嘘の連鎖
憧れていた日々は幻想だったのかな。
扉を閉めた瞬間、涙が落ちた。
良かった。今まで耐えれてたんだよね。
秀人を困らせたくない。
秀人に嫌われたくない。
その一心で、ついた嘘。
強がって聞きたがらなかった言い訳。
言い訳でも聞けばよかったんだけど、
そんなものなくても私はあなたを好きだよって
受け入れられたほうが
あなたは笑ってくれるかな、って思ったんだ。
嫉妬なんてするような、そんな女にはなりたくないって
恋人になる前に私の中で決めてたから。
理解あるフリをしたんだ。
だけど、伝わってないよね、秀人には。
時々ふざけて呼んでいた「お兄ちゃん」という単語。
そう呼ぶと照れつつも喜んでいたあの笑顔。
そんなオママゴトのようなことも、
二人の間では十分楽しかったのに。
まるで現実になった今日。
ママゴトじゃない。
私は妹役。彼女は恋人。お兄ちゃんの恋人。
あの時秀人は何役を演じたかったのだろう。
彼女は嘘に気づいていた。きっとそう。
だけど、彼女は嘘を笑って受け入れた。
そしてすぐに去って行った。
私はあんな風になりたいのに。
彼女を傷つけた、秀人と一緒に。
そして秀人まで傷つけた。
傷つけない方法なんてないのかな。
いつでも笑顔、なんて無理なんだろうか。
理想ばっかり描いてたのかな。