久しぶりの子爵領
次にセイジとエリーゼが向かったのはお隣の町ハンブル
モーロック子爵領に入ると向かったのはもちろん子爵の家である
だが聞くまでもなかっただろう、この領地の雰囲気を見ればそれは一目瞭然
まず人がほとんどで歩いていない。まるで誰もいないように静まり返っている雰囲気は異様としか呼べないものだった。
「それで子爵、この領地はどうなっているので。感染者がいるなら治しますし、いないなら他所に私は行きます」
結局セイジも子爵の屋敷まで来たものの、中へ入れてはもらえず玄関先で問答することに。
「おそらくはいない・・・とは思う。辺境伯の領地で流行り病が発生したと、大規模だと聞いて急ぎ領地を閉鎖し他の者も家から極力出るなと伝えたのだ」
それは正しい判断だったろう、子爵領とはいえ辺境にあるのだ。あまり元々人の出入りは多くない
それならしばらく家に籠っていればある程度やり過ごせるだろう。
ただ、おそらくいないでは双方困るだろうと、セイジは一軒一軒大事ないか聞いて回った。
結果、幸いにして具合の悪い者はいなかったのだが家に籠ってるせいで仕事ができず食料が金が尽きるというのは避けられないらしい。
「それはどうにもならないな、とりあえずこれで凌いでくれ。そう長くは続かないから」
そう言ってセイジがしたのは袋に入った金を一軒一軒置いていくことだった。
さすがに金貨は多いので持っていた銀貨を一握りずつ置いて行く
「はぁ太っ腹ですねセイジ様。あれだけあれば家一軒年内働かず済みますよ?」
「おやそうなので?まぁでもいいんじゃない?お金があると思えばある程度の不幸は吹っ飛ぶし」
結果、それなりに軽くなった財布だけがセイジに残ることに。当然子爵から金が出るわけではない。
それよりも流行り病に掛かってるものがいないなら次だ、次とセイジとエリーゼは町をさっさと離れた。
次に向かったのは3つある村のうちボクスク村
そこでは普通に村民が農業に勤しんでおり、何事もない風景が広がっていた
「おーい村長ーみんなー元気かー」
セイジのその声に村民の視線が一気に集まる。
「おぉー!セイジ様ひっさしぶりでねーか!元気も元気、みんな元気にしておりますだ」
「天気もいいし畑仕事日よりだしなー!」
何とも陽気で楽しそうに働く村長らを見てセイジもエリーゼもほっとする
しかしなぜこんな陽気かが分からない、流行り病の話は来ていないのだろうか
そしてセイジのその予想は当たっていた・・・
「そ、そったなものがあるんだがや!?おらたち聞いてないど!」
辺境ということもあり情報がおそらく子爵の所で止まったのだろう。ただそれもあってか人の行き来もないため平和でいられたのだろう。
「とりあえずみんな健康そうで何より。一応手洗いうがいだけはしっかりして過ごすんだよ。それと万一の時は遠慮なく頼っていいから、まぁ私も今西に東に南に飛んで歩いてるからなかなか捕まらないかもしれないけど」
「あんがとなぁ。あれからイリーナもすっかり元気に歩けるようになって、なんとお礼を言えばいいんだが・・・」
村長の後ろで今まさに鍬を振り下ろしてる女性・・・おそらくあれがイリーナさんだろう。畑仕事できるほど元気になるとは、それは何より。
涙ながらに見送る村長らを後にセイジらが向かうのは出発の地とも言えるアインツ村であった。
「セイジ様、私の記憶が確かならもう一つ村があったはず・・・そちらには向かわれないのですか?」
「あぁあそこか、あそこは聖人お断りらしいから私はいけないんだよ。だからいいよ、さあそれよりアインツ村にれっつごー!」
こうしてヘインス村へは向かわず、セイジとエリーゼはアインツ村へと行くことに。
ボクスク村とアインツ村の村民は後に語る、ヘインス村は聖人から見放された村だと
聖女信仰が強い村だが、同じ位にある聖人から見放されるという皮肉な村はそう時を経たず消えて行く。
誰も聖人から見放された村になど住みたくはないのだから。
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