聖女派遣の要請
セイジらが大変なことになっている、その少し前
会議室ではシャルロット王女らと皇帝たちが話し合いの前に事実確認を行っていた
「では聖女派遣要請をしたという事実はないと?何度もクレアを通じてしたはずなのだが」
「少なくとも私の耳には入ったことはございません。王からその手の話を聞いたことも。それに第一王女が嫁いだ国となれば相応に融通するはず、しかもその母君の皇太后様ともなれば派遣しないということはよほどの緊急事態でもない限りないと思うのですが」
まさに寝耳に水といった感じでシャルロッテが話を聞いて困惑する。皇太后の窮地に聖女を派遣しないとなれば妃であるクレアの立場すら危うくなり国同士の仲もどうなることか。そんなこと誰でも分かる事態に王が派遣しないということなど・・・
まして聖女は二人、さらに時期によってはセイジもいたのだ。そのうち誰かの派遣をさせることくらいできたはず
それなのに・・・なぜ
そう普通に考えればそうなのだが・・・それができない人物が一人いる
「申し訳ないのですがここにクレア王妃をお呼びしてもらっても?直接彼女に聞くのが早いでしょう」
シャルロット王女が申し訳なさそうにそう頼む。彼女は大よそ予想しているのだ、こんな事態を招く人物は他にいないと。
そして皇帝陛下はまだ彼女をわかっていなかった、こんなアホなことをするような人物だとは
「お呼びでしょうか?あら、シャルロッテ来ていたの?相変わらず騎士の格好なのね」
来て早々久しぶりに会うシャルロッテの騎士姿にぷっと扇子越しではあるものの笑いを隠さないクレアだがシャルロッテはいちいち構うことはしないらしく皇帝陛下に視線を送る
「クレア、実は聖女派遣についてシャルロット王女に聞いたのだがそんな話は聞いたことがないと言われたのだが、お前は本当に聖女派遣の要請をオランド王にしたのだな?」
「聖女派遣ー?あぁそういえば言われていましたね。でも聖女様はそう簡単に国を出れないのですよー?王都から出ることすら稀ですのに、それに報酬に何を要求されることか」
「したのかしていないのか、はっきり申せ」
その物言いから明らかにしていないのはわかるものの、皇帝ははっきりとした返事を望む。
その返事次第ではどうなるかわかったものではないものを、クレアはしっかりと答えた。してないないと
その返事に頭を抱える皇帝と、溜息を吐くユリアとシャルロッテ、エリーゼの三人
「貴方の処遇については追って知らせます、それまで部屋で謹慎されていると宜しいでしょう。護衛の侍女の方々しっかり監視しててください。この王城では人さらいが出ますので」
再び被っていたベールを脱いでユリアはクレアに顔を晒した。その顔を見てのクレアの表情たるや
驚き以上に憎いしみがありありと見て取れる
未だ妃教育を、というより上位貴族としての教育中のクレアと
とっくに妃教育を終えて皇帝の補佐を務めるユリア
そんな二人の王城でのパワーバランスは考えるまでもなかった。それがようやく自分一強になっていたのにまた戻ってきたのだ。平然としていられるものではないだろう
「よく戻っておいでですね、聞いた話ですと奴隷として売られたらしいではありませんか?そんな汚い身体でよくもまあ」
「おかしいな、俺の耳にはそんな話入ってこなかったが。情報があって黙っていたとは随分な妃だ、後で尋問するから覚悟しろ」
皇帝もまた怒りと憎しみの感情を隠さずクレアを睨みつけて後ろの護衛に引っ張っていくよう指示する
これ以上ここに置いておけば手が出ていただろうことから侍女が急ぎ促す
「しかし皇太后様の治療が間に合ったようでよかった、さすがうちのセイジだ」
空気を変えるように満足そうに笑うシャルロッテだがそれに待ったをかけるのはエリーゼであった
「うちのとは違うのでは。セイジ様は国外追放されていますのでドランテール王国の者ではありません」
「そんなものとっくに撤回されている、当たり前だろう。あのアホも子爵の地位を与えられ王族を追放されている」
「それこそ私やセイジ様の耳には入っていないので分からないです。それに子爵の地位・・・ですか。それを聞いてセイジ様がどう思うかは想像に難くないですね」
シャルロッテとエリーゼ、ここでもまた戦いの火蓋が切って落とされようかというときに王城で別の戦が始まっていたのだ・・・
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