金の価値
「治療完了、また何か病気やケガしたら連れてくるといい。ただそうならないようお元気で」
少年は傷跡が無くなった右手を握りしめて確かめた。今まで握りしめることもできなくなった手が・・・握れた。
その様子に母親は涙を流し子供を抱きしめている。
無事治って何より、奥さんがテーブルに置いた銀貨の中から二枚だけ俺は手に取る。これだけで報酬は十分だ。
「報酬はいただくよ、残ったお金は持ちかえってね。それでじゃあ俺は朝ごはんにするんでこれで。女将さーんごはんよろしくお願いします」
治った子供を嬉しそうに抱きしめる母親を横目に旦那が金を回収した。金は大事だからね、ただ家族はもっと大事にしたほうがいいと思うが。金じゃ買えないモノもあると彼はいつ気づくのかね。
朝飯を食っている間、ちらほらこちらを見てくる連中が。宿屋の客なのだろうけど、用があるが食後まで待とうとしてくれているのだろうか。それならマナーのいい人たちでうれしいのだけれども
「ふぅご馳走様でした。で、お兄さんたち何か用かな?待たせたみたいだけど」
お礼にこちらから声を掛けるも反応がかなり薄く、『いや、なんでもない』ときたもんだ。じゃあちらちら見るの止めてほしかったんだけど。
「あ、そう。じゃ女将さん、患者探してくるね」
「あいよ!しっかり稼いでくるんだよ!」
まあ稼ぐイコール病んでる人沢山ってことだからどうかと思うが
女将さんの背を押され宿を出て人通りの多そうな大通りに出た。ここで声を出して患者を探してもいいが、いくらなんでも効率も悪く疲れるので、今朝得た銀貨を使い雑貨屋へ行くことに。
そこで適当な布と棒、それと墨を少々もらい旗を作った!
まぁちょっと見た目はアレかもしれないが楽なので旗に『けが人病人治療します、値段は払える金額で』
と書いて町を歩く。
これで声掛けてこないなら元気だろうし、見た人も誰か必要としてる人教えてくれるかもしれない。
というのは大分甘かったらしい。
声を掛けてきたのは一人、しかも治療したはいいが治ってないから払わないときた。
まぁいいけどな、後悔しても知らないが。
「ってなことをしてみたんだけどさっぱりダメだったわ。この町も案外けが人とか病人少ない感じですかね?」
「そうだねー流行り病もないし怪我も魔物が来ない限りそんなしないかもしれないね。多少の怪我なら薬草でいいし、需要なら辺境伯のとこに行ったらどうだい?」
「それが許可証を発行してもらえなくて、いい機会だからここで患者探してみようかと」
事情を女将さんに話してみると笑われた。そりゃ医療関係者といいつつ薬草も薬もしらないんじゃ怪しまれるわ。と
正直に話しただけなんだけどなぁ。世の中世知辛いわ
なんだか今日の晩御飯のスープはちょっとしょっぱい気がした。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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