助力
セイジらが王城へ着くと案内されたのはそのまま謁見の間であった。
もちろんそこにいたのはケリュンテ帝国の皇帝陛下。宰相だけ、ということは無かった。
そして意外なことにもう一人、そこにはセイジの顔見知りも
「お前が男でありながら癒しの奇跡を使えるという聖人か?生まれは貴族ではないらしいが身なりはそれなりだな」
やはりこの格好というのは大事らしい。深く頭を下げちらりと横のエリーゼさんを見るとにやりと笑って返してくれた。
「こちらが頼んで来てもらったのだ、顔を上げよ。来てもらったのは他でもない、先代皇帝の妃、私の母である皇太后陛下がここ最近病で伏せっているのだ。王妃の伝手で聖女を呼ぼうにも忙しくて来られぬと断られてな。そこにお前の話を聞いたのだ、どうだ私の母上を癒してはもらえぬか」
「かしこまりました、私にどこまでできるかわかりませんんがお引き受けします」
ここでNOと言えるなら言いたいものではあるのだが、さすがにそういう訳にもいかない。患者が待っている、ということもある。いくら王族相手は面倒でもここまで来たら治す方が早いだろうし
・・・その後拘束なり軟禁されない限りは
ここでユリア様のベールを脱いでもらう手もあったのだけれども、まずは治療をしてからということで話はまとまっていた。なんせここで脱いでもらうとまたあれこれトラブルで長引きそうだったので
「市民だけではなく貴族らの治療も行っていたそうだな。それで私の耳にも入ったのだ、それと昨日シャルロット王女から書状を受け取ってな。それもあって呼ぼうと決めたのだ」
皇帝に名を呼ばれ軽くセイジらに向かってシャルロットはお辞儀をする
彼女が持ってきたセイジは聖人としてオランド王が認めたという書状。それを見て皇帝は自分の母の治療を頼むことに。
聖女を擁する国が認めた者である、それは大きな意味を持つ
しかもそれを王女自ら運んできたのだ、これは信用しないわけにもいかない。
ただ一つ言えるのはそれはセイジが求めていたことではないということ。
ドランテール王国は相談と謝罪を先にしたらどうなのだろうかというのは今言うことではないので黙っているのだが。
さて早速治療をということでセイジは城の奥の居住区へと二人のシスターのみ同行を許され進むことに
他の護衛は控室で待たされることと・・・
何事もなければいいとは思うものの、この国で起きたことを思えば警戒せずにはいられない
ただ幸いなことに道中何事もなく、侍女に案内された部屋。
通された先のベッドに横たわるのは60歳ほどの女性であった。
起き上がることも難しいらしく顔色もあまりよくない、部屋にいる侍女の説明によればここ最近は目を覚ます時間も短く食事もあまり喉を通さないと
まずはともあれ見てみないことには分からない。これまでの外傷とは違いおそらく病なのはわかるが・・・さて
手を取り診てみると、腰などは無事、手足の関節も大丈夫そう。
これといって外傷はないものの・・・代わりに内蔵はボロボロであった
ガンなどの病気、というわけではない。これは・・・詳しくはわからないもののおそらく毒物なのではないだろうか。それ一日やそこらのではなく蓄積型の
肝臓、それに膵臓。他の臓器にも毒によるものか機能不全と場所によっては出血すら見られる
これを今治してもおそらくまた盛られるのは時間の問題だろう。
毒なんておそらく毒見役もいてそう簡単には盛れるものではないだろうし、となると近いものが怪しい。
さて誰を疑うべきなのか・・・残念ながら調べる伝手もない上に教えるのに信頼できる相手もこの城の中にはいない。
ここで下手に治療すれば今度は即死するような毒なり刃が向かう可能性すらある。
治せるのに治せない、セイジは嘗てない状況に額に汗を流す
それを見て近づいてきたエリーゼにセイジは小さな声で囁く
たすけて、と
初作品となりますがいかがでしょうか?
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