10話 戦火前夜の誓い
砦の街クスタリカは、最後の防衛拠点である。
一個大隊の構成は、司令官一人、副司令官四人、そして正規兵二千、奴隷兵三千である。
最後の防衛拠点であるクスタリカは、四つの城壁で守られていた。
その最前線の砦には、主力部隊が配置されていた。クスタリカ全体の城壁防衛には、四つの砦にそれぞれ一個大隊が割り当てられており、総兵力は二万である。
クスタリカ全体を統括する総司令官ガリウス・デヴァルドの指揮下には、先鋭部隊二万がいた。これにも奴隷兵三千が含まれていた。奴隷兵は捨て駒として扱われるためである。
クスタリカの総防衛戦力は、六万であった。
ロクス・ハーリン司令官が率いる部隊には、ノルドたち奴隷兵も含まれていた。
ノルドたち奴隷部隊は、泥の上を歩いていた。さびた槍、磨かれていない革鎧、くたびれた顔。列は崩れ、歩調も揃っていない。見ようによっては戦力にすら見えなかった。
ロクス司令官が率いる正規兵も最弱であり、ノルドたちの奴隷部隊もまた最弱部隊であった。
ロクス司令官は、敵に対して最も軽視された裏側の城壁を任されたことで、激しい憤りを抱いていた。それは、彼の部隊が戦力として最も評価されていないという判断の現れだった。
ノルドもロクス司令官から怒鳴られていた。
「てめえの部隊は何だ! 練度も士気も最低だ!」
怒声は容赦なく飛び、周囲の兵たちの視線が冷たく集まった。
「これでは私が無能と言われる」
司令官は苛立ちを隠さず、ノルドを激しく蹴りつけた。
「こんな奴に奴隷兵を任せたのは間違いだった。次は前線に送るぞ」
ノルドは土下座しながら謝っていた。
「申し訳ありません。この部隊は私でも……頑張ります」とだけ繰り返した。
しばらく蹴って気が晴れたのか、司令官は戻っていった。
周囲の奴隷兵たちは心配そうにノルドを見つめていたが、ノルドは逆に怒鳴り返した。
「お前たちが、俺の言うことを聞かないからだ!」
なぜか、その姿に少し笑ってしまっている者もいた。
奴隷兵は強い者ほど先に死ぬ。
ならば、弱く見せるしかない。
──それが、奴隷兵の生き残る術であり、ノルドの部隊は演技を続けていた。
──勝てる機会が来るまで、ひたすらそれを待ち続けるために。
クスタリカの街では、正規兵たちの談笑が響いていた。
「敵は少ないらしい」「最前線が善戦してる」「一週間くらいで終わるかもな」──
ノルドは、歩を止めずに耳だけを傾けた。
浮ついた声に、ノルドの確信は深まった。
──これは、仕組まれた敵の罠だ。少ない部隊で砦を攻略するなど不可能だ。
──総司令官ガリウスが有能であることを祈っていたが、正規兵の動き、他部隊の奴隷兵の様子を見る限り、ただの凡庸な司令官だと感じていた。ノルドたちの奴隷部隊は、他の部隊からも笑われていたが。
三日後、クスタリカでは「前線優勢」「敵軍後退中」「敵軍の援軍なし」という報が飛び交っていた。
クスタリカの総司令官ガリウスは「この機に乗じて殲滅戦に出る」と高らかに宣言し、精鋭部隊を引き連れて敵へと向かった。
ノルドは、それらの行動から理解した。
──おそらく、ガリウスが率いる部隊は崩壊する。
──それでも、自分の推測が外れることを祈っていた。
夜が来るたび、風が音を奪い、砦には沈黙が広がった。
ノルドは身を伏せるようにして城壁から離れ、民家の影を縫い、小道をたどって一軒の扉を叩いた。
灯りが漏れたその先に、マルレーネがいた。
ノルドは街の人々にも、戦火から逃れる策や戦う手段を、マルレーネと共に作り上げようとしていた。
それは、マルレーネと心を通わせる場所でもあった。
「……きみに危険なことをさせてすまない」
声は小さく、不安を滲ませていた。
マルレーネは首を横に振り、ふわりと笑った。
「わたしは大丈夫です」
……
「きみは……疲れていないか?」
マルレーネは、今度は少しだけいたずらっぽく笑った。
「大丈夫ですってば。見てのとおり、元気です」
……
「きみがいなければ……僕には何もできない」
その声は、どこか自信を失った子どものようだった。
マルレーネは急に表情を引き締めた。
「そんなこと、言わないで。ふたりだから、できることがあるの」
沈黙がふたりを包んだ。遠くから、夜風に混じってかすかな鐘の音が響いた。
……この街が戦火に包まれる夜には、
クラウスは呟くように言った。
「……やれることはやった」
その声音には、満足と諦めが入り混じっていた。
マルレーネは真っ直ぐに彼を見つめ、はっきりと答えた。
「まだでしょ。ふたりで生きることが、終わってない」
クラウスは目を細めた。火の粉がふっと舞い上がる。
「そうだな……もし生き残れたら──結婚しよう」
マルレーネは一度だけ目を閉じ、小さくうなずいた。
「……はい」
そして、クラウスはマルレーネを守るように、優しく抱きしめた。
chatGDPに書かせれるか頑張ったが失敗した。戦争と恋愛を入れるのは難しい
ダメな時には早めに諦めて自分で書いたほうがよさそうである。
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