女性が担当する理由
「それで貴方聖女様と同じく癒しの奇跡が使えるんですって?その奇跡見せてもらえる?」
開口一番お姉さんが言ったのはやはりというか予想通りというか、そういうことらしい
とはいえ見せようにも患者がいなければ見せようもないというのになぜそんなことを言うのか。答えは簡単だった。お姉さん自身が患者らしい。
「なるほど、それで担当が荒事できそうな男じゃなくお姉さんだったと。それでどこが痛いので?」
厄介なことにならずに済んで何よりと思う反面、女性が相手ならそれはそれでまた面倒なので困るのだけれども。お姉さんがこちらに向けたのは胸元の側面、それも神経の集まる厄介な場所だった。
よく見ると少し盛り上がってるのがわかる、これは・・・何か入ってるのか?
「ごらんの通り、前の戦争で受けた矢じりが入ったままでね。なんとか取り出してもらおうと思ったのだけれど・・・残念ながら医者にはお手上げなんだそうよ。下手に手を出せば麻痺する恐れがあるなんて言われてね。それでこのまま、以来数年間ろくに右腕も動かせず安全な内部の仕事をしているの」
腕を見比べると若干補足なっている右手、本当に私生活では動かさないよう気を付けているのだろう。しかし時間や金を掛ければ聖女様に治してもらえるだろうに、なぜしないのだろう。
この時はただ疑問に思うだけだったが、それは後々わかることだった。聖女という王都にしかいないその存在の意味を
「それで、異物を取って治せばいいので?成功したら通してやる、と?」
「え、ええ。貴方にできればの話だけれど」
そんなこちらを試すような彼女を見て、俺は迷わず・・・
「断る」
断った。
「遠してもらわずとも結構、このまままた馬車に乗って違う町なり村に行くまで。それでは出していただけますか、双方もう用はないでしょう」
こちらが立ち上がるとお姉さんが慌てて立ち上がりこちらを引き留める
「ま待って欲しい、なぜだ。貴方は聖人なのだろう、癒しの奇跡を使えるのだろう?この通行証はそうそう偽造などできない、すれば死罪になりかねない。発行元に問い合わせればすぐにわかるんだ」
「なぜと言われても当然としか答えようがない。私の前に何人もの人がここを通ったが、一人としてその職業の技術を披露させられてる人はいない。なのになぜ私は披露させられるのだ、しかも成功しなければ通されないというハードルまで付けられて」
正直不満でしかない、なぜありがたがる奇跡なのに金を払いたくないのだろう。タダで手に入れたものの価値など大してないというのに。それが自分の生活、人生に大きく影響するなら相応に払うべきだと思うのだが。
「それは・・・そうだが。だが我々には不審な者を取り調べる資格がある。聖人など当然信用できるわけがない、誰も見たことも聞いたこともないのだから。それを証明しろというのは不思議ではないだろう?」
「だから言っているだろう、通らない。だから帰せと。それとも檻にぶち込んで身元照会でもするのか?構わないがそれをしたところで君は治らないぞ。もちろん信用されたとしても俺は二度とこの辺境伯領には来ない。ここには大勢治療を求める人がいると聞いたから来たんだ。それがこの対応ではな」
双方の言い分はある意味もっとも、どちらも筋は通ってはいるのだが・・・頭を下げなければならないのはお姉さん側だろう。なぜなら困っているのだから
初作品となりますがいかがでしょうか?
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