目覚めの時
他に誰もいないということもあったのだろう、皇太后の治療が終わったとなるや皇太子はセイジに向け頭を下げた。
「本当にもうダメかと思った。日に日に弱っていく母を見てどれだけ辛かったことか・・・ありがとう聖人様」
安らかに寝息を立てる皇太后を横目に皇帝は涙を隠すことも無く流していた。
「いえ、これも仕事ですので。治せたようで何より。幸い他の部分は無事な用ですのでこれで私の仕事は終わったでしょう。それよりこれからは皇帝陛下のお仕事です」
セイジの言葉に皇帝は涙を拭き顔を上げる。これからは皇帝の仕事、母を守れるのは皇帝だけなのだ。
「そうだな、母のことは妃教育もあって第一王妃に任せていたがこれからは私が指揮を取ろう」
その言葉にユリアが額に手を当てる、それじゃダメだったろう。と
その理由は簡単で・・・妃教育がろくに進んでいなかったことに起因する。
そしてなぜ自分が第二王妃になったのかも
「失礼ですが皇帝陛下、先ほど聖女派遣の依頼をしていたと聞いたのですが本当でしょうか。私はドランテール王国にいたシスターで聖人様のお付きでしたが聞いたことがありません。幸いシャルロッテ様が起こしのようですので一度お聞きしてみたはいかがでしょうか」
エリーゼの言葉に皇帝は少し考え頷く
「そうだな、おかしいとは思っていたのだ。聖女派遣はそれなりにハードルが高いとは聞くが王妃が嫁いだ国にも寄越せないのか、と」
「それは彼女が私を邪魔に思っていたからではないかしら」
その疑問の答えを出したのはいつ起きたのか皇太后様であった
まだ一人で起き上がるのは難しいのか、ベッドの上で彼女は声を上げる
「進まない妃教育に私も関わっていましたからね。何度となく苦言を申したのも彼女には気に入らないのでしょう。ユリアが居なくなってから余計身が入っていませんでしたからね。ユリアさえいれば・・・一体どこに行ってしまったのか」
「母上・・・方々手を尽くしてはいるのですが一行に見つからず。家臣の間では新たな第二王妃を探すべきなどと言われましたよ。ユリア以上に優れた妃など見つかるわけもないのに」
そんな悲観に暮れる二人にここまで黙っていたユリアが声を上げた。
「優れた令嬢であるならば今の王城へと嫁ぎたいとは思いませんよ」
そしてベールを脱ぎ去る。いつ名乗りを上げるか、皇帝陛下に会ってからとは決めていたが明確にいつと決めておらず彼女に任せている部分が大きかった。それが今だったのだろう
髪が短くなったユリアを見て二人の目が点となる。探していた人物がまさか自分から来てくれるとは
思わず皇帝陛下がユリアに抱き着こうとするも手で制止する。こっちに来るな、と
彼女としてはそういうことなのだろう。まだ信用できていないのだ
「陛下、それと皇太后様。私はこの王城から連れ去られています。それがどういうことかわかりますか?」
その言葉に二人の顔色が変わる、王妃が王城から連れ去られるなど普通あり得ないのだ。それが起こった王城に嫁ぎたいと思う令嬢などいないだろう
いるとすればそれは連れ去りに加担したような者くらいだ。
「賢い君ならもうわかっているのだろう、誰だ、その犯人は」
「もうすでに処断していますのでお構いなく。後のことは私が好きにしますので陛下は後々書類にハンコだけください」
もうユリアは遠慮はしない、その時期は誘拐された時点で終わっているのだろう
そして、処断しなければならないものはまだいる。実行犯は処断したが次は加担したものを処罰する必要がある。
幸いその国の人もきているのだ、そのまま連れ帰ってもらうのがいいだろうか
ユリアは楽しそうにクスリと笑う。
あぁこれが彼女の本性なのだろうなーとセイジとエリーゼは対応を間違わなかったことを安堵する
もしあそこで救っていなかったら、もし奴隷として扱っていたら・・・今頃セイジの首は無かった可能性もあるのだから。寝首を搔くということも・・・
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