孤軍奮闘
セイジとエリーゼを見るなり天の助けかと言わんばかりに執事のトロンが二人へと駆け寄る
「あーあぁーお二人ともご無事で・・・それにあぁこんな時に来てくれるとは・・・神はまだこの辺境を見捨ててはいなかったのですね・・・」
堪えきれない涙と助かったと安堵からトロンは膝から崩れ落ちてしまった。
慌ててそんなトロンをセイジが抱き留め立ち上がらせた
「今さっき隣国マルボロン王国からこの街に来たとろこなんです、それで執事さん事情を話してもらえますか」
エリーゼが懐に入れていたハンカチをトロンへと渡し涙を拭わせる。
今は泣いている場合ではないのだ、一刻も早く患者を治療しなければ命に係わるのだから
「はい・・・そうですね。実はこの流行り病が発生してからあまり時間は経過していないのです、数日といったところでしょうか。それがあれやあれやと言う間に広がり、辺境伯様の指示でこの診療所に隔離することに。そしてその辺境伯様自身も流行り病に倒れられて・・・」
執事の説明する流行り病は先日北で診たものと同じようなものだった。黒い斑点に出血にと
まぁどちらにせよやることは変わらない。
「執事さん、中へ私を入れてください。直接治療してきますので」
「あぁぁ・・・ありがとうございます、ありがとうございます・・・」
こちらに倒れ込む執事を見てみると彼も感染しているらしいのでこっそり治しておく、まだ自覚症状が出る前なのだろうが既に体内で異物が暴れているのが見て取れたから
施設に近づいているからか、あるいは他に感染源がいるのか・・・
北と同じことをする以外にない、それ以上のことは今できないのだから。
トロンの許可を得てセイジと、そしてエリーゼは隔離施設へと入ることに
「だからエリーゼさんは入らなくていいのに、危ないんだよ」
「そんなところに護衛対象を一人で行かせられるわけないでしょう。ほらさっさと治療していきましょう」
エリーゼに背中を押されつつ、セイジは片っ端から治療を始めていく
本来なら辺境伯を先に治療して話を着けてからが良かったのだが、ここにいる患者が顔や腕に包帯を巻いているため誰が誰かまるでわからないので片っ端からの治療となっていた。
そしてこの包帯、誰が撒いているのかと思えば・・・その人物こそ辺境伯だった。
自身もまるでミイラ男のように身体中包帯まみれの中、それでもなお患者相手に手探りに治療をしていたのだ。
「お・・・おぉ・・・セイジ、セイジ様・・・あぁぁ・・・」
セイジとエリーゼを見つけた辺境伯が執事同様泣き崩れたのは言うまでもない。
無力ながら必死に動いていた、そんな自分の行為がまるで報われたかのように助けが来たのだから。
「まだまだ貴方の力が必要なんです、こんなとこで倒れてないでほら立って。治療が終わったら次は感染が広がらないようにしなければならないんです、その指示と金と権力は貴方にしかないんですよ」
包帯まみれの辺境伯を起こし、ついでに治療も行いセイジは彼を精神的な意味でも立ち上がらせた。
「治療が終わった人の衣類は焼却処分、それと感染の有無に関わらず衣類は煮沸消毒の徹底を街のみんなに伝えてください。特に感染者の出た家は強制レベルで、もちろん辺境伯もですからね」
「わ、わかった!」
返事よくいきなり服を脱ぎだし辺境伯が全裸で走り出そうとするのをセイジが止める。そんな格好でどこ行く気だと
「まずは外にいる執事さんに煮沸消毒した服を持ってきてもらいましょう。粗末な服でいいので大量に必要になります、ここにいる治った患者にもいるので」
全裸マンこと辺境伯に指示するだけ指示してセイジは再び治療に戻った。
治すだけなら簡単な治療で済むのだが、問題は次だ。再び感染が広がっては意味がない
セイジもずっとここにいられるわけではないのだから。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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