングを成し遂げた我々に、もはや恐れるものは何もありはしませんわ。さあ、復讐の成就はもうすぐでしてよ」


 炊きつけられた元BIG-C防衛部隊の者達が挙げる一際大きい歓声を遠くに聞き、美しき復讐の女神ネメシスはただ1人微笑みながら愛する復讐鬼と共に掛けたバイクに跨り、最後の仕上げを始めた。

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