閑話 病院でケア
かなたの自傷行為は、フラッシュバックとかそんなやつ
なんか、疲れた。
寄り道して、甘いものが食べたい。
「お姉ちゃん」
「なに?」
「あそこの店で、お茶したい」
「いいよーっ」
店に入ると、店内はガラガラだった。
雨天だから、客足も遠のくのだろう。
厨房から、店員の話し声だけが聞こえる。
「何、食べたい?」
「パフェとか……」
「パフェかあ〜。私もこれにしようかな」
苺パフェが目の前に来ると、病院でのストレスが無になるくらい、気持ちが緩和される。
病院終わりに毎回ここへ来るが、厨房で喋ることを除けば、提供はとても丁寧だ。
スプーンで掬って甘い味に浸っていると、パフェは次第に溶けていく。
みなとは既に完食して、スマホをいじっていた。
「……ごちそうさま」
「まだ、残ってるよ?」
「もう、いい、かな……」
「そっか。じゃ、出よっか」
店内に、何かがあるわけじゃない。
今日は、調子が良くないだけ。
普段だったら、もっと口にできる。
店を出て駅の方角に向かって歩いていると、みなとは言った。
「……病院って、嫌だよね。何が嫌って予約したのはこっちなのに、待ち時間が長いところ」
確かに、あそこの待ち時間は長い。
だけど私が納得する答えは、そこじゃない。
「…………薬でどうにか抑えつけようとしてるとこが、イヤ。かなたの年で精神薬の服用は、私反対だな。かなただって、あんなの飲みたくないでしょ」
違う。
「飲みたい」
「え」
「そうすれば楽になるって、主治医の人言ってたし」
「そ、そっか……、飲みたいのかあ……。かなたの事だから苦いからヤだとか、同級生に見られると恥ずかしいとか」
「思わないよ。少しでも楽になれるなら、挑戦してみたい」
みなとは、何も言わなかった。
みなとは、私に変わってほしくないから。
だけど、音哉は「いいよ」と言ってくれる。
ちぐはぐな義理の家族だけど、私はこれくらいが丁度良い。
「わかった……。次行った時に、そう言うね」
嫌そうな顔で言われた。




