愛していません
いつから気づいたのか。セイジの答えに彼女は驚愕することになる
「いつから・・・そんなの気づきもしなかった。なんとなく言ってみたら本当に出てくるんだもん」
つまり彼女はセイジがなんとなく言ってみた言葉に炙り出されてしまったのだ
この状況に彼女は驚愕と、そして・・・呆れて口が開いてしまっている
「いや、なんとなくいつも誰かに護衛なりされてるし、それにたぶん君らふつうのメイドじゃないし。そう考えれば尾行なりしてそうだなーとね?」
傭兵集めてるって話もあったし、辺境の地で戦争もあるとなれば戦えるものは少なくない。
辺境伯自身の護衛も兼ねたメイドなりがいてもおかしくないだろうとは思っていた。それが尾行くらいしてても不思議じゃない。
ちなみにそれっぽい気配とか全くわからない。
「どうやら私はへまをしたようですね」
はぁと溜息混じりに肩を落とす彼女を手招きして隣を歩くよう促す。護衛もするなら尾行がバレた以上もう隣を歩く方がいいだろう
「それで、俺が酒場で色々聞いてたのも聞こえてたんだろう?なら君にいくつか質問しても?」
「内容によります。私が答えるわけにはいかない内容もありますので」
そうは言うがその時点でほぼ黒、というか肯定してるのだがわかってるのだろうか?
「じゃあ胸のサイズは?」
ちょっとした冗談のつもりで聞いたのだが彼女は笑って答えてくれた。案外無表情というわけでもないんだな。
「あなたが聖人でなければ今頃川に投げ捨てていますよ?」
笑顔でとんでもないこと言う女性だった
「冗談だよ、それじゃあ辺境伯が戦争始めようとしてるって本当?」
「それは本当です、5年前の戦争で辺境伯は引き分け、といえば聞こえがいいですが街のすぐ傍まで攻め込まれ街の中まで攻撃が届き市民にまで被害が出ています。このまま反撃せずにいてはオスト辺境伯の地位も危ういと、そう思っていた中で貴方を見つけたのですよ。」
あぁやっぱり戦争をしようとしたのは俺が切っ掛けか。もちろん俺がいなくても辺境伯は戦争をしたのだろうが、切っ掛けになるのは気分が悪い。
「ちなみに今から君と愛の逃避行をしても戦争は止まらない?」
「まず私が貴方を愛していませんので逃避行できませんし、貴方の有無では止まらないでしょう」
うわぁさらっと愛してないとか言われてちょっと悲しくなった。
「ということは逆に俺は今から街を出てもいいのでは?」
「今出て行かれると貴方の愛する私の首が飛びますが?」
「愛していませんので大丈夫です」
そういうと彼女の眉が少し吊り上がった。仕方ない、愛は一方通行じゃ成立しないのだ
「今夜は大人しく屋敷にお帰りください。他の者にバレないようコッソリ入れてあげますから」
「はぁ・・・こんなことならこっそり街を出てしまえばよかった。というか今から君を振り切って逃げだしても」
と言った瞬間彼女が俺の腕に自分の腕を絡めた
「夜道は女一人では危ないのです、エスコートしてくださいますよね?」
「君は私の護衛なのだろう・・・」
逃がさないぞ、と腕に力を込められながら俺はとことこと屋敷に帰ることに。ろくに女性にモテない人生だったけれども、こうして女性に腕を絡まれて歩くことができたのはこちらにきての幸いだったか・・・
これが恋人なりならもっとよかったのに。まるで連行されるかのように連れていかれ俺は部屋へと戻った。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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