闇夜の月
まずはギルド長からいただいた書類片手にセイジらはギルド施設内部に併設されている酒場へと向かう
そこにはまだ日は高いというのに飲んでる者がちらほら。
ここにいる者に依頼はしたくないな、と思いつつも言われた通り腕の立つけが人を探す一行
とはいえ顔写真などあるわけもなく、あるのは名前とパーティー名だけなので呼ぶしかない
「あのーパーティー闇夜の月のガルバンさんいらっしゃいますかー?」
呼びかけに反応したのは体格のいいスキンヘッドの男性だった。なるほどあのスキンヘッドなら月のない夜によく目立つかもしれない。
左腕でジョッキ片手に飲む姿は元気そうにも見えるが、確かに右腕は不自由しているらしい。右腕は常にだらんと垂れ下がっている
「おぉん?なんだあんちゃん、俺になんか用か。見ての通りパーティーは休業中だ。他の奴らも別口の案件で出払ってて役立たずな俺は一人って寸法よ」
残念ながら片手でどうにかしようと頑張るのではなく飲んだくれてぐちぐちジメジメするタイプらしい。
とはいえ他に腕の立つ人間がいないなら仕方ない。
「ギルド長からの推薦で貴方を護衛として雇いたい」
そういってセイジが差し出した書類を見ると酔っぱらっていたガルバンが楽しそうに笑いだす
それはそうだろう、一か月の護衛をしてその報酬たった銀貨1枚なのだから。しかもパーティー全員で銀貨1枚
「おいおい子供のお使いだってもっと貰えるだろうよ」
一頻り笑うとガルバンは書類を投げ捨てた。おそらく大事な部分を読み落として
「値段は私が決めたのではないのですが・・・ではいくらが相場と?」
「そうだな、俺らパーティーを一か月護衛に使うなら金貨10枚ってとこだ」
なかなかな値段だ。おそらくそれだけの実績があったのだろう、腕が自由に動いてた時は
「ではガルバンさんの腕の治療代金貨10枚でいかがですか。後払いの成功報酬で構いませんよ」
ちなみに書類には治療が成功したら護衛を銀貨1枚で請け負う、ということになっていたのだが・・・
それを読み飛ばした酔っ払いにわざわざ教えてあげることもない。
「ほうデカく出たなあんちゃん。ならこの腕を治せるっていうなら治してみな」
ガルバンが服をまくり上げて出てきた腕は戦歴が刻まれているように傷だらけであった。
さらに既にこの国の医療で手術もされた結果、ある程度の治療はされたものの、切れた神経までは繋げず、腕は全く使い物にならないままだったのだ。
「それでは失礼して」
そんなボロボロの腕にさっと手を当て診てみると、腕以外にも古傷のせいで行動に支障が出ている箇所がちらほら。寒くなると古傷が疼いたろうに
ということでサービスで全身癒すことに、ただ見た目は勲章かもしれないので内部のみ治療を。
セイジの指先がぱーっと光ことでその場にいて聞き耳を立てていた数人が只者ではないと認識を改めた。
「はい、どうですか。ちゃんと動くでしょうその右腕と膝肘肩。全部治しておきましたよ。はい、金貨10枚になりまーす」
1分かからず終わった治療にガルバンは唖然とする。そして恐る恐る右手に力を入れると何事もなかったかのように上がるのだ。力が入り、ジョッキも軽々上がる。
自分の身体だというのにその事実に驚愕し目は大きく見開かれ、元気よく立ち上がり歓喜の声を上げた!
「治ったーーー!!!おぉぉぉぉおーーー!!」
とりあえずうるさいものの、周りにいたもの達まで嬉しそうに飛び跳ねているのだからガルバンは慕われていた人物なのだろう。
そんなやり取りをギルド長は物陰からひっそり見ていて自分のことのように嬉しそうに笑うのだった
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