表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/13

エピソード04

 「この歌詞が切ない曲、なんていう曲ですか?」

 

 「題名忘れたけど、フォークソングですよ」

 

 「フォークソング?」

 

 「あっ、知らない?」

 

 「ええっ、聞いたことがなくて」

 

 「フォークギターっていうのがあって、基本それだけで歌うんですよ」

 

 「へー、そうなんですね」

 

 「昭和の名曲」

 

 「えっ、昭和ですか」

 

 「そう、古きよき昭和の時代」

 

 「昭和の時代には、こんな素敵な曲があったのですね」


俺達は、首都高を横浜へ向け走った。

彼女の名前は、東条麗子。

察しが付くと思うが、彼女の家は東条財閥の末裔だ。

俺の記憶では、彼女の父親は衆議院議員を3期連続で務めたものの、直近の選挙で落選。

比例代表での復活も叶わなかった。

つまり、現在無職のはず。


 「パスタは好き?」

 

 「はい、大好物です」

 

 「今から行く店は、アラビアータのスパゲティーが最高なんだよ」

 

 「うわぁ、楽しみです」

 

何故かその日は、駐車場がどこも満杯。

ってことで、たまに利用するパシフィックホテルに車を置くことに。

地下からロビーに向かうエレベータが、電子音と共に開いた。


 「ごめん。ここからだと、レストランまで遠くなっちゃったな」

 

 「私は幸せです。こうして、京一郎様といっしょに歩けてるんですもの」

 

彼女は、本当に嬉しそうに微笑んでいる。

この笑顔を見ているだけで、俺も幸せな気持ちになるのは間違いない。


だけど・・・

俺の心の奥底に立ち込める暗雲は、

少しずつ広がっている。


 「あのー、京一郎様」

 

 「ん、どうした?」

 

 「京一郎様って少し長いので、京様とお呼びしてもよろしいでしょうか」

 

 「様はいらないんじゃない?10歳年下だし」

 

 「ダメです!私のご主人様になるお方ですから、様は絶対に必要です!」

 

 「そう、なんだ・・・じゃ、京様で」

 

 「はい!」


 どーみても、俺には20代の女子にしか見えないんだが・・・

 大学生と言われても、そのまま信じる

 腐ってるのか、俺の目

 

 「こんにちは、」

 

パリッとしたブランド物のスーツを着た男が声をかけてきた。


 「はい、なんでしょう?」

 

 「お忙しいところすみません。今、2階でブライダルフェアーをやってまして、ジュエリーも合わせて展示販売しております。もし、よかったらいかがかなと思いまして、」

 

 「ブライダル?」

 

 「京様、いってみませんか?」

 

 「あー、ありがとうございます。ご覧いただくだけで結構でございますので。あちら奥のエスカレーターをご利用ください」

 

 こんなに幸せそうな顔してるけど・・・

 きっと、これが最初で最後のデートになるだろうな

 

 「じゃ、いってみようか」

 

 「はい!」

 

俺達は、男が示したエスカレーターに向かって歩き出した。


 

 「課長、あの二人、どーみても姉と弟ですよ。なんでキャッチしたんですか?」

 

 「越前、」

 

 「はい」

 

 「お前、マダマダだな」

 

 「えっ?どうしてですか?」

 

 「まず、あの二人は姉弟じゃない、他人だ。それは、顔の構成パーツを見ればわかる」

 

 「でも女は30代前半、男は20代前半でたぶん大学生くらいですよ。まさか、カップルってことは無いでしょう。姉弟じゃないなら、不倫じゃないっすか?」

 

 「だからお前は、マダマダなんだよ」

 

 「えー、」

 

 「不倫と純愛の見分けが付かないんだから」

 

課長と呼ばれた男は、ヤレヤレ顔で首を横に振った。

二人はホテルの外に出た。

課長は、加熱式タバコの煙を吐いた。

 

 「さっきのカップルは、間違いなく純愛だ。二人の様子を見ればわかる。そして、女の方が男にべた惚れだが、男はそうでもない。つまり、カップルになってまだ時間が経ってないってことだ」

 

 「そこまで分かるんですか、凄いっすねー」

 

 「そういう場合、女は二人だけのイベントを作ろうとする。そうすることで、男の感心を自分に引きやすくするためだ」

 

 「それでキャッチを、」

 

越前は、勉強になります!と言いながら、スマホに会話のメモを打ち込んだ。


 「そして、最も重要な事は、男も女も金持ちだ」

 

 「えっ、そうなんですか!」

 

 「おいー、お前がいくら経験浅いっつっても、それだけは見抜いてくれよ。でないと、やってけないぞ、この営業」


 「すっ、すみません」

 

課長は、ブツブツ言いながら携帯を取り出す。


 「あっ、彩ちゃん、俺。いまさ、エスカレーターでそっちに向かう女30前半、男20前半のカップルだけど、特Sだから。うんうん、例のジュエリー必ず見せてよ。じゃ頼んだ、よろしく」

 

 「課長、例のジュエリーって、まさか・・・」

 

 「その、まさかだよ」

 

 「ええー、」

 

 「越前、一週間の昼飯賭けないか。買うか、買わないか」

 

 「買うわけないっしょ!1200万するんですよ、アレ」

 

 「そうか。じゃ、俺は買う方に賭ける」

 

 「フフフ、課長。一週間と言わず、一か月の飯賭けましょうよ」

 

 「いいぜ」

 

 「墓穴掘りましたね」

 

 「どうかな」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ