藪蛇
時間は少々遡り、王が帰国する少し前
セイジとエリーゼは町を転々としながら病気はもちろん怪我人を治しつつ北に東にちょっと南にと移動していた。
そんなある日、馬車が無く馬のレンタルもなく、仕方なく野宿をしていた時のこと
エリーゼが寝ている間の火の番と頼りないながらも不審者がこないかセイジが見張りをしていた
あぁ暇だなぁーと薪をくべながら夜空を見上げる。残念ながら雲のせいか星はさっぱり見えない。
正座に詳しいわけではないけどきっと星も元いた世界とは大分配列とか違うんだろうなー。
ぼんやりそんなことを考えて暇を潰す、そういえば今度行く街は少々小さいらしい。馬車の運行もそれであまり本数がないとか
小さかろうと大きかろうとやることは変わらないからいいのだけれど、この野宿というのは心が休まらなくていけない。常にびくびくして過ごしているから寝た気もしない。まあ睡眠時間がどうしても短くなるから余計寝た気がしないのもあるんだけれども
そんな不満をぶつけるように手元にあった石を暗闇の中ぽい!と投げると、どうやら何かに当たってしまったようだ・・・コン!と石でも木でもない固いものに当たった音が返ってきた。
うーん・・・不味かったか?
その音の主はすぐにこちらへと姿を現して歩いてきた
「ほう、気配は完全に消していたはず。さすが聖女の護衛か」
出てきたのは甲冑姿の人、それも見慣れない甲冑。もしかしてこの国の人ではないのか、あるいはオリジナルなのか
一つ言えるのはなんか不味い人を呼んでしまったらしい。
とっさに身構え後ろで眠るエリーゼさんを起こそうと思うも後ろからもガサゴソと気配が
「止めておけ、たった一人で10人を相手する気か?それも聖女を守りながら」
後ろに何人いるかわからないけれども、前にはいつの間にか一人から5人へと人数が増えていた。
「その身なりからして隣国の方でしょう。手荒な真似をされないのでしたらこちらも抵抗の意志はありません、ただお話を伺ってもよろしいでしょうか」
改めて座りなおしてセイジは焚火越しに座るよう促した。
ちなみに隣国の方というのはドコを指してではなくとりあえず国外の人だろう、と適当に言っていた。
セイジが相手の身なりでどこの国の人か判断などできるわけないのだから
「冷静だな、いいだろう。詳しくは話せない部分もあるができる限りの誠意を見せよう」
おそらく最初に出てきた彼が部隊長なりの長なのだろう、一人だけセイジの前へと座り、他の四人をその後ろで立ち控える
「まず我々はわかっている通りここより西の国であるバリテール王国の者だ。貴方方は知らぬだろうが実は先日そちらの国の王が我が国へと聖人を遣わすと約束されてな。既にこの国へと入っていた我らが調べるとその者は王太子より国外追放されたというではないか。それを流れの聖女がいるという噂を聞きここまでたどり着いたというわけだ。そこに眠る女性が追放された聖人なのだろう」
どうやらこの方々は王都での調べが足りないのか、それとも噂の信ぴょう性があったのかわからないがエリーゼさんを聖人、聖女と思っているらしい。
確かにエリーゼさんは口を開かず微笑めば聖女のような方ではあるのだけれども・・・
私は申し訳ない気持ちを抱きつつそこらへんをちょっとだけ訂正することに。
「貴方たちが探している人物が誰なのかはわかりませんが後ろで寝ているエリーゼさんは聖人、聖女ではなくシスターです。そして貴方の目の前にいる人物が聖人と呼ばれ王太子から国外追放してもらったモノです」
この男が!?とセイジの前にいる者たちは驚愕した。安らかに眠る可憐な女性が聖女様だと心躍っていたのに、実際は目の前のおっさんがそうだなんて、夢であってほしいと思ってしまったろう
「はは、これは面白い冗談を。癒しの奇跡を使えるのは聖女、女性だけという話ではないか。貴方はどうみても男性だ」
「聖女をあえて聖人なんて呼ばないのでは?不思議なことに男が癒しの奇跡を使えたから聖人、なんて呼び方をとりあえずしてたんだろうさ。私が名乗ったわけじゃない。証拠を見せろというなら見せるけれども、誰かけが人なり病人は?」
目の前の男性と周りを囲っている彼ら、おそらくは元気なのだと思う。でなければさすがにこの暗闇の中人探しなどできないだろう
ただそうなると証拠を見せることもできないという・・・
「私の部隊にけが人や病人などいない。さてならばけが人を作るしかあるまいな?」
そう言って男性は懐から小ぶりのナイフを取り出すとさっくりと指先を切ってみせた。
そう、普通それくらいで試すものだ、腕をざっくり見せるシャルロッテ王女が豪快なのであって
「それでは治療の料金のご相談なのですが」
そしてこの場に及んで金の話をしだすのもセイジくらいのものだろう
初作品となりますがいかがでしょうか?
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