大暴れしたタコ
「疲れたかい?」
向かい側の机でため息でもこぼしそうなほど両腕をだらんと垂らしている少女に、優しく問いかける。
と、慌てて彼女は姿勢を正した。
「い、いえっ」
「あー、悪いね。そんなつもりじゃなかったんだ。楽にしてていいよ。ただ、本当に大変そうに見えたから」
「あの、その……はい」
あながち素直に、彼女は緊張をといた。
「大きなタコでしたよね……。市場の人たちを宙づりにして。みんなが助かってよかった……。ここでは、いつも今日みたいなお仕事をしてらっしゃるんですか?」
「今日ほどの事件は、そんなにないよ。まあ初日があれだっていうのは運が悪かったっていうか……逆に運がよかったのかな?」
最初に大きな事件を目の当たりにした経験があれば、他の事件はもっと安心して対応できるだろう。
「ここにきたこと、後悔してるかい?」
「……それは。大変なお仕事だっていうのが、とってもわかった気がします。でもきっと、街の人たちのお役に立てる仕事ですし、やりがいが持てると思うんですっ」
「…………」
「あ、あの……なにか間違ったこといいましたか?」
「いやぁ……、僕はそんなに立派な考えなかったなーと思って。お金稼げればなんでもいいやと」
「え、ええええ!?」