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炎の戰乙女  作者: 合歓稲
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第10話 静夜に交わす想い

それからの日々、毎朝ノアはシャルを部屋まで迎えに来て、二人で鍛錬場へ向かうのが日課となった。

シャルも食事の量を調整し、すぐに元の体型に戻ったようだった。


そんなある朝の鍛錬が終わったあと、ノアが声をかける。


「お腹は空いてないか?この前のケーキ屋に一緒に行かないか?」


シャルは嬉しそうに頷き、「着替えてきますね」と部屋へ駆けていった。

ノアも軽く汗を拭き、着替えてからシャルの部屋の前へ。

「準備はできたか?」と声をかけると、「はい、大丈夫です」とシャルが姿を見せた。


いつもとは違う、街歩き用に仕立てたドレス姿だった。

「一応、何着か作っていただいたときに、外へ出ることがあればと思って…」

そうはにかみながら答えるシャルの姿に、ノアの心臓は破裂しそうになる。


「……陛下?」

声をかけられ、ノアははっと我に返る。「ああ、行こうか」と微笑み、

彼女の手を取って城下町へ向かった。


ケーキ屋に着くと、店主がすぐに応対する。

「まあ、陛下、またお越しいただき光栄です。本日はどのケーキになさいますか?」


ノアは少し微笑みながら「今日はこの姫君の好きなものを選んでもらおうと思ってな」と言った。

“姫君”と言われてシャルは頬を染める。


「この前食べたもの以外にもたくさん種類がある。好きなものを選んでみるといい」とノアが勧めると、

「では……このケーキをいただけますか?」と、シャルはチョコのミルフィーユを選んだ。


店にはテラス席もあり、ふたりはそこに並んで座り、紅茶とケーキを楽しんだ。

シャルは新しい味に目を輝かせて「これも、美味しいです」と無邪気に微笑んだ。

その笑顔を見るたび、ノアの胸は高鳴る。


店は貸し切りではなく、他の客もいる。ノアは普段から付き人を連れていなかった。

精霊がいざという時の護衛役を果たしているので、彼は自由を大切にしていた。


しかし皇帝が見せる珍しい笑顔と、隣で楽しげにケーキを食べる少女――

その光景に、店の客たちの間でもざわめきが広がっていた。


シャルは「他のケーキも、少し食べてみたいです」とおそるおそる尋ねる。

ノアは「好きなだけ選んでいい」と優しく返し、シャルは嬉しそうにカウンターへ。


二つほど新しいケーキを選び、席に戻ると、「あの、たぶん全部は食べきれないので、

よければ半分こしませんか?」と、控えめにノアに差し出す。


ノアは一瞬戸惑いながらも、「構わない、俺も気になっていた」と笑い、

シャルがフォークで小さく切り分け「あーん」と差し出すと、ノアは思わず素直に受け取ってしまった。


その無邪気さと距離の近さに、店内のざわめきは一層大きくなる。


しばらく甘いひとときを楽しみ、満足そうに「美味しかったです」とシャルが微笑むと、

ノアはその表情を胸に焼き付けるように見つめていた。


帰り道、城までの距離を歩きながらも、ノアはしきりに「馬車で来ればよかった」と後悔していた。


部屋へ戻ると、ノアはついに我慢しきれず、そっとシャルを後ろから抱きしめた。

「あのっ、陛下……?」と戸惑うシャルに、「すまない、しばらくこうしていたい」と囁く。


シャルも驚きながら、そっと彼の腕の中で身を委ねた。


「……ありがとうございます、ノア。私に、こんな普通の毎日をくださって……」


ノアは彼女を包み込みながら、ずっと胸に秘めていた想いを伝えた。


「俺は君を愛している」


「……ノア」


「もし俺の想いが君を縛るのなら――それでもいいのか?俺は、もう手放す気はない。」


ノアの問いかけに、シャルはまっすぐに彼を見つめ、静かに答えた。


「ノアは私を“人”として、そして一人の女性として見てくれました。それがどれほど幸せなことか…

むしろ、私のほうこそ願います。どうか、これからもノアの傍にいさせてください。」


その言葉に、ノアは深く頷き、そっと彼女を優しく抱きしめる。


「……シャル、愛してる。君を決して後悔させたりはしない。」


まるで大切な宝物を守るように、ふたりは互いのぬくもりを確かめ合う。

そして、静かに唇を重ね、やさしい夜の時間を分かち合った。


その間、ふたりの精霊たちは静かに部屋の前に佇み、

誰にも邪魔されない、穏やかな夜がゆっくりと更けていった。


「俺の想いが君を縛ってしまう――それでもいいのか?俺は、もう手放す気はない。」


ノアの問いかけに、シャルはまっすぐに彼を見つめ、静かに答えた。


「ノアは私を“人”として、そして一人の女性として見てくれました。それがどれほど幸せなことか…

むしろ、私のほうこそ願います。どうか、これからもノアの傍にいさせてください。」


その言葉に、ノアは深く頷き、そっと彼女を優しく抱きしめる。


「……シャル、愛してる。君を決して後悔させたりはしない。」


まるで大切な宝物を守るように、ふたりは互いのぬくもりを確かめ合う。

そして、静かに唇を重ね、やさしい夜の時間を分かち合った。


その間、ふたりの精霊たちは静かに部屋の前に佇み、

誰にも邪魔されない、穏やかな夜がゆっくりと更けていった。

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