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大図書館にて

 開いた視界はやけに白くまぶしかった。今までの暗さにぼやけた目が明かりに慣れてくると、耳鳴りのように思えていた声が明瞭に聞き取れてくる。

「……んぱいっ。先輩……っ! 大丈夫ですか!?」

 境界線のあやふやだった目に入ってくるものたちが、やがて鮮明に輪郭を取り始める。見えてくるのはエリィの泣き顔。泣き顔?

「そう、か……っ」

 身体を起こそうとすると、全身に激痛が走った。思い出してしまった痛みは、動きをとめても身体に残っている。

 頭の奥の芯のようなものが急速に冷え切って自分を苛んでくる。恐らくここは結社にある医務室だろう。自分の持っていたはずの剣に目を向けたくなるが、どこにあるかも分からないその剣を求めて激痛に耐える自信はない。

「動かないでください……先輩。お、大けが……なんですよ?」

「大図書館……どうなった、かな……?」

「あ、あんな図書館つぶれてしまえばいいんですっ。あんな危険な騒ぎになって……!」

 憤っている、ということは大図書館がつぶれる予定がないか、それとも上が処置を決めかねているのだろう。ともあれ騒ぎが人目についた以上は、なにも無しということはないのだろう。

 だが、それよりも気にすべきことがあった。

「けが人は……」

「……っ。そんな大けがしておいてなにを言ってるんですかっ。先輩、先輩だけです……。みんな、無事で……」

「そっか……よかった」

「よくないです! 先輩は自分の身体をもっと、大切に……」

「……した結果だよ。剣を使わなければ、僕たちは全滅していた……。油断してたみたいだ、ごめんね」

「そんな……」

「まさかあそこまで凶悪な魔導書があるとは……。運が、運がよかったんだ。霊位が不安定だったせいで、魔導書も、そして夜を破くための剣も最大効力を発揮しなかった。どちらかがその本領を発揮していたら、助からなかった……」

 エリィが、涙に濡れたままの目を大きく見開いた。

「運が良かった……って。剣を使っただけでそんな大けがしたんですよ!? 血だっていっぱい噴き出して……あの、その、ごめんなさい」

「気にしなくていいよ。でも、運がよかったんだ……。魔を払い夜を破くための魔剣。けれども魔の力を持つその剣は、魔を持つ者にしか扱えず扱うものを払い破く……」

 赤毛の女性の、嫌味がましい皮肉げな笑みが脳裏に浮かぶ。

「アルカシャの言うとおり……力不足ってことさ。どれだけ強大な力を持っていても、扱うことのできない魔剣。その保持者」

「あんな人の言うこと、気にする必要、ないです……」

 すねたようなエリィの言葉を聞きながら、思いいたって言葉を口にする。

「ありがとう、エリィ」

「え……?」

「心配してくれて、ありがとう」

「……はい」

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