もう一人の聖女
「謝罪されたところで償いがあるわけでなし、用は済んだでしょう。私は出て行かせていただきますよ」
神官長が軽く頭を下げたのを見て、反転してドアを開けようとしたとき、逆にドアが外側からノックされた。なんともタイミングの悪い
「神官長様、入室してもよろしいでしょうか」
聞いたことのない女性の声、ディアナではないらしい。さすがにこの速度で移動はしてこないか
「あああ、入りたまえ」
神官長が慌てて軽く衣服を整えて答えた。どうやら入ってくる人物はそれくらいの人物らしい。つまり・・・面倒な事になりそうな予感がする
開く扉から退き、仕方なく護衛の騎士の隣へと並んだ。もちろん恰好もしっかり二人と同じく背筋を伸ばして。
「失礼いたします、こちらの聖人様が到着されたと聞いたのでご挨拶をと」
「おぉ、それはそれは。わざわざお越しいただき申し訳ありません。用が済み次第使いのモノを出すつもりだったのですが、今はまだ話し合いの最中でして。そちらにいるモノが聖人様だそうです」
入室してきたのは女性、年齢にして20歳少々だろうか。ディアナよりちょっと若いくらいか大差無さそうな女性。真っ赤な髪はまるで薔薇のようだった
ただ香水の匂いが好みじゃないのでお近づきにはなりたくない
一応神官長は指差しではなくこちらに手を向け示したが明らかに向ける目線がこちらをバカにしている。
神官長というのは神に仕えてるんじゃないのか?それがこの態度では・・・到底神への進行など広まらないだろうに
「そちら・・・とはどなたでしょうか。もしかして貴方様ですか?」
並ぶ三人の男を見て聖女は適当に一人に手を向ける。その人物こそ・・・護衛の男性だ
「いいえ、違います。聖人様はこちらの男性です」
当然の答えに俺も同じく答えた
「いいえ違います、こちらの男性こと聖人様です」
隣にいた違う騎士だと答える
そしてその騎士も慌てて答えていた、このモノが聖人様ですと
「あらあら、困りました。これでは誰が聖人様かわからないです・・・そうだ、神殿には患者さんがたくさん来ています。ディアナさんもいないので本当連日私一人で大変で大変で。その患者さんを癒しの奇跡で治して見せてはくださいませんか?」
またタダで仕事しろとのお達しに俺は答えなかった
当然護衛の騎士二人も答えられないので答えはしない
そして、代わりに答えたのは・・・シスターエリーゼだった。
「聖女ローズ様、発言の許可をいただけないでしょうか」
あのエリーゼが畏まり、わざわざ発言の許可を得るほどの人物。それがこの女性聖女ローズというモノらしい
「あらあら、そんなに畏まらなくていいのよシスター?それでどうしたのかしら」
「はい、この者こそ聖人のセイジ様なのですが、この者は治療をして対価を得ることで生計を立てています。ですので金銭をもらわないと治療は行わないのです」
改めてシスターの発言のせいでこちらに聖女の視線が向く。あと神官長のも
「そう・・・そうですわね。神殿に仕えてる私たちと違って今までお一人でいらしたのですものね。お金にも困ったでしょうに」
ボロボロで汚れた衣服を見て憐れむような視線が向けられる。憐れまれるようなことはないからこそ、その視線は不快なものだ。
「いいでしょう、神官長。治療をしてもらいますのでお給金を払ってあげてもらえますか?」
「は、は!?お給金・・・ですか。しかしいかほど・・・」
「そうですね、ちょうどディアナ様もいらっしゃいませんし彼女の割り当てから一日分のをでいいのではないかしら」
ローズの言葉に背くのは難しいのか、神官長は額に脂汗を流しながら頷く。もう一人の聖女もおそらく立場は神官長よりかは上なのだろう。
きっと帰ってきたこの話を聞いたら怒られるんだろうなーと簡単に想像がつく
初作品となりますがいかがでしょうか?
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