逆転
「それでは改めまして要件を、先の一件に関してオランド王が聖人へ感謝の言葉をとのことで王城にお呼びです。ですのでセイジ様私と同行していただけますか?」
ほらやっぱり面倒ごとだ。しかもこれはレティカ姫と同じように言わなければならないようだ
「お断り申し上げます」
この言葉に使いの者と、それと騎士の空気が一瞬で変わる。それも悪い方に
「残念ながらこれはお願いではないのですよ、王の要求に平民のに断る権利があると思いますか?」
使いの者は笑顔でそう告げ、騎士は腰の剣に手を掛けた
これで下手なことを言えば俺の首はスパッと斬り落とされることだろう。だが俺の返事は変わらない。
「そう、俺は平民です。そんな平民が貴族相手のマナーを身に着けているわけもなく。まして王族相手となれば貴族の比ではないマナーが必要とされるでしょう。それを身に着けてない私が王様に謁見すれば失態で首を切られるでしょう。となれば今ここで断ってもそれは同じ。なら早いほうがいい」
セイジは両手を広げ無抵抗を示す。残念ながら向こうは武人だ、正面から戦えば勝てる相手ではない
もし勝ったとしてもその後の逃走が上手くいくとは思えない。地理にも疎く逃走手段は徒歩だけだ。
頼れる知り合いもいない。となればもうできることはない
「そ、それは・・・確かに不敬な態度を取れば不味いですがレティカ姉さま相手にはそのような事は無かったと聞きましたが?」
「それは誰からお聞きになられたのでしょうか。その方は寛大な心で私の無礼を無かったことにしたのかもしれません。何せマナーのなっていない私には何が不敬なのか無礼なのか分からないのですから」
残念ながら今のセイジにマナーがあることを証明できるものはいない。最低限の言葉遣いはできても頭の下げ方一つこの世界で習ってはいないのだ。他にも様々なマナーがあったとしても誰にも教わってない以上どうしようもない。騎士のような振る舞いをすることもまたマナー違反で平民としてどうすればいいのか分からないのだ。
「王は厳格な方ではありますが不寛容な方ではありません。真摯な態度を見せれば悪い結果にはならないと思いますよ」
「その真摯な態度とはどのようなものか教えていただけますか。何か言われた際の応答の仕方もわからない私に真摯な態度と言われましても対応ができません。仮に王様に声を掛けられた際、わかりませんだけの回答は真摯な態度でしょうか」
セイジとしてはこの時点で王様への心象はかなり悪かった。平民をいきなり王城へと呼び出し、さらに謁見させるという行為を素直に喜べる平民がどれだけいるのか。
万一があれば感謝の言葉を告げるためとはいえ結果として平民の首が飛ぶのだ。もし感謝したいのなら黙って金なり渡すだけが平民にとっては一番だったろう
「それで、いかがいたしますか。ここで私の首を落としますか。それとも王様に事情を話していただけますか。それか私を国外に追放していただけますか」
要求する側が使いの者からセイジへと変わった瞬間だった
初作品となりますがいかがでしょうか?
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