説教
「払いたいと思う金額でいいってことは、0でもいいんだろ?」
子供に手を引かれながら旦那がセイジへ問いかけた。確かにセイジはそう言っていた、が・・・
その問いかけはセイジを冷めさせる言葉であった。
「ああ、いいよ、払わないというのもある意味構わない。その代わり、俺はあんたが子供のやけどを治すのに金を払う価値がないと判断するからな。それがあんたが払うモノだ。他人に取っても価値のないものを俺は二度と助けない、そのうち子供がまた病気やケガになっても俺は助けない。そんな価値のないモノに割く時間はない」
セイジの言葉に夫婦と子供はもちろん周りのちらほらいた客までが引いていた・・・
セイジにではなくその夫婦に。
「あんた、しっかり働いて稼いでるんだろ、子供の治療代くらい払ってやりなよ!それでも親かい!」
周りが言いたいことを女将さんが叫ぶ
「この人だって何も金貨を出せなんて言ってないだろ!?払えるだけ払いたいと思える金額でいいって。銀貨一枚だってきっといいさ、子供の手がまたちゃんと動くようになるのにアンタらは払えないっていうのかい?」
三人の身なりを見れば俺よりいい物を着てる、健康状態も良さそうだ。それなのに払う金はないっていうのはある意味親としては正しいのだろう。金はなんぼあっても困ったときには足りないものだ。子供にもまだまだ掛かるだろう。払わず済むならそれでいいと
旦那はしぶしぶ財布から銀貨一枚を取り出しこちらに差し出そうとするのを奥さんが横から財布に手を突っ込み銀貨を掴めるだけ掴んでこちらに差し出した。
「お、おいっ!」
「あんたは黙って!これでこの子の手を治してやってください!お願いしますっ!」
頭を深く下げ、掴んだ銀貨を両手で掲げてる姿を俺はできれば最初に見たかったな。
俺はしゃがみ子供と再び向き合った。
「どうだい、君の手を治して欲しいかい?母親は君に治って欲しいと思って頭まで下げた、私は君を治してあげられるが君が治して欲しいと言わない限り私は治療しないよ、さあその手をどうしたいんだい」
一瞬ちらっと自分の右手を見てから少年は下を俯く。財布の紐がきつそうな親父のことだ、家でも何か言われてるのかもしれない。が・・・知らない自分にできることは残念ながらない。できるのは手の治療だけ、心は親と周りにいてくれる人らに頼むしかない。
「大丈夫だから、さこのおじさんに手を診せてごらん」
母親に後ろから抱きしめられながら、子供はゆっくりと右手をこちらに向ける。よく見ると酷いやけどだ、真皮まで達してるだろう。何があったのか・・・
「よく決断した、すぐ治してやるからな」
少年の手を包むよう両手で右手を握る。あぁやっぱり大分深い・・・でもこれくらいならすぐだ。
光輝くセイジの手に両親に子供、それに周りにいた宿泊客が目を見開いて見ている
とはいえ治療はあっという間に終わり、幻覚かと思い目をこする人が何人もいるのだった。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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