流行り病
流行り病というのは本当らしくセイジとエリーゼが町に着いたものの、町に人影は無くゴーストタウンのようだった。
「おーい!誰かいないかー!」
大通りに出て大声で叫んでみる、これで誰も出てこないなら他所の町に行ったほうがいいかもしれない。
そう思うも幸いにして声に反応して家から一人だけ出てきてくれる人が
それは10歳前後の小さな男の子だった
「あ、あのお兄さん町の人じゃないでしょ?早く出て行ったほうがいいよ。この町今流行り病で大変で、みんな家に隠れてるんだ」
大人も隠れている中、部外者のためにこの少年は危険を顧みず顔を出す。だがそれは止める大人がいなかったということもあった。
「忠告ありがとう、だけれども私はその病を治すために来たんだ。どうかこの町の事情を話してはもらえないだろうか」
10歳の少年の目線に合わせセイジは頭を下げていた。その姿を見て誰も聖女に連なる者とは思わないだろう。
少年もセイジのその姿勢にどう反応したらいいの慌てている
「あ、あのその、病んでる人はみんな一つの建物に収容されてて、父さんも母さんも入って俺一人で、もう飯もなくて」
もうどうしたらいいのかわからない、その少年は目に涙を溢れさせてそう訴えていた。大人もおらず一人家に取り残されどれだけ心細かったろう。
そして両親が病に倒れどうなるかもわからないのだ、それこそ藁にでもすがる思いでセイジに全てを話す。この町で起こった自分が知っていることを
亡くなった人は腕にぶつぶつが出来て出血して、皮膚が黒くなっていた、と。
その情報を聞いてセイジにピンとくるものは無かった、残念ながらそっち方面は専門外なのだから仕方ない。
まったくわからん!ただそれでもある程度できることはある、結局のところ手洗いうがいに身の回りを清潔にすることである程度はどうにかなる。
「それでこの町のお偉いさんはどこにいるんだい?その人にまずは話をつけてくる」
「お偉いさん・・・領主様のお屋敷ならあそこに」
少年が指さしたお屋敷は確かに周りより大きくちょっと豪華だった、なるほど確かに領主様用っぽい
「それじゃあちょっと行ってくるよ、待ってる間乾パンと水飲んでてな。大した量じゃないけど腹の足しにはなるだろうから」
手持ちの食料を手渡しセイジはお屋敷へと向かう
しかし交渉してダメだった場合はどうしたもんかねー。さすがにタダでは働く気はないので個人から取るか・・・そも隔離施設へ入れない場合は手の打ちようもない
「エリーゼさんこの辺りの領主さんの情報って何かある?」
「さすがに私も存じ上げません。近くの町で聞いておけばよかったですが、悪い噂は聞こえてこなかったので常識人かと。ただ非常事態でも常識人かはわかりませんよ」
非常事態で使える人物かどうかの判断は日常ではわからない以上仕方ないのだが、無能であって話も聞かない人物でないことを祈る
館の前に門番もおらず、その門は硬く閉じられていた。さてどうするかと思ったがまずは声を掛けるべきだろう。
「たのもー!」
「セイジ様、道場破りですか?」
声を掛け間違えたものの、聞いてはもらえたらしく館の中から一人の初老の男性が顔を出してくれた。身なりから執事さんだろうか
「どちら様でしょうか、生憎と主人は不在でして」
「流行り病が蔓延してるのだから仕方ない、それでも顔を出してくれたことにまずは感謝を。私は癒しの奇跡を使える男です。流行り病で人が倒れてると聞いて参りました」
その言葉に執事さんは目を細め怪しんでセイジを見ていた。身なりはみすぼらしく癒しの奇跡を使える男など聞いたことがないので仕方ないのだが
「お引き取りください、そのような戯言に付き合うつもりはありませんので」
それがある意味当たり前の反応だったろう、非常事態、藁にも縋りたい状況でも最低限の理性と知恵は働くものだから
「支払いは後払いで構わない、まずは治療させてみろ。大勢が病んでいるのだろう、そんな悠長にしてられる時間があるのか?あるなら私は他所の町に行く、悠長になどしてられないと言う長もいるだろうからな」
身なりとは裏腹に真剣な表情と、今を逃せばチャンスは無いというその状況に初老の男性は考える。
支払いも後払い、一人だけ試すだけならば、と。
幸いにして罪人も病にかかっている、それなばらどう転んでもいいではないかと
「良いでしょう、では一人試させてもらいましょう」
こうしてセイジの流行り病の治療は始まった。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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