事前準備の大切さ
連日の驀進で無事国境へと着いたセイジら一行
そしてそこに待ち受けていたのは入国審査待ちの列であった
「いやぁこうして普通に入国するのは二回目だなー今回はちゃんと無事に済むように、ほら服装もばっちり」
待っている間にしっかり着替えたセイジ。その姿はどこからどう見ても金持ちにしか見えない。聖女のような気品あふれる立ち居振る舞いはもちろん無理なので、できるのは堂々とすることなのだが
高価な服を着て堂々としていると成金にしか見えないから困ったものである
「そうですね、後は通行証に書かれている聖人について何も言われないかです」
ドランテール王国で発行してもらった通行証に、バリテール王国でもハンコを貰い認証してもらった通行証。そこには聖人とはっきり書かれており、初めて見る人は首を傾げるだろう。聖人とはなんぞやと
流れている噂も流れの聖女であり聖人ではないのだ・・・
「あの私の通行証はどうなるのでしょう、作った覚えがないのですが」
一人不安なのはユリア、言った通り通行証は作っていないのだ。もちろん無ければ奴隷であっても入国はできない
「そこはご心配なく、事前に神殿でシスターとして発行しておきました。そうでなければ王と謁見に同伴もできませんので」
懐から取り出したのはシスターの身分が書かれた書類。もちろんただの奴隷がシスターになれるわけもなく、奴隷から解放し、かつエリーゼが保証人となりユリアをシスターにしたのだ。
当然セイジの指示ではない、が
「奴隷から解放して問題ありませんでしたよねセイジ様」
「もちろん、というかそういうことできるなら早く教えてよ!」
「買った主なら奴隷を解放することができるのですよ。これで一つ賢くなりましたね」
「次からは買った時とか買う前に教えてください・・・」
こうして通行証の問題もなく、服装により疑われることもなく通行できた
・・・などという訳がなく。別室へと一人連行されたセイジ。
結局セイジとは何か、癒しの奇跡だ?できるなら見せてみろ、何金を取るだー!?
というお決まりとも言える一連の流れをさせられてから、なんだかんだとうにかこうにか入国できることに・・・
「なんでだ・・・今回はしっかり服も決めて怪しいところは無かったのに」
「もう聖人止めて聖女になるしかないのでは・・・」
「男でいたいのでそれは勘弁を」
取り調べの疲労もありその日は近くの街で一泊することに。
ただこの日の一泊はタダでは済まないものだった
夜遅く、みんなが寝静まる頃にエリーゼと護衛の全員が起きていた。なんとも言えない雰囲気に眠ってなどいられなかったのだろう
そしてそれは当たることになる、夜間鍵の閉まっていたはずのドアから人が数人入ってくるのが聞こえる。素人なのか少し話声まで
こんな夜遅くにこそこそ入ってくる連中などマナーがしっかりしていて寝ている人に配慮できる素晴らしい人か、盗賊あるいは殺人鬼と相場は決まっている
そして今日来たのはまず間違いなく後者の二つだろうと全員が確信していた。おそらく入国審査の役人が情報を流したのだろうと、セイジへの対応も足止めが目的で長々としたものだったはずと検討をつけ
「だからってあの全員が同じ部屋に集まるっていうのはどうでしょう。私を別の部屋に移すとか」
「別の部屋にはユリア様がいるのでこうするのが一番楽なのです」
おかしい、それなら私もユリア様の部屋と同じ部屋に・・・と思ったけど王妃様と同じ寝室とか首飛ぶな、うん。
みんな頑張ってーー!と心の中で応援だけすることにした
しかし腕利きというのは本当だったらしい、侵入してきた賊相手に数分でノックアウトしていまうのだから。多少相手の手足がぶった切られて重傷だけれど、さてどうするか
「拷問なりして情報聞きだすなら治すし、治療費貰えるなら治すけどどうしようか」
「こわっ・・・あんた聖人様なんだろう。よく拷問とか自分から言い出すな」
「聖人だけど癒しの奇跡が使えるだけで神様に仕えてるとかそういう類じゃないしなぁ。女性大好きお金ほんのり好き、お酒パスくらいの普通の人間だよ」
ドクドクと血を流す賊を前に普通に話すあたりセイジも血には慣れてきている。それよりこの賊が死ぬ前に方針を決めてくれとセイジは促すことでこの賊たちは延命されることに
「おい、起きろ、誰に言われてきたんだ?話せば見逃してやるし怪我も治してやる。そうじゃないならこのまま見殺しだ。どっちがいい」
一人まだ比較的元気そうな輩をガルバンが軽く頬を叩きつつ起こす
元気そうとは言っても太ももがざっくり切られて血がぴゅーっと流れているのだが
「いう訳ないだろう、どうせこの傷だ。長くはない」
放っておけば20分くらいであの世行きだろう
ということでセイジがぱっと治すことに
「で、誰の指示だ?」
「・・・治った・・・のか。だが言うわけないだろう、言えばどうせ雇い主に消されるんだ」
反抗的な態度にガルバンはナイフで再び輩の足を切った
「ぎゃぁーー!」
「どうする言うか?何度でも切っては治しの繰り返しだぞ、お前が死ぬまでな」
そんな何度もやるの面倒なので勘弁してほしいのだが、その拷問を想像しただけで折れたのか輩は話出してくれた。
「フードを被った男だったがマントの下に見えたのは上等な服だ。それしか知らない、本当だ!俺らごろつきに身分明かして依頼するやつなんているわけないだろう!?」
と、どうやら本当らしくこれで尋問は終えることに。
「護衛を雇って正解でしたね。私一人でお二人を守るのは大変ですので」
これが銀貨一枚なのだからなんと格安な、と思うものの
宿泊代など旅費は全て私持ちなので財布はだんだん軽く・・・
初作品となりますがいかがでしょうか?
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