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三題噺もどき5

雨の帰り道

作者: 狐彪
掲載日:2026/10/31

三題噺もどき―きゅうひゃくごじゅうはち。

 




 雨が降っている。

 周囲は少し暗い。

 雨のせいで暗さに拍車がかかっている。

「……」

 合羽を着るほどでもない雨だが。

 明日も学校があるので、制服が濡れると困る。

 だから、むしむしとした嫌な暑さを我慢して、合羽を着ている。

「……」

 車通りの多い道だから、視界が悪いなんてことはない。

 その中を自転車で走っている。

 放課後、あの子と一緒に勉強をして。

「……」

 校門で、あの子の迎えが来るのをすこしだけ待って。

 その後こうして帰路についたという次第だ。

 だから、いつもよりは少し遅い時間ではあるかもしれない。

「……」

 それでも、この暗さは久しぶりのような気がする。

 少し前までこの時間はまだ明るかったような……どうだったか。

 数日前の事でもあまり思いだせそうにない。

「……」

 空なんて見ているようで見ていないから。

 気付けば真っ暗だし、気づけば朝になっている。

 その程度の認識しかしていない。

「……、」

 横断歩道の赤信号で止まる。

 自転車は車道を走るようにと言われて何か月たったか。

 たまに警察が立っているけれど、何も言われたことはない。

「……」

 先も言った通り、この辺りは車通りが多い。

 しかもまぁ、荒い運転が多いので、車道を走る方が危険だし、車にも迷惑がかかる。

 たいしたスピードも出ないのに、車道を走っている方が邪魔だろうし。

「……」

 横断歩道が青になるのを待っていると、少し離れた位置に人影が現われた。

 どこかから歩いてきたんだろうけれど……ちょっと驚いたことは内緒だ。

 この辺りは、飲食店……というか居酒屋が点々とあるから夜でも歩いている人はいる。

「……」

 基本的には車がないと移動が困難な程度には、車社会の田舎なので……この時間に歩いている人は飲みに行く人か、単にこの辺りに住んでいるか、ただのモノ好きか、車が運転できる状況にない人か……まぁ、結構いるのか。

「……」

 ちらりと、そちらを見ると。

 車のライト越しに、真っ赤な口紅がとてもよく見えた。

 髪は肩甲骨のあたりまでの長さで揃えているらしく、さらさらと風に揺れている。

 雨が降っているので、傘で口元から上は見えないが……。

「……」

 服装はなんというか……スーツなのか、ただのカジュアルファッションなのか。

 でも、スーツ程の堅苦しい感じはあまりないから、カジュアルなやつなのかな。

 あまりその辺詳しくないので違いがよく分からないが、キレイめってかんじだ。

「……」

 時間的に今から飲み会にでも行くんだろう。

 スマホをいじっているようだけど、雨でぬれないんだろうか。

 なんかな。

「……」

 この人、どっかで。

「……」

 見たことがあるような、ないような。

「……」

 しかしあまり、じろじろ見るのも失礼だろうと。

 視線を横から自分の足元へと戻し。

 立っている女性の足元が、視界をかすめて。

「……、」

 うーん。

 どうりで見覚えがあるわけだ。

 雨が降った中で、こっちから帰るのが久しぶりだからかな。

「……」

 そういえば、この辺りで事故があったと聞いたことがある。

 車通りが多い上に、雨の日は車だと若干視界も思うようにはいかないのだろう。

 その事故は、雨の降った、丁度これくらいの時間の時で。

「……」

 信号が青に変わる。

 女性は動くことなく、ただそこに傘をさしたまま、スマホをいじっている。

 ま、見間違えかもしれないし、スマホに夢中で気づいていないだけかもしれないけれど。

「……」

 まぁ、明日はハロウィンだから。

 見えやすくなってただけかもな。











 お題:制服・口紅・雨

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