マナーよりも思いやりの心
玉座に座り、セイジの姿に目を奪われていた王ははっとして声を上げた
「この場は無礼講だ、マナーは問わない。面を上げよ」
その言葉で騎士やエリーゼ、家臣のみんなが立ち上がるのを待ってから最後にセイジは立ち上がる
この場で一番地位が低いのは自分だと認識しているからだ。
「そなたがわが娘レティカを治した聖人で間違いないか」
その王の問いかけへの返事に俺は困った。ここではいと答えていいものか
あの一件は無かったこととしているのに。それ自体を質問する王への不信感を感じざる負えない
だからこそ、俺の返事は一つだった
「人違いにございます、私は王族の方々とお会いしたことはありません」
そう答え再び頭を下げた。本当もう勘弁してほしい、マナー以前にこの王様は他人の心を思いやることを身に着けてくれ。無理なら呼ぶな
「そうか、人違いか。ならここに呼ぶのは間違えたか。帰ってよいぞ」
その言葉は今日聞いた一番最高の言葉だった。王様ありがとう!
心の中で感謝して俺はそのまま後ろを振り返ろうとしたのだが・・・それを騎士様が止めた。おい!
「我が王よ、この者で間違いありません。心配ならレティカをお呼びしましょうか?」
「ふふ、何ちょっとした戯れよ。本当にお前はあの一件を他言しないようだな。自らの手柄を吹聴するような者に身体は預けられないからな」
最悪なことに王様に気に入られたらしい、こちらとしては向こうを気に入っていないのだが。
「既に子爵から報酬は受け取っているだろうが俺からも何か渡そう。何が欲しい、言ってみよ」
この展開はあり得るとは思ったが・・・望みが一つある。ただそれを通すとちょっと神殿側との仲があれになるかなーとは思うんだけど・・・神官長や聖女と仲がどうなろうとどうでもいいかと今更ながら思い伝えることに
「では恐れながら一つ、神殿以外で聖人として働くことを許可願いたい。神殿では私のやり方をすると給料はもらえず食事も露天で食べるものより粗末なものを頂くことになりますので」
俺のその言葉に王の視線が鋭くなりその場にいた神官の一人を貫く。
「神官よ、聖人の言葉は誠か?まるで奴隷のような扱いだが?」
「い、いえそのようなことは決して!その者が嘘を言っているのです」
当然のように否定されたが・・・まあ否定されようが構わない。こちらの要求は変わらないのだから
ただ神殿を出させろ、好きな場所で仕事させろ、それだけだ
「そうか、では後で調べさせよう。もし聖人の言葉が真実であったならお前の首は飛ぶと心得よ。私の前で嘘を報告したのだからな」
その言葉に神官の顔が青ざめている
そしてよく見ればその隣には聖女のローズ様が。しかしよく見ればその顔はあまり血の気がなく具合悪そうだ、ご自身を治療されたほうがいいのは?
と心配して見るとなぜか睨まれた!俺が何をしたというのか・・・
「聖人の言葉が真実かどうかは調べるとして、神殿を出るのは問題ないだろう。好きな場所でその癒しの奇跡の力を思う存分奮うといい。そうだなまずはこの王城で一つ仕事を頼もう、患者はこの私だ」
好きな場所で仕事していいやっほーいと思ったら王様を治せという。この人やっぱり嫌いだわ・・・
王様の言葉に聖女と神官、そして他の家臣が目を丸くして驚く。こんなよくわからない男に御身を任せるなど正気ではない、と言わんばかりに
初作品となりますがいかがでしょうか?
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