治療と脅しと
辺境伯により大量のぼろい服が患者へと支給され、セイジらもその服を一時借り施設を出ることに。
もちろん着ていた服は煮沸消毒である。
「あのセイジ様、私新調した服なのですが。金貨数枚したやつなのですが!」
「そうだねーだから来ないほうがいいって言ったのに」
「まさかご自身はまたあの古着を着てたのは・・・」
「そりゃ高い服を煮沸消毒するのイヤだったし」
珍しくエリーゼさんがうな垂れる。高い服だけに相応に気に入っていたのだろうか
これは申し訳ないことをしたもんだ・・・あとで自腹で何か良さそうな服を買ってあげたほうがいいか。
こうしてエリーゼが着ていた服は前のシスター服同様色あせる事となり・・・テンションがかなりガタ落ちすることに。
「あぁーもう次の町に行きましょう・・・どうせまた煮沸するんだから私はこの古着でいいです」
おしゃれに気を使っていたエリーゼさんはどこへやら、今は辺境伯支給のかなりぼろい服を着ているのに着替えたがらなかった。
「まぁまぁエリーゼさん、後で好きな服買ってあげるから、それまで前のシスター服なり古着で我慢してよ」
「・・・それならもう少し頑張ります」
幸いにして財布はある程度中身が入っているから大丈夫なはず。それよりもだ、まだこの街でやらないといけないことがある。
「辺境伯、私たちはあと一日この街に滞在しますので他にも具合が悪い人がいたら並ぶよう伝えてください。怪我は診ませんので注意を」
「はいっ・・・必ずや街の者全てに伝えます。セイジ様今回は本当にありがとうございます・・・貴方がいなければこの街はどうなっていたことか・・・」
私が来なくても少し遅れて聖女様が派遣されたことだろうとは思う。ただ到着まで時間がかかった分犠牲者は多く出たかもしれないが
伯爵の計らいで久しぶりにお屋敷へと泊まることになったセイジとエリーゼ。そこにいたのは懐かしい顔ぶれのみんなだった。
「本当に戻ってきたんだね!まったくもう誘拐されたと聞いたときはどれだけ心配したか・・・」
メイド長が涙ながらに当時を思い返す。その涙を見ると心が痛む・・・
確かに誘拐されたのだけれども、自分からされにいった部分もそれなりにあったので。
「ええ本当にどれだけ心配したかわかりませんねー?」
おい何とか言えと言わんばかりにエリーゼさんがこちらに視線と言葉を向ける。もしかしてまだ根に持っていらっしゃる?
「いやぁ結局向こうでもタダ同然で働かせられましたからね、一歩間違えばこの格好で生活してたでしょうよ」
お前らのとこも金払ってないんだぞ、と匂わせるとエリーゼさんが肘でこちらの腹を打つ
だって本当のことじゃないか・・・
翌朝・・・診療所の除菌が終わっていないため急遽少し離れた広場に作ってもらった診療所でセイジは並ぶ患者の治療をしていた
そしてそんなセイジの近くにはエリーゼと辺境伯お抱えの騎士も
理由は簡単、もし感染者が出た場合、即座に治療はするものの、同時に家へと同行して様々なモノの煮沸消毒をさせるためである。
面倒でやらない、という事も普通にある以上こうして監視して強引にやらせるしかないのだ
「あーお兄さん感染してるね。治療しておいたからこちらの騎士様連れてお家に行ってください。家族がいるなら列に並んでね。もし虚偽の報告したら縛り首もあるからお気をつけを。はい次の人ー」
とこういった具合である。脅しと監視の騎士様のおかげか大分作業はスムーズに進んでいるらしく、具合悪い人も癒しの奇跡を使える人がいるということでどうせなら診てもらおうなんていう人もあまり身受けられない。
数にして320人ほどざぁーっと見てその日一日は終わった。流行り病かどうかだけ見る流れ作業だからこそできた数だろう
「さて辺境伯様、私たちは次に行きます。後のことはお願いしますね」
とはいえ辺境伯にできるのは感染者が出たら隔離するということだけ、もしまた数が増えるようなら聖人なり聖女が呼ばれるだろう
「前に引き続き今回も・・・本当に感謝してもしきれないほどです。こちらお礼の金貨になります・・・」
よく見れば辺境伯の頬には赤い平手の跡が・・・誰かに叩かれでもしたのだろう。女絡みか?
と治療してほしいと言われもしていない以上触れる必要もないだろう
差し出された金貨入りの大きな袋に手を突っ込み、握れるだけ握って取り出す。
その枚数およそ41枚ほど
「これだけ頂ければ十分。後は復興なり感染者対策に必要でしょうから」
握った半分をエリーゼに渡しセイジは身を翻す。
「あぁ・・・本当に何から何まで・・・申し訳ない聖人様・・・」
この金貨の枚数も大分多いのだけれども、あって困るものでもなし。
エリーゼさんの後に続いて馬へと乗り次の町へと二人は走り出す
」
初作品となりますがいかがでしょうか?
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