試されるのはどちらか
左手からダラダラと血を垂れ流すシャルロッテ
それをあたふたとして見ているエルレイ侯爵とそれを見ているセイジといった不思議な三人が屋敷にはいた。
「おいセイジ、痛いぞ早く治してくれ」
「と、言われましても・・・それを治したところでエルレイ侯爵が信用してくれないのであれば意味がないのでは?こういうのはまず確認からされませんと騎士様」
今必要なのはエルレイ侯爵がそれで納得してくれるかどうかなのだ。
もっとも納得しないのであればおそらくシャルロッテ王女殿下は次に王へ文を認めるよう頼むことだろう
今こうして目の前で治療されても、自分が言葉を尽くしててもダメだったと言って
そんなことになれば侯爵家の当主の首は早々に入れ替わるだろう
「みみみ認めます認めます!その傷が癒させれればその男の力を認めますので早く治療を!」
「だそうだぞセイジ」
とりあえずエルレイ侯爵が認めることはわかった。だがこれではまだ進めない、なぜなら・・・大事なものがまだ残っているからだ
「で、誰がその治療費をお支払いになるので?まさかシャルロッテ王女殿下からいただけませんよ」
誰のためにこんな傷を負ってると思って。お前が出せ、とセイジは言っているのだ。エルレイ侯爵に
「おおおお支払いします!支払ますので早く治療を!」
さすがにこの出血程度で死ぬことはないが、それでも王族が自分のために傷を負って出血しているのだ。エルレイ侯爵としてはすぐにでもその事実を消したいのだろう
「では銀貨30枚いただきます」
ざっくり神殿の6倍ほどの代金である。普通にぼったくりの類ではあるのだが・・・取れるやつからは取るのが信条のセイジである
「わ、わかったから早く治療を!」
いい加減我慢の限界なのかエルレイ侯爵が怒鳴るようにセイジを急かした
やれやれ別に切れてるのはお前の手ではないだろうに。放っておけば切れるのは首だったろうけど
ようやく治療ができる、とセイジはシャルロッテ王女殿下の手を取りささっと癒しの奇跡を施す。
するとそこには初めから無かったかのように綺麗に傷はなくなっていた。
残ったのは床に大量の血痕だけ
「はぁ・・・良かった・・・」
よほど生きた心地がしなかったのかエルレイ侯爵が床にへたりこむ
「うん、いい腕だ。どうだエルレイ侯爵これで信用してもらえただろうか」
「え・・・ああはいそれはもう・・・」
本当に信用したかはかなり怪しい返事ではあったが、とりあえずこれで話は前に進むのだろう。残念ながら
「それで娘さんはどちらに?まずは診てみないと何とも言えないので診察をしたいのですが」
「・・・娘は今ベッドで寝ている、支度がある故しばし待て」
セイジの問いかけにエルレイ侯爵が不機嫌そうに答え床からゆっくりと立ちあがり部屋を出ていった。
その後ろ姿はどう見ても娘を治してもらえる、と希望を持ち嬉しそうなものではなく
明らかにまだまだこちらへの不信感があるのが見て取れるほど。
「支度か、これから治療だっていうのにまさか化粧とかしてないと思うけど。どう思います騎士様」
「知らん、私は大きな怪我などしたことがないからな。朝になればさっさと起きて鍛錬だ。化粧など王族としてパーティーなり夜会に出るときだけだしな」
どうやら参考にならない方に話を振ってしまったらしい
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