劇場占拠
(なんだろう……呆れられているというか、軽蔑されているというか。そんな視線で見られている気がする……)
それが気のせいなら嬉しかったが。
恐る恐る、向かいの机にいるエリィを見る。じとーっという視線がまっすぐに注がれていた。
「あ、あの……エリィ?」
「信じられません……」
「けがの回復が早かったのは、大図書館が今回のお詫びとして霊草を送ってくれたから……」
「そうじゃありません。どうして、けがが治ってそうそうに遊びに出かけるんですか。けがが開いたらどうするつもりなんです」
その言葉は正論で、思わず苦笑いを浮かべる。
「いやぁ、寝てばかりいると気分が滅入るし、気分が滅入ると体調も悪くなるから息抜きに……」
「私と病室にいるのがそんなにつまらないですか……」
「ん? なにか言ったかい?」
「なんでもありません。だいたい、息抜きできたんですか?」
「もちろん。君もついてきたから知ってるだろう? 劇場のショーは最高だった」
「その最高のショーの途中で劇場がテロリストに占拠されて、本当に息抜きできたのかってきいてるんです」
「まあまあ……よかったじゃないか。偶然ショーを見に行ったおかげで、みんなの安全を守ることができたんだ」
「よくありませんよっ」
「えっ……」
「そんなだから出歩いちゃいけないんです。おかしいでしょう。病み上がりで息抜きに出かけたらテロリストを叩きのめして帰ってきました、って。それでけがが開いたら、本当にどうするつもりだったんですか」
「うっ……」
「心配して……いってるんですからね?」
すねるような彼女の言葉に、なにも言い返せなかった。