退任と退任
セイジらが去ってからの王城、それは驚天動地ともいえるバタクタがあった
「王よ、ここいらが潮時です。その玉座を次世代へ明け渡しましょう」
そう提案したのはここまで黙っていた宰相であった。諦めにも似た溜息まじりの言葉には年期が籠っているようで重々しくも揺るがぬ意志を感じさせた
「何を言う!まだまだ退くわけにはいかぬ!第一退いてどうなる!」
そう、王の後にいるのはホアン王太子なのだ。彼が王になればどうなるのか、それは指名した本人が一番わかっている。
・・・何も変わらないのだ
このホアン王太子、悪い人物ではない。だが頭空っぽなため周りの意見を素直に信じてソレを実行してしまうのだ。
王や周りが隣国が悪いといえば攻めに行き、王が欲しいといえばソレを取りにいく。側近が止めろと言えば素直に止めるといった具合で・・・
彼が王位を継いでも傀儡政権になりかねず事態が好転するかかなり怪しいものなのだ。
「後のことは全て後の世代にお任せしましょう。もちろん私も引き続きサポートします。ですので王よ、領地で余生をゆっくり過ごしてください」
宰相がそう言い軽く手を叩くと数人の騎士が王を囲む。その騎士たちはこの王の元で長年働いてきたもの達、それはもう隣国との戦争をも経験したものたち。このアホな王のせいで戦争をさせられたもの達からすればこの王には一国も早く退任してもらいたいのだ
殺されないだけありがたく思え、その顔にはその表情を全く隠す気もなく、しかし黙って王の腕を足を取り担ぎ上げて行く
本来であれば王族に触れるなど不味いのだが、この場でそれを指摘するものは誰もいなかった。
そう、王は潮時だったのだ。周りに見捨てられるほどに
「ちちうえー時折差し入れに参りますのでお達者でー」
と呑気に手を振るホアン王太子。
自分が王になるから浮かれている、のではなく。自分が王になることもイマイチ実感などしていないのだろう
「ホアン様も王太子をお辞めいただいてもよろしいでしょうか。王太子には第三王子が、そしてその補佐に第二王子にお付きいただきたく」
「ああいいぞ。王太子といっても何をするかわからなかったしな!」
こうして第三王子がめでたく王太子とスムーズになったわけだった。
「本来であれば第二王子に王太子となっていただきたかったのですが」
「あぁ止めておけ。あまり位の高くない側室の母上から産まれたのだ、実家からの援助もあまり期待できない俺ではその後の治世が不安だ。だから俺はサポートに回るのが一番なのさ。聖人のおかげで弟も元気になった、これで何も問題はなく国は治まるだろう」
こうして愚かな王の退任は速やかに行われ、明日セイジと時期国王の対談が行われようとしていたのだ。
まさか相手が時期国王とは知らないセイジとしては御免を蒙りたいところだろうが
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