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閑話 病院が無法地帯
兄が生きてた頃の話
〜ごめんで済む話じゃない〜
「昨日はごめんね。なんかうるさかったでしょー」
「謝るのはてめえの方だ。病院を何だと思ってやがる」
音哉はお兄ちゃんから襲ってきたことにしたいらしく、普段だったら言葉にしない言葉を兄にぶつける。
「……よく分かんないけど、許す」
「航太は怖いくらい良い子だね。でも助かる。なんでも許してくれそうな気がするから」
そう言って、僕の頭を撫でる。
抗がん剤の影響で髪の色素は薄く、僕らが渡した菓子ばかりが、病室を彩る。
病院にもコンビニと言われるものがあるが、1日何個と決められているらしく、検査で少しでも引っかかると、看護師に怒られるらしい。
今は元気な方で、髪の色素が薄くなるぐらいで留まっているが、これ以上悪化しないことを心の底から願ってる。
今はお兄ちゃんに会えることが僕にとっての幸せで、その幸せがなくなったら、どうしたら良いか分からなくなるから……。