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機械世界の女子高生  作者: 笹田 一木
機械世界の女子高生
6/17

[6] 軍施設の戦い




 東の鉱山の軍施設。

 鉱山の脇に平たい巨大な建物が大地を覆いつくすように広がっている。その一室でアクスバル将軍は窓からエメラルドグリーンの空を見上げていた。


「さて、約束の日だ。彼らはどうするのかな」


 背後に立つテトラ少佐。


「抵抗があった場合は、本当にせん滅なさるおつもりで?」


 テトラ少佐は少し戸惑っている様子だ。アクスバル将軍はニヤリと笑う。


「もちろんだよ。その時はアレの試験も兼ねるとしよう。未来の世界の王の生け贄になるんだ、彼らも本望だろう」



 高い城壁が施設の四方を囲んでいる。その城壁に設置された城門を見張る数人の兵士。その兵士の一人が声を上げた。


「な、なんだ、あれ!」


 その声を聞き、他の兵士達も前方を見る。すると施設の城門に迫る巨大な影が見えた。

 ――鉱山運搬車だ。

 猛スピードで城門に向かって突進してくる。


「う、うわあっ」


 運搬車は施設の敷地内に突進した。


 アクスバル将軍の部屋の通信機が鳴る。


「なんだ」


 アクスバルが出ると、受話器の向こうで兵士が慌てた様子でしゃべる。


「し、侵入者です。運搬車で特攻してきて……」


「侵入者だと? 何人だ」


「ひ、一人です」


 その通信を横で聞いていたテトラ少佐は戸惑っている様子だ。


「一体何者で……」


「つまらない事を聞くな。こんな間抜けな事をする者は一人しか知らないだろう」



 施設に潜入したクロセットは運搬車から降り、機械剣を両手で持って戦っていた。駆けつけた兵士数十人がすでに地面に倒れて気絶している。

 二機のサーペントが施設の中から現れた。


 それらの様子を風香ははるか高み、鉱山の上から双眼鏡で見下ろしていた。


「施設内で働かされていた町民の調査によれば、施設内の軍戦力は、兵士約五十人、サーペント十八機、ブロッキング六機……」



 クロセットは駆けつけたサーペントをたちまち破壊し、さらに現れてくるサーペントを一機一機確実に仕留めていった。

 風香はその様子を鉱山から見下ろす。


(これでサーペント六機破壊。クロセットの実力ならサーペントを同時二機までなら問題ない、ただしそれ以上いると……)


 施設内から一気に六機のサーペントが現れた。


「さすがに六機はきついな」


 クロセットは運搬車に再び飛び乗り、そのままサーペントの集団に向けて特攻する。


「たっぷりの鉱山用発破火薬を味わいな」


 クロセットは素早く運搬車から飛び降りた。運搬車はサーペントの集団に当たるか当たらないかの間に、大爆発を起こす。爆音が辺りに響き、六機のサーペントはバラバラに砕け散った。

 風香も遠くでそれを確認する。


(これでサーペント十二機撃破、残り六機のサーペントは町の巡回中。今ごろは町民の作ったバリケードに閉じ込められてるはず。これでサーペントは問題なし。人間兵じゃクロセットは倒せない。あとは……ブロッキングだけ)



 施設内、そこの採掘場までクロセットは侵入していた。鉱山の壁沿いにいくつものドリルマシンが並べられている。


「何とかここまで行けたな」


 クロセットは息を切らしながら周りをうかがう。


「そこまでだ」


 クロセットの前方に、テトラ少佐が現れる。


「なんだあんたか。あんたにオレの相手が務まると思ってんのか?」


 それを聞いてテトラ少佐は笑う。


「まさか、君のような野人の相手はゴメンだよ。君の相手をするのは……」


 テトラ少佐の背後から六機のブロッキングが姿を現す。


「コレだ」


 クロセットは一歩あとずさる。


「さすがにこいつら全員は無理だ……」


「やれっ!」


 六機のブロッキングが高速でクロセットに突進する。それを見てクロセットは背中を向け全速力で逃げ出す。それを追う六機のブロッキング。

 クロセットは素早く廊下に入り、採掘場から抜け出す。ブロッキングはなおも追ってくる。巨大な廊下を横二列で走るブロッキング。クロセットよりはるかに速い速度で見る見るうちにクロセットに迫る。

 そんな中、クロセットは後ろを振りむき、ニヤッと笑った。その直後、突然施設内に爆音が響き、クロセットとブロッキングの間の壁が砕け散る。砕けたガレキが廊下を塞いだ。


「ここに来るまでにオレが何も仕掛けてないとでも思ってたのかよ。このバーカ、悔しかったら捕まえてみろ!」


 クロセットはそう言ってブロッキングの集団から逃げていく。

 その様子を見てテトラは怒りで顔を歪ませる。


「おのれサル知恵を……!」


 テトラがその言葉を発した直後、遠くの方からさらに二つの爆音が響いた。

 震える廊下の中でテトラ少佐は驚いた。


「ここ以外にも仕掛けていたのか!」



 鉱山上部にいる風香は紙を広げて見ていた。その紙には施設内の細かな地図が書かれている。


「一週間……調べる時間はたっぷりあった」


 風香は意地悪く微笑む。


「全三ヶ所の爆破場所の情報はこちらしか知らない。施設内B地区のフィールドはこちらが掌握した。あとは手はず通り……」


 施設の廊下内でテトラ少佐が怒鳴る。


「バカな機械兵共め! 固まって動くな! 隊を二つに分けるんだ。片方は廊下のガレキを片づけて進め。もう片方は別のルートに回りこめ。あのサルを挟み撃つんだ」


 後ろのブロッキング三機は、ガレキをどかしているブロッキングとテトラを置いて別のルートへと進んでいった。

 別のルートを進む三機のブロッキングだったが、道はすでに違う爆弾により塞がれていた。仕方なくさらに回り道をするブロッキング。


「そう、さらに回り道するしかない」


 風香は地図に記されているある箇所を見つめながら笑みを浮かべたあと、双眼鏡で、施設の窓の一つをじっと見つめる。するとその窓を通り過ぎるブロッキングの姿を確認した。風香はすぐに足元に置いてあった通信機で信号を送る。


 施設を囲む城壁、その一か所に大穴が空いている。鉱山の男達はその大穴から施設の脇へと侵入していた。


「おい、信号が来たぞ」


 通信機を持ったアヒじじいが男達に伝える。男達のすぐ近くにはドリルマシンが一機置かれていた。

 親方がドリルマシンをなでる。


「よし、じゃあ最後の大仕事をやってくれ」


 親方はドリルマシンのレバーを動かした。マシンは巨大なドリルを高速回転させながら、施設の建物に向けて直進する。


「逃げろー!」


 その親方の一声と共に、男達は一斉に城壁の穴から外へと逃げだす。

 置いていかれたドリルマシンはそのまま施設の壁を壊して直進し、そのまま施設内のある部屋の中へと進んでいった。


 大地が大きく揺れ、施設の四分の一を巻き込む大爆発が起こった。

 巨大な紅蓮の爆炎が暴れ狂う。

 その大爆発に巻き込まれ、大きく回り込んでいた三機のブロッキングは粉々に砕け散った。


 風香は顔色一つ変えずにその様子を眺めていた。


「鉱山用発破の火薬庫……そこにある火薬に引火させ、爆発を起こせば、あのブロッキングといえども木端微塵にできる」


 巨大な爆発はしばらくのあいだ施設全体を揺らし続けた。


「な、何が起こった?」


 テトラ少佐は爆音の方向を見たあと、前方に向き直る。


「きさま、何をした?」


 施設の精錬場、巨大な溶鉱炉の隣にクロセットの姿はあった。クロセットはテトラ少佐が率いるブロッキング三機に囲まれていた。


「さーな」


 クロセットは意地悪く笑う。


「まあ良い、ここでおまえを始末すれば全て終わることだ」


 テトラのその言葉を聞き、クロセットは不敵に笑う。


「おい……」


 クロセットの右手に手持ち時計が握られている。


「オレが仕掛けた爆弾は三つだけだと思ったか?」


「なに?」


 テトラの顔が歪む。クロセットはニヤリと笑う。


「時間だ」


 爆音が響き、溶鉱炉に大穴が空いた。溶けた金属がブロッキング達を飲み込む。それと共に、クロセットは機器のあいだの小さなすき間をネズミのように身をくねらせて抜けて熔金属から逃げ出す。

 テトラ少佐と後方にいたブロッキング一体は何とか溶金属から逃れていた。


「何と言うことだ」


 テトラ少佐は悔しそうに歯嚙みしながら、ブロッキングを連れ、その場から離れる。その途中、頭上からクロセットが降ってくる、と同時にクロセットの蹴りがテトラ少佐の顔面にヒットする。テトラ少佐は白目をひんむき卒倒した。


「おっと、こいつは敵戦力に数えてなかったっけ。さてと……」


 クロセットは背中の機械剣を両手で持ち、目の前に立つブロッキングを見る。


「さて、正々堂々サシでやろうぜ、機械ゴリラ」








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