後日談
戦が終わってしばらくしたのち、光の神殿に再びシャルの姿があった。
リュクスが目を細め、皮肉っぽく笑う。
「何しに来たの」
シャルは柔らかく微笑んだ。
「貴女を迎えに来たの」
「はあ?私を?呪いの精霊になった私を?」
「ええ。精霊は、血の繋がりがなくても宿るのでしょう?もし良ければ…私と共に来ない?」
リュクスは一瞬、目を見開いた。
そして、戸惑いを隠すようにイグニスへと視線を送る。
「…イグニス。あんたの主人、頭おかしいんじゃないの?」
イグニスは淡々と返した。
「ご安心ください。元から、シャルロッテ様は“お人好し”なのです」
シャルは手を差し出し、もう一度微笑んだ。
「おいで」
その一言に、リュクスはとうとう涙をこぼし、シャルに抱きついた。
「…ごめんなさい…今まで、たくさん苦しめて…」
「いいの。もう、終わったのだから」
シャルがそっとリュクスを抱きしめると、彼女の身体は光に包まれ、やがて精霊本来の姿——
美しい光の鳥へと変わった。
「イグニス、これから賑やかになるわね」
「そうですね」
リュクスは照れ隠しのようにそっぽを向き、つぶやいた。
「しょうがないわね…一緒にいてあげるわよ」
シャルは小さく笑い、彼らと共に、ノアの待つ北の帝国へと戻っていった。
こうして、精霊と人が共に歩むこの大地に、
新たな時代の兆しが静かに芽吹いていった。
それはやがて、大いなる祝福をもたらす者の物語へとつながっていく――




