今後の方針
奴隷の女性が自分はケリュンテ帝国第一王妃ユリアだという
その事に最初に笑ったのは所員であった
「いやはや言うに事欠いてまさか王女様とは。本気にされないほうがいいですよ、奴隷に落ちたやつはみんな自分はどこそこの貴族だなんだ言うんですから」
その言葉に奴隷の女性は顔を赤くし怒っているようだが・・・
その真偽を分かるものなどここにはいなかった。なんせ誰も本人に会ったことがないのだから。
そんな中、こっそりとセイジはエリーゼにケリュンテ帝国ってどこ?とそこからか!と言いたくなる質問をしていた
「国名ドランテール王国の南に位置する国で、そういえば第一王女が嫁いだ国でもありますね」
そういえば王太子がそんなことを言っていたような気も・・・ということは万一にも近づかないほうがいいわけだ。
「エリーゼも部隊長もその王妃ユリア様を見たことは無いので?」
質問に対し二人は首を横に振った。さすがに他国の王妃を見かける機会は早々ないか・・・
「じゃあこの国の女王様はどうだろう、見たことないかな?」
一番上の立場の人ならば、そんな思いつきだったがそれに対して奴隷の女性はこちらを振り向き答える『お会いしたことがあります』と
となれば話は早い。女王陛下にお目通り願いこの女性が王妃かどうか判断してもらうしかない
「部隊長、どうにか女王陛下にお目通り願えないですかね?それ以外判断のしようがない気が」
「えっ!?いやどうでしょう。ただですら女王陛下は床に伏せってらっしゃるので・・・」
そういえばそうだった、というかその治療にきたのにあの宰相が・・・と今更言ってもしょうがないか。
「まずは国に手紙なりで知らせてはどうでしょう?迎えの人なりくればそれこそ一発でしょうし」
施設を出ながら改めて今後の方針を話し合っていると、一行を一人の女性と護衛の騎士数人が呼び止める。
それは女王陛下に遣わされた侍女であった・・・
「お待ちください、聖人様でいらっしゃいますよね」
一行が足を止める中、セイジだけは足を止めず歩こうとしたのをエリーゼが服を掴み止める
どうやら聖人様と言われぴんと来なかったらしい
「はい、そうです。こちらの男性が聖人様でいらっしゃいます」
「え、あはい私がおそらくその聖人でしょう。で、何か御用でしょうか?」
何とも胡散臭い対応のせいだろう、侍女のセイジを見る目は明らかに蔑んでいた。足元から身なりを見て笑わなかっただけ良かったものの、目は正直であった。
「改めて女王陛下がお呼びです。失礼を働いた宰相は既に処分させていただきましたのでご安心ください」
特に謝罪の一つもなく、要件だけ伝えてくる。失礼を働いたのはお前らの国の重鎮だろうに、謝罪の一つもできないらしい
明らかにセイジの雰囲気が代わったのをエリーゼは感じとっていた。それは普段友好的で親切なセイジから一遍し、全てを拒絶するかのような冷徹さに
「そうですか、実はこちらも女王陛下に用がありまして。こちらの女性実はケリュンテ帝国第一王妃ユリア様だそうなのですが誰もお会いしたことがなく、女王陛下とは面識があるようなのでお会いして確かめたいのですが可能でしょうか」
セイジのその質問に侍女は奴隷の女性を再び足元から見上げ、そして今度は笑い出す
「その女性が王妃様?見るからに奴隷のようですしどうせ虚言でしょう。全く奴隷の言うことを真に受けるとは、聖人様は世間を知らないと見受けられますね」
笑うその侍女を見てセイジはそのまま怒りか悲しみか、震える奴隷女性の型を抱き寄せ踵を返した
「ではこちらは用がないのでこれで。エリーゼさんそのケリュンテ帝国とやらに行く馬車はありますかね?ちょっと探してみましょう、無いなら馬なり借りて走りますよ」
「そうですね、距離も長いですし乗り換えは必要かもしれません、まずは三人分の旅支度をしましょう」
さっさと切り替えた二人とは対照的に奴隷の女性と部隊長、そして侍女らはセイジの切り替えに慌てる。まさか女王陛下の呼び出しを断るとは誰も思っていなかったからだ
「お、お待ちください!女王陛下直々の呼び出しです、それを断るなど」
「それは聖人様を呼んでいるのだろう?君には俺が聖人に見えるのかね?」
後ろで叫ぶ女に俺はただ手を振り歩みは止めない。真面目に対応するだけ時間の無駄だ
そんなセイジを見ながら部隊長はお前も宰相と変わらんなと、溜息一つセイジの跡を追う
「おーいセイジ様お待ちください。馬車乗り場は向こうですよー。あと乗り換えルートがいくつかありますのでご説明をー」
放っておかれた侍女は怒りで震え、傍にいる護衛数人もどうしたらいいのか慌てふためく。
本来なら不敬罪で掴まえられても文句は言えないのだが、それを指示するべき侍女が指示をしない
代わりにしたのはあんな男は聖人ではない!という根拠はみすぼらしい見た目だけ。それを女王陛下に持ち帰ったのだ
初作品となりますがいかがでしょうか?
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