貴族としての能力
「お待ちください!」
王族への不信を隠そうともしない態度、これに慌てたエルレイ侯爵
そしてシャルロッテとセイジはさて帰るかと踵を返して部屋を出ようとするのを何とかセイジの前に出てそれを止めるエルレイ侯爵だったが
「話は終わりだ、一時間以上待たせてコレだ。とっくに時間は切れている。セイジへ治療代を渡せ、そうしたら帰る」
「これはその、違うのです。娘はその男がいきなり入ってきて錯乱しているだけでして」
「ほう、ならお前も錯乱しているのか。この一時間も冷静になれるはずの時間があったのにもかかわらず、さらに娘へろくな説明もしなかったと」
もしこの問いかけにエルレイ侯爵がイエスと答えていたら・・・この後の侯爵の結果は変わらなかったろう。そんな能力のない者に侯爵という地位は背負えないのだから。
「いえ、そういうことではなくですね。その・・・娘はシャルロッテ王女殿下に憧れていまして、久しぶりに二人で会えると興奮していたのですよ。ですので少々お二人でお時間をですね。その間そちらの者はどこか他所に」
本当にいい加減にしろと言いたい。地位あれこれ言う気はないが人としての扱いがおかしいだろう。絶対に帰る。俺はそう心に決めた
「そうか、私はこの娘に用も興味もない。王族相手に頭も下げられないような者に会うほど暇でもない」
どんな貴族でもマナーを躾られているなら5歳でも頭を下げるのが貴族社会。
例えベッドの上であろうともそれは変わらないだろう
それすら躾けられていないのなら、何のために時間を割くのか。シャルロッテはその価値を見出せない
幼少期から王族として厳しくマナーを叩きこまれ、騎士としても己を律するシャルロッテにリーシャの姿は平民よりも酷く醜く見えているだろう
シャルロッテの言葉に何も返事ができず黙るエルレイ侯爵の隣をスルりと抜けてセイジは部屋を一足先に出た。
あーあようやく帰れるわ。気づけば当たりは薄暗くなり始めている、さて帰って晩御飯にしようか。今日も美味しいご飯だといいなぁ~
部屋を抜け、屋敷を一人で出たセイジは宿へと向かって歩きだす
何やら部屋ではまだこちゃこちゃした声が響いていたが、俺にはもう関係のないことだ。
ただまぁ・・・レティカ姫の友人であってもそう穏便に済むかは怪しそうだけど
貴族と王族の何たるかを知ってはいない、けれどもあの態度で何事もなく済むとも思えない。
侯爵家の今後をぼーっと考えつつ歩いていると後ろから今度はガシャガシャと鎧の音が近づいてきた
どうやら話は終わったらしい
「おい、護衛を置いて一人で帰るなばか者」
「いやーだって少しでも早くあの屋敷を離れたくて」
「それはそうだな。私もそうだった」
追いついて早々鼻で笑うシャルロッテの手には何やらじゃらじゃらとした音がする布袋が
「これを貰うのに時間がかかってな。報酬の治療費だ」
「あーよく出しましたね。私はもらえないもんだと思ってましたよ」
ケチだから、ではなく平民の俺には出さないと思っていたから。結局娘の治療もできなかったし
受けっとった袋は50枚も入ってるだけあってちょっと重かった。
「では、はいこれを騎士様に」
そして貰った者を俺はそのまま騎士様へと返した。その行為に首を傾げられるのはその通りだろう。なんでだと
「王族が血を流すにしては安いかもしれませんが、あまり私のは貴族相手に請求できませんでしたので。本来私が請求する治療費は相手任せですしね」
ある種自分を信用させるための金だったのだ、信用を得たなら金はやはり被害者のものだろう
最も信用は得られなかったのだけれども
「そうか、そうだったな。そうと知っていれば金貨100枚でも出させればよかったか」
それはいくらなんでもとも思うが王族の血だ、それくらいでもおかしくないかもしれない
「とはいえ一人で使うには心苦しい金だ。よし今晩は私が奢るから食事に行こう。丁度近くに美味しい食堂がある」
ということで誘われるまま二人で食堂とやらに。ここで断ってもいいのだけれども心苦しいと言われては付き合わないわけにはいかない!さあ美味い飯だ!
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