一方そのころ辺境伯は
辺境伯がセイジ達が居なくなったことを知ったのは翌朝のことだった。
朝にメイドがセイジの部屋を訪ねるも返事はなく、仕方なくドアを開けるとそこはもぬけの殻
慌てて執事やメイド長に伝え、その後辺境伯に伝えるもその頃にはとっくにセイジらは辺境伯領を出てしまっているのだ。
検問所のモノに話を聞くと、どうやら深夜に聖女様御一考が出て行ったとのこと、火急の用事とのことで門を開き、見送ったと・・・
間違いない、彼を拉致したから出ていったのだろう。
「くそが!なぜだ!どうして、いつ拉致など!」
あまりの事態に辺境伯は机を思い切り叩き激怒する。あの冷静だった辺境伯の豹変に傍にいた執事のロハスは・・・ただ冷静に傍観した。
この屋敷の警備は完璧、とは言わないまでもそう易々と侵入はされないはず。警備のモノも数人おり、誰も侵入者はいないと言っている
となるといつだ・・・全く分からない。
辺境伯もまさかセイジがこっそり部屋を抜け出し飲食しに行ったとは思わないだろう。それも自分から拉致されに行くつもりだったとは
叩いた拳の痛みがゆっくり引いていくように、感情も冷静さを取り戻していく。
「彼にはこのままこの街で聖人様として医療を続けて欲しかったというのに・・・」
手元に渡せなかった金貨が入った袋を伯爵は握りしめる
「屋敷を調べてみたところ、侵入の気配はありません。代わりに窓の鍵が開いており、街で聞き込みをした結果、酒場で彼を目撃したとの話が。ですのでおそらく彼は自分から屋敷を出て・・・その飲食をしに」
「夜遅くに自分でか!?拉致される可能性が高いと忠告もしていたのに!?」
執事のトロンのあまりの報告に辺境伯は天を仰いだ。どうか嘘であってくれと
「それとエリーゼもおりません、彼女が手引きした・・・かはわかりませんがおそらくは一緒でしょう。彼女だけ気づき止めようとしたが無理だった、可能性も」
「さてどうだろうな。腐ってもシスターだ、聖女のために動いた可能性もある。が、今はそんなことどうでもいい。確かなのはこの辺境伯から聖人がいなくなり、今後の計画を練り直す必要がある、ということだ」
「そうですね・・・領地防衛計画がとん挫したと言ってもいいかもしれません。猛者たちを治療し、あわよくば隣国のモノも引き入れ隣国をけん制するという計画が」
トロンもこの計画に加担していたのだろう。残念そうに眼がしらを抑える
「成功すれば血を流さずこの領地を守れると思っていたのだがな。とりあえず今の人数でもそれなりに脅威になり防衛はできるだろう。聖人様には渡せなかったがこの金で装備と防壁の強化を行う」
「もしかしたら聖人様がいつか帰ってきてくれるやもしれません、その時に備えて診療所は綺麗にしておきます。私はきっと帰ってきてくださると信じていますので」
二人はそれぞれ未来を思い描く。が・・・残念ながらその未来絵図の実現は難しいだろう
なんせセイジは辺境伯が戦争しようとしてると思っていたのだから。
せめてその真意をセイジにも話していれば・・・所詮平民、と少なからず思ってしまっていた部分もあったのだろう。
自分と肩を並べて語れるものではないと
その結果がイマなのだから、自業自得だったろう。
辺境伯とセイジ、同じ空を見上げてもそこに描く未来はまるで別物であった。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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