雨の帰り道
三題噺もどき―きゅうひゃくごじゅうはち。
雨が降っている。
周囲は少し暗い。
雨のせいで暗さに拍車がかかっている。
「……」
合羽を着るほどでもない雨だが。
明日も学校があるので、制服が濡れると困る。
だから、むしむしとした嫌な暑さを我慢して、合羽を着ている。
「……」
車通りの多い道だから、視界が悪いなんてことはない。
その中を自転車で走っている。
放課後、あの子と一緒に勉強をして。
「……」
校門で、あの子の迎えが来るのをすこしだけ待って。
その後こうして帰路についたという次第だ。
だから、いつもよりは少し遅い時間ではあるかもしれない。
「……」
それでも、この暗さは久しぶりのような気がする。
少し前までこの時間はまだ明るかったような……どうだったか。
数日前の事でもあまり思いだせそうにない。
「……」
空なんて見ているようで見ていないから。
気付けば真っ暗だし、気づけば朝になっている。
その程度の認識しかしていない。
「……、」
横断歩道の赤信号で止まる。
自転車は車道を走るようにと言われて何か月たったか。
たまに警察が立っているけれど、何も言われたことはない。
「……」
先も言った通り、この辺りは車通りが多い。
しかもまぁ、荒い運転が多いので、車道を走る方が危険だし、車にも迷惑がかかる。
たいしたスピードも出ないのに、車道を走っている方が邪魔だろうし。
「……」
横断歩道が青になるのを待っていると、少し離れた位置に人影が現われた。
どこかから歩いてきたんだろうけれど……ちょっと驚いたことは内緒だ。
この辺りは、飲食店……というか居酒屋が点々とあるから夜でも歩いている人はいる。
「……」
基本的には車がないと移動が困難な程度には、車社会の田舎なので……この時間に歩いている人は飲みに行く人か、単にこの辺りに住んでいるか、ただのモノ好きか、車が運転できる状況にない人か……まぁ、結構いるのか。
「……」
ちらりと、そちらを見ると。
車のライト越しに、真っ赤な口紅がとてもよく見えた。
髪は肩甲骨のあたりまでの長さで揃えているらしく、さらさらと風に揺れている。
雨が降っているので、傘で口元から上は見えないが……。
「……」
服装はなんというか……スーツなのか、ただのカジュアルファッションなのか。
でも、スーツ程の堅苦しい感じはあまりないから、カジュアルなやつなのかな。
あまりその辺詳しくないので違いがよく分からないが、キレイめってかんじだ。
「……」
時間的に今から飲み会にでも行くんだろう。
スマホをいじっているようだけど、雨でぬれないんだろうか。
なんかな。
「……」
この人、どっかで。
「……」
見たことがあるような、ないような。
「……」
しかしあまり、じろじろ見るのも失礼だろうと。
視線を横から自分の足元へと戻し。
立っている女性の足元が、視界をかすめて。
「……、」
うーん。
どうりで見覚えがあるわけだ。
雨が降った中で、こっちから帰るのが久しぶりだからかな。
「……」
そういえば、この辺りで事故があったと聞いたことがある。
車通りが多い上に、雨の日は車だと若干視界も思うようにはいかないのだろう。
その事故は、雨の降った、丁度これくらいの時間の時で。
「……」
信号が青に変わる。
女性は動くことなく、ただそこに傘をさしたまま、スマホをいじっている。
ま、見間違えかもしれないし、スマホに夢中で気づいていないだけかもしれないけれど。
「……」
まぁ、明日はハロウィンだから。
見えやすくなってただけかもな。
お題:制服・口紅・雨




