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第8話 教科委員の仕事

 学校の授業も本格的にスタートするから教科委員の仕事をどうやってこなすか浅見さんと相談しようかな。一応、進学校だから毎日数学あるし、曜日によっては、2時間もあるし。


 朝一番で話しかけにいこう。だって、休み時間とか昼休みなんて話にいけないって。あんなの。どんだけ鉄のハート持ってるんだよって感じよ。というわけで、いつもより早めに登校し、教室で待とうと思ったら浅見さんがすでにクラスに居て、友人と話していた。


「お・おはよう。浅見さん。ちょっと数学の教科委員のことで少し話良いかな?」


「おはよう。城山くん。わかった。咲希ちょっとだけ席外すね」

「わかった。ここで待ってるよ」

「うん」

 少し窓側へ移動して

「あ・浅見さん。教科委員についてだけど、最初の何回か、2人で一緒に行って状況を見て交代で行くようにしない?」

「確かにそうだね。毎日あるしね。」

「そうそう。ただ、課題集めとか宿題配布みたいな突発的なことは2人で協力してやるでいいかな」

「OK。じゃあ、火曜日のように2時間ある場合はどうする?」

「そうだね。その時は2人で一緒にっていうのはどうかな?個人的なことで本当にごめんだけど、できるだけ人と話せるように頑張りたいんだ。浅見さんにとっては迷惑かもしれないけどいいかな。」

「ふふふ。確かにあの場所で変わりたい的なこと言ってたね。わかった。その時は、私と一緒に腕組んで行っちゃう?」


 !?


「え・え??」

 突然の冗談だろうけど、その提案にみるみる顔が真っ赤になる。


「もういきなりそんな冗談言わないで欲しいよ。清い教科委員の付き合いでよろしくお願いします」


「ぷっ…ふふっ、大輔くんの反応、想像以上だね。面白すぎるよ!」

 浅見さんは急に大きな声で笑い出した。それに驚いたクラスメイトたちが、ざわざわとこちらを見始めた。普段の彼女は冷静で落ち着いたイメージが強いため、こんな風に笑う姿は誰も見たことがないようだ。



 結衣が大輔の顔に近づき、少しだけいたずらっぽく微笑んだ。「ふふふ、もちろん。清い教科委員のお付き合い、よろしくね。し・ろ・や・ま・くん」


 ふわっと、結衣の香りが大輔の鼻に届き、瞬く間に彼の顔は真っ赤になり、耳まで染まってしまった。


(もう、こんなふうにからかうなんて、浅見さんも本当に罪な人だよ…)


「じゃあ、今日の3限目後の休み時間に行けばいい?」


「うん、声かけてくれるのを待ってるよ。あんまり遅くしないでね?だって、私、ずっと待ってるから」


「承知しました。すぐにお嬢様をお迎えに参ります」


「ふふふ、いいね、城山くん。どんなふうに迎えに来るか、楽しみにしてるね」


(ガーン。勝手にハードルが上がったぞ。でも、やってやろうじゃないか。陰キャでラノベ好き舐めんなよ!)


「ふっ、浅見さん。任せておいてよ。期待していい。でも、少しだけハードル下げてくれると助かるかな…」


「やだよ、城山くんならできるって、私知ってるもん!」


「うそうそ、まだ数回しか話してないでしょ。でもまあ、見ててね。3限が終わったらよろしくね」


 大輔が挨拶を済ませて自分の席に戻ろうとすると、浅見さんと内山さんの話し声が微かに聞こえてきた。


「ねえねえ、結衣があんなに笑ったの、初めて見たんだけど。何話してたの?」


「ふふ、ただの数学の教科委員の話だよ」


「えぇ〜?そんなことであんなに笑うことある?なんか怪しい…」


 結衣は、口元に人差し指を当てながら、「まぁ、確かにちょっと面白い話だったかもね。でも咲希にも秘密」と、いたずらっぽく微笑んだ。


「もー、教えてくれてもいいじゃん!」


 結衣と咲希の楽しそうな笑い声が背後から聞こえる。大輔は自分の席に着き、今日の「ハードなやり取り」をやり切った達成感を胸に、一息ついた。


(八坂稲荷でもお願いしたし、ここから自分の力で人生を変えていくんだ!)


 ・・・


 2時間目の国語が終わりに近づくと、大輔の心臓はバクバクと音を立て始めた。浅見さんが朝にハードルを上げてきたせいで、普通に誘うだけじゃ絶対無視されるからな。彼女の冗談交じりの態度を思い返しながら、どうすればいいのか頭をフル回転させ気合いを入れる。


 大輔は深呼吸をしてから席を立ち、浅見さんの元へ向かった。そして、心を決めたように軽く胸の前で手を揃え、まるで執事のように深くお辞儀をする。


「お嬢様、3限目後のご案内を承りに参りました。この城山、心を込めてお迎えいたしますので、どうぞご準備をお願い申し上げます!」


 大輔は芝居がかった口調で言い、クラス全体がクスクスと笑い始めた。自分でも少し恥ずかしいと思いながらも、真剣な顔で浅見さんを見上げる。


 浅見さんは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに口元に手を当てて、ふふっと笑みを浮かべた。


「面白いね、城山くん。いいよ、お迎え、楽しみにしてる」


 彼女の返答を聞いた瞬間、大輔は内心ガッツポーズを決めた。何とか乗り切った。クラスメイトたちがざわざわしているのが聞こえるが、そんなことはもうどうでもよかった。


「ありがとうございます!では、3限目が終わったら、すぐにお迎えに参ります!」


 軽くお辞儀をしながらも、大輔は顔が真っ赤になっているのを感じた。だが、そのまま何とか席に戻り、心の中で一人ガッツポーズを繰り返していた。


 笠井先生のところへ向かう途中、浅見さんが笑顔で大輔に話しかけた。


「さっきの執事っぽい誘い方、なかなかよかったよ!80点ってところかな。でも、もう少し堂々としてもいいかもね、城山くん」


「80点か…。うーん、厳しいな。じゃあ、次は90点目指します!」


 大輔の答えに、浅見さんはふっと微笑んで、軽やかに笑い声を上げた。


「ふふっ、それは楽しみだね。期待してるよ、城山くん」


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