王の帰還
隣国の結婚式へ出立した王が無事帰国ということもあり、王都ではささやかながらパレードが行われ賑わいを見せていた。
そんな中で・・・王都の謁見の間には周辺に住む貴族が一堂に会する。だが、その派閥は大きく二つに分かれていた。
何事もないように振る舞う王太子派と、穏やかな顔をしつつ内心では激怒しそれ以外の王族を擁立しようとしている二つだ。
「よくぞ集まってくれた、まずは隣国での結婚式と隣国と交わした契約などを伝える」
ただ結婚式に参列するためではなく外交関連の仕事をしてきた国王。もちろんその中にはこの国にしかできない、聖女関連の話もあった。特に今回それは特別なもので
「以前聖女を遣わしたものの癒せなかった隣国の女王陛下、それの治療にセイジを遣わすことを約束してきた。代わりに一部関税の撤廃などかなりの優遇措置を約束してもらった、これで一段とこの国は栄えるだろう。早速セイジを呼び護衛及び日程の調整をする故ここに呼ぶように。シャルロッテ、帰ってきて早々だが再び護衛としてセイジに着いてくれるか」
「王に引き続き聖人の護衛、光栄に思います。速やかに事情を伝えに参ろうと思います」
「お待ちください!」
そんなにこやかに王が話を進めるのを、王太子であるカインが声を上げて止めた。
そしてセイジの名前が挙がり冷や汗を流すものがちらほら
「あの者は聖女であるディアナの私物を盗んだ疑いがあります、そのようなものを隣国の女王陛下の元へ送るなどこの国の恥というもの。以前聖女ローズが失敗した治療、それを是非ディアナへとお命じください。彼女ならば必ずや成功させてみせることでしょう」
特にディアナよりもローズが癒しの奇跡で秀でているという事は一切ない。おそらく派遣しても結果は変わらないだろう。ローズは気分はよくないがそのまま傍観することに。
「そうかそうか、女王陛下はレティカと同じような症状らしいが、そのレティカを癒せなかったディアナを送れと?しかもこの国王が認めた聖人を国外に追放したらしいなカインよ。よくもまあそんな愚かなことをしたものだ、聖女がこの国においてどれだけ重要な存在か、教育されたはずだというのにな?」
「しかしあやつは平民、それに癒しの奇跡を使える聖女なら二人もいるではありませんか」
「他国に流出されてはこの国の優位が保たれないとは学ばなかったか?学んでいようともそのその頭では入っていかないか。誰に似たのか中身がスカスカだからな」
王としては怒るよりももはや呆れるばかり、溜息しか出てこなかった。
そしてそれは王太子を後押しする貴族にも同じことだった、この国を潰す気かと。
「そもセイジは盗みなど働いてはいない、盗みを働いたのはお前とその手の者だろう。セイジの所持金を巻き上げたのは聞いている。俺が不在でも俺の目はこの国にあるのだぞ」
王が軽く手を叩くと数人の人間が前に出て報告を始める
そこで読み上げられたのは王太子が行った行動とその誤りの訂正
そもセイジは盗みを働いていない。所持金の出どころも全て明らかになっている
そして巻き上げられた金を誰が持っているかも報告された。
さらに聖女ディアナの持ち物がどうなったかもそこで明かされた
もちろん犯人は・・・神殿関係者。それもトップの人間
「早馬でレティカより色々と聞いていたからな、先に使えるものを送り尋問しておいたぞ?しかし軽く絞ったらすぐに吐いたそうだ、いい教育をしたものだなクイレル公爵」
顔に軽く青あざをつけたクイレル公爵家三男デュースが縄で縛られた状態で謁見の間へと連れてこられた。
結局ディアナの所持品は袋詰めされ神殿に保管されていたのだが、一部はこのデュースが売り払い着服していたのだ。
三男が権力を手に入れ、次は金を手に入れようとしたと。その金を使って権力者の真似事をしようと準備している段階でこうして捕まったのは幸いだったろう。
初作品となりますがいかがでしょうか?
ブックマーク、いいね!と星頂けると喜んでもっと早く投稿できますのでぜひお願いします




