王太子という男
オランド王が西国へと出国した翌日、代わるように王太子カインが王都へと帰還した。
とりあえずパレードのようなものは開かれたものの、その規模は昨日の王の時よりも規模は小さく
出店も増えてはいない様子だった。大半が前日に引き続き出ているだけで、今日を待って開いた店はあまり見受けられない。
とはいえ歓迎される方のカイン王太子にそんなのを知るわけもなく、自分の帰国に平民が歓喜していると喜んでいるのだから幸せなことだろう
「それで宰相、国王陛下は既に出立を?まったく俺が帰ってくるのを待っていてくださればいいものを。しばらくお顔を拝謁することすらしていないせいで忘れそうだ」
城へと入るなりカインは宰相を自室へと呼びつけていた。少なからず疲れもあるだろうにダラダラ休まないのを本来評価されるべきなのだが、それは当人が少なからず有能であってこそ。
無能な働き者とはなんとも面倒な存在であると、宰相は出国した国王を恨めしく思っていた。赤子のおもりをさせられている、と
「日程が差し迫っていたため止むを得ず。王より不在中の仕事のリストなどお預かりしておりますのでこちらをご覧ください」
王が宰相筆頭に家臣の負担を減らすために残した仕事リスト。その中に書かれている大半は・・・他貴族との謁見関連であった。それも有力とはいえない貴族ばかり
そして書類関連にもノータッチにさせるため大事な玉璽は預けてもいない
本当にこれが王太子なのかという扱いをカインは受けているのだが、貴族とのつながりは大事だということで普段王が手を回せない部分の謁見を今回任せている、ということで説得したらしい
ちなみにもし書類の山をカインの前に置いたなら、内容を精査せずハンコを押すか、見ずに処理もしないかのどちらかになるだろう。
残念ながらこのカインという王太子、デスクワークが大嫌いなのである。
なんだったら一つ上の姉のシャルロッテ王女殿下同様身体を動かすのが好きなタイプだ。
「で、俺が不在の間何か面白いことはあったか?ちなみに南国は実に開放的で面白かったぞ。姉上はいいところに嫁がれた。俺も嫁にするなら南の女がいい」
そうは言うものの、その南国の女性らに結婚を申し込むも断られ帰国したのを宰相はしっかりと聞いている。同行した護衛や側近たちが頑張ったのだろう、不用意な相手と婚姻を結ばぬように
「いえ特に面白いことなどは、国全体無事平穏な日々を送っております」
隠せるかはともかくとして、面倒なので宰相はセイジの事を言わなかった。
なぜなら宰相は一刻も早く仕事に戻りたいからである、王不在により一番激務になったのはこの宰相なのだから。
「そうか相変わらずつまらない国だ。嫁の一人も見つからないとは、どうなっているんだ。いっそのこと貴族以外から嫁にしてはならんのか」
普通に考えて時期国王の嫁に平民など無理に決まっているだろう。貴族との会合や他国との謁見の際のマナー、必要であれば他言語など教養を無しで隣で笑うだけの妃など何の意味があるのか。
それを補うだけの力量を王が持つならまだしもそれが無い以上寝言にもならない話だ。
最低でも侯爵令嬢程度のマナーや教養を身に着けていなければ、結婚した女性が苦労の連続で不幸になる。いや、あったとしても苦労するだろう、この男が伴侶では
カインの愚痴の時間が始まったので宰相はそうそうに頭を下げて部屋を退室し職務へと戻る。
生まれる家が違えば楽しい人生だったかもしれない、そうカインを思いながら。
初作品となりますがいかがでしょうか?
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