取り立て代行
静かな路地裏にセイジの野太い悲鳴が上がる中、それを止めさせたのもまた騎士であった。
「おいシスター、その手を離せ。それはレティカの恩人、手荒な真似をするな」
ごもっともな話だがソレってなんだソレって。もう感謝するなら扱いをだな
「そちらこそ離してください。セイジ様の身柄は未だ神殿預かりのはず。強制的に連行はできないと思いますが」
二人の女の目線が交差しバチバチと火花を散らす。セイジもエリーゼから拘束を解かれ軽く腕を回すが幸い損傷はない様子
さてチャンスだ逃げよう、そう思うも二人の瞳の端にはしっかりと俺の姿は捉えているだろう
微妙にこちらにも何か気配を感じる。
ここで逃げ出せば二人仲良く追いかけてくるのは間違いない。
とはいえこのまま黙って二人の成り行きを見守っていればおそらく俺に都合の悪いことになる可能性がある。
なんせ二人は神殿に連れて行きたい派と王城に連れて行きたい派のどちらかなのだ。解放するという選択肢を持っていない。
「俺は宿ポンポーロに泊まっているわけだし、今は王様からの回答待ち。何かあれば朝か夜にでも宿に来ればいい。一応こちらの騎士様も言ってるように神殿での立場をとりあえず気にする必要も無さそうだし、むしろ街中で治療すればおのずと名声も上がるかもしれないからエリーゼとしてもいいんじゃない?」
と、二人が一旦拳を降ろせるように宥める。これでダメならどうせもうダメだ、お好きにどうぞ。なるようになれと言ったところだが・・・
「わかった、レティカの恩人に無理強いはさせられない。今は退こう、どこかに居なくなると思い捕獲しようと思っていたが宿が決まっているなら問題ない」
と騎士が納得してくれようとしたというのにエリーゼが余計なことを言った
「あぁこの人たぶんそのまま王都からあるいは国から出る気だったと思いますよ」
兜でよく見えないがその奥から眼光鋭い視線が飛んできたのだけはわかった。エリーゼめ余計なことを!
「全く人聞きの悪い。こんな大勢の患者を前に逃げ出す者が居るというのですか、シスターエリーゼ」
「いや貴方今朝お金もらってないって治療しなかったじゃないですか」
「それはそれ、これはこれ。人は善意だけでお腹は膨れませんし服はいただけないのです」
実際セイジの服はぼろい。お腹は・・・昼過ぎということもあり減っている。
「そういえば昨日の給料をもらっていないんだったか、いくらだ?」
「ざっくり患者一人につき銀貨2枚ですが・・・シスターエリーゼ私が昨日何人治療したか分かりますか?」
「600人くらいでしょうか?私も正確な数を数えていませんので・・・」
その答えに騎士は懐からお金の入った袋を取り出しセイジに向けて投げた。なかなかな量が入っているらしく、セイジがキャッチした際の音はチャリンなどではなくジャリ!と言う音と重さだった
「足りなければ後でまた渡そう。気にするな、後で神殿に私が請求する」
正直この騎士様を俺は見直した、とても優しいお姉さんだ!
それなりにまとまったお金が手に入った以上やることは一つ!飯だ服だそして治療だ!
もらうもん貰えば文句はございませんとも。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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