丁寧な荒療治
こちらが回答を待っていると、もらえたのは笑い声であった。それも何やら楽しそうな
「はーっはっはは!それは面白い。聖女様すら治せなかった俺の手を治すか?いいだろう、ナイフ一本なんぞケチなことは言わん。治ったらお前専用のナイフ何本でも作ってやろう」
いやそんな何本もいらないんだが
閉店セールばりに大盤振る舞いされても困る。
「それではそのまま椅子に座っててください、ちょっと身体を診て見ますので」
承諾を得られたので早速診察を
背中に手を当て身体中を診てみると・・・幸い他に悪い部分はないらしい。ただ鍛冶屋という同じ姿勢が続く職業柄なのか身体のバランスはかなり狂っている。よくこの歳まで違和感なく動けたものだ。
「この右手・・・変な突き方して折れでもしましたかね。骨はしっかり繋いでますけど神経が圧迫された形で治療されてます。麻痺はこれが原因でしょうね・・・」
「それで、そいつは治せるのか?」
患者としても原因が分かり説明されたところで治せるのかどうかのほうが大事なのだ。だが、店主は楽しそうに治せるのかと聞いてきた。疑っているのではない、コイツなら治せるんじゃないかと期待しているのだ。
「もちろん、ただ一瞬痛いので我慢してくださいね?」
「一瞬の痛み程度、この手が動くようになるなら問題ないわ」
と、どうやら覚悟はばっちりな様子。では遠慮なく
バキッ!
店主の右腕を捻り、思いっきり骨を折ってやった。切開手術も考えたのだが、こっちのほうがたぶん手っ取り早い。店主も問題ないと言ってくれたし
あまりの痛みに店主の目が大きく見開かれ、『がぁっ!?』とうめき声を上げるもそれは一瞬のこと
次の瞬間には骨は治され痛みはほぼ消えていた。
「はい、治療完了。しばらくまともに使ってない影響で元通り動かすのに少し時間はかかるから。まずはそのリハビリのやり方教えるからしっかり聞いてください」
と説明しようとしてるこの言葉も店主は聞いてるのかどうか・・・なぜかプルプル震えてこちらを睨みつけている。おかしい、治療は成功したはずなのに
もちろんただへし折っただけじゃない、折れたことで圧迫された神経が解放され、できたスペースを確保しつつ筋肉を少し持ち上げ、そのうえで骨を修復した。これで問題なく麻痺は取れるはずなのだが
「痛てえじゃねえかこの野郎!」
「だから一瞬痛いって言ったでしょうが、問題ないと言ったの店主さんでしょうが」
「こんなに痛てーとは思わないわ!」
どうやら店主さんの覚悟はちょろっとしたものだったらしい。とはいえもう終わったことだ、文句を言われても困る。
「それだけ元気なら問題ないでしょう。はい、それじゃあリハビリのやり方教えるからしっかり覚えてくださいねー」
店主の文句を他所に淡々とセイジはリハビリのやり方を実践を踏まえて教えていく。そんなセイジを恨めしそうに見ながら店主も大人しく従うあたりこれ以上の文句はないようだ
初作品となりますがいかがでしょうか?
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