表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

98/183

痛みと引き換えの元気

「礼を尽くしたが逆に失礼だったか?ささ、床になど座らずお立ちください」


ゴバル男爵に促されるままセイジは椅子へと座らせてもらう。もちろん先に足の悪い男爵を座らせてからだった


「シャルロッテ王女殿下より話は聞いていたのだが、なんでもレティカ姫の足を治してみせたとか。それでこの年寄りにも話が持ちかけられたわけだ。この右ひざ、戦場で矢を受けてしまってな。聖女に見てもらったものの元には戻らなんだ」


苛立つわけでもなく、長年連れ添った相棒を労うようにゴバル男爵は右ひざを撫でる。その傷に後悔などないように


「矢ですか、診てみましょう。失礼ですか足に触れても?」

「もちろん、何をためらうことがある。貴方は聖人様、治してくださる方だ。それを拒否する理由もない」


恐る恐る伺うセイジに男爵は楽しそうに笑って答えてみせる。それは緊張など不要だ、と言わんばかりの男爵からの気づかい。

男爵としてはセイジの姿勢を大いに気に入ったのだろう。決して自分の身分を笠に着ない、腰の低い姿勢に


「それでは失礼します」

早速ゴバル男爵の足を、そして一緒に全身を診る。するとやはり膝以外悪い場所はなかった。年齢の割にかなり筋肉もある。この足でまだ鍛錬しているのかもしれない


ただそれもあってか膝の様子はかなり悪い。無理をしたのか側副靭帯が損傷している

しかし矢を受けたらしいから中に異物があるかと思いきや幸いにしてその様子はなく

問題点は膝の皿が変形して形成されていることにあった。これ骨折したの適当に癒しの奇跡で治したな?


骨片が散らかってるならまだ楽にどうにかできたというのに、本当誰だこんな治療したの


吐き出したい溜息をぐっとこらえセイジは立ち上がり男爵の目を見て答える。治せます、と一言だけ

その言葉に男爵が大きく目を見開くのをセイジとエリーゼはしっかりと見ていた。

誰だって元気に歩けるなら歩きたいのだ、その希望が見えたらそれは喜ぶ他ない

一度は聖女に匙を投げられた怪我を今治せると言われているのだから。


「ただし一つ問題が、一瞬かなり痛いと思いますが大丈夫でしょうか?」

まるで天使のような悪魔の笑顔でさらりとセイジが男爵へと聞く。その理由は簡単、変な形になってるなら一度ぶっ壊す必要があるからだ。

それは当然かなり痛いわけで・・・

「痛みなど、何をいまさら。どんな痛みだろうと受け止めてみせよう。まだこの足と共に歩めるのなら」


数分後、男爵の堪えきれぬ悲鳴のような声と共に治療は速やかに行われた・・・

もちろんこの一件は誰にも漏らすことは許されない男爵家の秘密である。


「はぁ・・・はぁ・・・あー死ぬかと思ったぞ」

「だからかなり痛いと言ったではありませんか。ただその代わりしっかりと足は治ったはずですよ」


テーブルにつっぷして倒れる男爵に歩くよう促す。少々筋肉が右足だけ落ちてはいるが歩行に支障はない程度。側副靭帯も一緒に癒したのでもう何事もなく歩けるはず


「あ、あぁそうだな。そうだったそうだった」

いつもの癖で杖に手を伸ばそうとしたのを男爵はふと、一瞬笑ってその手を引っ込めた。

そして感触を確かめるように膝に手を置きすっと立ち上がり、一歩を踏み出す


その一歩は、久しぶりに痛みを感じない一歩。ゴバル男爵の久しぶりの一歩

その一歩に男爵は外でもないのに上を見上げる、まるで涙を堪えるように


「あぁ・・・素晴らしい。本当に私の膝は治ったのだな」

こうしてセイジの手によってゴバル男爵の足は無事完治した。そしてこれによりゴバル男爵は騎士団の指南役から再び騎士団へ現役復帰することに


先の戦での功績で騎士から男爵の位と、そしてこの屋敷を王直々に賜ったということもありその実力は王国の中でも指折りだそうな。どうりで立派な身体してると思ったしマナーもいいわけだ。叩き上げの武人様だもの



初作品となりますがいかがでしょうか?

ブックマーク、いいね!と星頂けると喜んでもっと早く投稿できますのでぜひお願いします


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ