肉を切らせて骨を断つ
一発で刃こぼれした自分の獲物をちらりと見るなり侍女は距離を取り懐から何やら小瓶を取り出した。
それを自分のナイフにタラタラと・・・
おそらく毒なのだろうけれども、その確証はない。ただの水でブラフの可能性ももちろんある
タラタラしてる隙に技術があるなら攻撃できたのだろうけど、そんなものはなく
そこを今のやり取りで侍女もある程度分かったのだろう、その表情には余裕を感じられる。
「ほら聖人様ふぁいと!」
皇太后さまが後ろで応援してくれるのはとてもありがたいのだけれども、どうしようもないのもまた事実
技術の差というのは根性でどうにかするのはとても難しいのだ
どう攻めるか決めたのだろう、侍女は刃こぼれしたナイフを逆手に持ち替え一足飛びでこちらに向かう
振りかぶってきたナイフの一撃、また同じではないと思うもではどうくるのかなど分からずセイジは同じ構えで受けようとするが
振り上げたのはフェイントで本命は無防備な下半身、太ももだった。欠けたナイフでもそれは深くセイジの太ももへと突き刺さる
ただ、これはセイジとしてもありがたい一撃であった。やや強引な攻めのせいだろう、セイジへ一撃入れれば後はどうにかなるという確信があったのか相手の体勢は悪い。
片足は刺され動けない物のもう片足を回し体勢を入れ替えそのままスリーパーホールドを真後ろから決められたのだから。
両腕をがっちり相手の首へ回してのホールド、体格差、筋肉量、ともに何か彼女に手が無ければ解けるものではない。
腰の部分にもう一本ナイフを隠す侍女だが、その部分がセイジと密着していて取れないのだ。
ゆっくり意識が遠のく中、必死にナイフを抜こうとしながら彼女は眠りにつく・・・
そして完全に意識を失ったのを確認してからセイジは彼女から退く。
次は自分の治療だ、毒はなかったのか、それとも癒しの奇跡が発動でもしてるのか、特に毒の影響もなく
刺さってるナイフを抜いてそこだけ治療すれば完了だった
とはいえ気分だけれども衛生的にどうなのだろうという不安はあるのでやはり刺されるものではない
「なんだ、本当に応援の必要はなかったか」
騎士同士の戦いも終わったらしく、皇太后様狙いの騎士は床に倒れていた。見たことろ大出血等はないので大丈夫とは思うけれど・・・
「さて、約束だ。こちらの国に来てもらうぞ」
この騎士もおそらく侵入者なので穏便かつ迅速にここを出たいのだろう。やや急いでセイジの腕を取る
「行くのはいいけれども挨拶や事情の説明もなしに行くと私が後々困るんだよ。悪いようにはしないし、その国には行くからまぁ待ってくれ。それと馬などの旅支度もあるだろう。既にしてるのかい?」
セイジの言葉もその通りでこの騎士にその準備はない、自分の分はあってもセイジの分はないのだ。
となるとどこかで調達する必要があるのだが追っ手を出されてはそれも満足には難しい
セイジを信用するか追っ手覚悟で無理やり進めるか、迷う時間は僅かだった
「裏切ればタダでは済まさないからな」
「一応命の恩人なんだからそんなことしないよ。君がいなければ皇太后様の命もなかったかもしれないんだ」
「私からも口添えをさせていただきましょう。本当にありがとうございました」
二人の言葉と、そしてドアの外から聞こえてきた大勢の走る足音に諦めたのか騎士は剣を仕舞った。
やれやれこれで大丈夫。かな
これで入ってきたのが大量の敵だったらもう皇太后様担いで逃げることになるんだけれども・・・
再びドアをバン!と開け入ってきたのは皇帝陛下とエリーゼさんたち
はぁー!助かったぁ・・・
安堵のあまりセイジは床にへたり込み大きなため息をつくのだった。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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