閑話 勝木冬路と染山夏子
「……ここに用があるのか?」
「うん。知り合いが入院してるんだ」
知り合い……。
「たまーに様子見に行くんだけど、今回は真一郎くんと二人で来たかったんだ」
「初対面だけど、大丈夫か?」
「大丈夫。面会の時は、同伴者込みだから」
同伴者?
「その人が押さえてくれるから、怪我することないよ」
いやいやいや。
かごめの大丈夫はアテにならねえし、病状が思ったより深刻だぞ……。
これ以上続くと暗くなるから、明るい話をしよう。
「……ここの病院って、フードコートあったよな。面会でも、食べれたりすんのかな」
「思ったほど美味しくないよ。これ食べるなら、ココ◯チ行った方がマシ」
ダメだ。
何話しても暗くなる。
「どうしても食べたいなら、付き合ってあげてもいいけど」
「頼む」
面会後、渋々付き合ってくれるようだ。
*
「……お化け屋敷に来た気分だ」
頭を床に叩きつける者。
出された食事を手で触って楽しむ者。
テーブルを齧る者と、様々。
看護師の姿はなく、まともな者が俺らしか居ない。
「402号室……。ここだね」
知らん婆さんに抱きつかれてるのに、かごめは全く気にしてない。
いや、もしかしたら内心イラついてるかもしれないし、夜な夜な呪いに行くかもしれない。
「入るよ」
2回ノックしてから、かごめは扉を開ける。
布団の中に誰か居るようだが、顔が見えないので、性別が分からない。
「起きてる?」
かごめが乱暴に布団を捲ると、性別が確定した。
女の子だ。
「……かごにゃん……、かごにゃんなの」
「冬路さんは、まだ来てないの」
ゆるい深緑のボブに、そばかす。
前髪は真ん中で分けられていて、入院服を着せられている。
わざとらしく聞こえるほど声が色っぽいが、普段からこうなのか、角田が居るからこうなのか……。
「来てもおかしくないんだけど……。後ろのババア何。かごにゃんに触れる身の程知らずは、キルしないと」
「大丈夫。後日、呪っとくから」
満面な笑みで呪うとか言うな。
「……隣の人は誰? かごにゃんの友達?」
「多分」
「知り合いだ」
「知り合い……。友達以下ってやつなら、まあ安心かあ」
バカで助かった。
「染山夏子。これが私の名前。それよりかごにゃん、冬路お義兄さん探してきてよ〜。私、寂しい〜」
「もう少ししたら、来るよ」
「すぐじゃないと、嫌! じゃないと、床に頭ぶつけるよ!」
「いいよ。ぶつけて」
「今のは、嘘! でも寂しいのは、ほんとだから〜」
「探してくるよ。お前の義兄さん」
「真一郎くん!?」
かごめが驚いた顔をする。
「かごにゃん……は少しの間、ここで働いていた過去があるんだ。配属先くらいすぐ分かるだろ?」
「まあ……分からなくは、ないけど……。ここから少し歩くよ。それでもいいの」
すると、夏子の顔がパアッと輝き。
「嬉しいっっ! 冬路お義兄さん時間にルーズだから、いつも待たされるの! 良い友達を持ったねえ〜、かごにゃん」
「だから知り合い」
かごめは夏子のことが、苦手なのだろうか。