金の価値と人の価値
姫の指摘にモーロック子爵が慌てて釈明する
「誤解ですレティカ姫、食事はこの者が不要と言ったので出さないまでのこと。私は丁重にもてなさせていただきましたとも。食事が必要なのだな!?さ今食堂に連れて行こう、ささ!」
強引にモーロック子爵に肩を押され部屋を出される、もちろん騎士の護衛付きで
「お前、いい度胸をしてるな、私に恥をかかせるとは」
レティカ姫の部屋から少し離れたとろこで子爵が話しを切り出す。いい度胸もなにも、この子爵様ほどではないと思うが。治した以上丁重に扱わなければ姫から顰蹙を買うのは当たり前だろうに
「お前にやる飯などない、さっさとこの館から出ていけ。レティカ姫の治療が終わった以上お前にもう用はないからな」
「こちらとしてもモーロック子爵に用はありません、ただ報酬はいただきますよ。レティカ姫の治療代を」
「はっ、これだから平民は品がない。このような廊下で貴族相手に金の要求とはな」
「品があるお貴族様は、無理やり平民を連れ去って仕事させた上に部屋に監禁して報酬も支払わないと?」
二人のやりとりを周りにいる騎士は黙って見ていた。どちらが正しいことを言っているかと言えばセイジのほうが正しいからだ。もちろんそこに貴族への敬意などないことには言いたいこともあるだろうが、この男は姫を治療し、飯も出されず物置部屋のような場所に監禁されたのだ。
他の聖女にはできない姫の治療を成功させたのにも関わらずこの仕打ち、自分でも我慢などできないだろう
「まあいい、ほら報酬の銀貨だ。これを持ってさっさと出ていくんだな」
そういって子爵は銀貨二枚を床に投げた。金に汚いという話の割には金を大事にしないんだな
「銀貨二枚、これでいいんだな?王女レティカ姫の治療は銀貨二枚で」
セイジの言葉に子爵は首を傾げる。部下から聞いた話ではセイジの治療は銀貨1枚や二枚、タダで治す場合もあるという話だったからだ。
ただし、それは平民のろくに金もない人相手の金額なのだが
「俺は患者からは生活に困らない程度の金しか受け取っていない。そうでなければ治療しても生きていけないからだ。だが俺の恰好を見ろ、金のある者の姿に見えるか?王族や貴族の治療代が他の平民と同じ額しか払われない、それは構わないさ。俺は明確な金額を設定してないからな。だがな、平民と同じ金額ということは、治療の順番も優劣無しってことだ。当たり前だろう、誰を治そうが金額同じなら、面倒のない平民を治すほうがいいんだ、むしろ貴族や王族に何かあっても俺は後回しにする。聖女様に頼めばいい。他の貴族らに何か言われたら俺はこう言うからな、モーロック子爵に頼まれ治療したら払われた金額は銀貨二枚だった、平民を治療してもらえる額と同じだった。ってな」
それは不味いとさすがにモーロック子爵も気づいたのだろう、少なからず有能なこの男をどこかの貴族も頼るかもしれない。その時自分の名前とやったことを吹聴されてはたまったものではないぞ、と
それならば幾ばくかの金をここで払うのはやむを得ない出費
「いいかレティカ姫のことは他言無用だ、いいな」
そう言ってモーロック子爵は懐の財布から金貨を一枚取り出しセイジの手に握らせる。開かないよう思いっきり掴みながら。他のことも喋るなよと、言外に言いながら
「もちろん、私にそのことを聞く人もいないでしょうからね。私以外の人も喋らなければ」
お前の部下やレティカ姫にも釘刺しておけよ、とこちらも言外に込める
とりあえず懐は一気に温かくなったのでこれで色々買い物しましょうか。まずは飯だ!
モーロック子爵らの恨めしい視線を感じつつ俺は屋敷を後にした。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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